友岡さんが次の本を紹介していました。
『居場所を探して-累犯障害者たち』(長崎新聞社、2012.11)
出所しても居場所がなく犯罪を繰り返す累犯障害者たち。彼らを福祉の手で更生させようと活動する社会福祉事業施設の協力で、現状と解決の道筋を探った。日本新聞協会賞を受賞した長崎新聞の長期連載をまとめた一冊。
さっそく図書館で借りて読んでみました。
一部、引用します。
□第1章 居場所を探して―累犯障害者たち
■第2章 変わる
■変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
□山本譲司さんインタビュー
□おわりに
第2章 変わる
変わる刑事司法と福祉~南高愛隣会の挑戦をめぐって
(つづきです)
長く累犯障害者たちの「安住の地」だった刑務所でも動きがあった。
受刑者の知的障害の有無を正確に判断するためのチェックシート(判定ツール)が11年から、全国の刑務所で導入された。「累犯障害者」の問題が社会問題化する中、刑務所としても、障害を正確に把握した上で出所後は福祉の支援につなげ、再犯防止や社会復帰を図る狙いがあった。
法務省矯正局によると、受刑者が刑務所に入所する際には「CAPAS」と呼ばれる能力検査が行われ、知能指数(IQ)相当値が出される。
一般的にIQ70未満は知的障害の疑いがあるとされ、新規受刑者の2割は70未満とのデータもある。
しかし、CAPASは正式な知能検査ではなく、かねて障害を正確に判別できていないと指摘されていた。
チェックシートは11年7月、全国の一般刑務所や少年刑務所などで導入。CAPASでIQ70未満だった受刑者を対象に行い、療育手帳の所持や過去に特別支援学級に在籍したことがあるかどうか、福祉施設の利用経験の有無などについて、刑務官が受刑者に聞き取りをする。その際、受け答えの様子がおかしくないか、場違いな行動を取ったりしないかなども確認する。
CAPASとチェックシートで障害の疑いが濃厚と判断された受刑者については、心理専門の職員による正式な知能検査をして、障害の有無や程度を最終判定する。出所しても帰住先がない場合は「特別調整」の対象者として、各地の地域生活定着支援センターなどと連携して、福祉の受け入れ先を探すことになる。
長崎県内のある刑務官は
「刑務所の職員は福祉の専門家ではないし、受刑者の障害の有無を見極めるのはなかなか難しい。CAPASとチェックシートの『ダブルチェック』で、福祉の支援が必要な受刑者を見落とさないようにしたい」と話す。
裁判所、弁護士、刑務所―。油を吸った紙片が燃え上がるように、累犯障害者対策は刑事司法の分野に瞬く間に広がった。
(つづく)
【解説】
長く累犯障害者たちの「安住の地」だった刑務所でも動きがあった。
受刑者の知的障害の有無を正確に判断するためのチェックシート(判定ツール)が11年から、全国の刑務所で導入された。「累犯障害者」の問題が社会問題化する中、刑務所としても、障害を正確に把握した上で出所後は福祉の支援につなげ、再犯防止や社会復帰を図る狙いがあった。
こうして、裁判所、弁護士、刑務所とすべての歯車が噛み合い、累犯障害者対策は刑事司法の分野に瞬く間に広がったのです。
獅子風蓮