昨夜7時から3時間SPで放送されたTHEカラオケバトルはとてつもなく面白かった。カラバトと言えば、毎回プロアマに別れてDAM(カラオケ・データベース)から曲(プロにとっては他人の曲)を選び争って来た。今回は、プロが自身のヒット曲をAI搭載の【カラオケマシン】相手に披露し、国民(ファン)の平均点超えを目指す。つまり、いつもとは真逆の自分との闘いが展開されることになった。普段の大会では、音程など各アイテムの完成形【100点】に近い99点台のギリギリの歌唱で競い合うが、今度は他でもない自身の【表現史】としての楽曲の確立されたエッセンスの洗い直しを行うことに追い込まれた。つまり争う相手は自分自身しかあり得ない。団塊の世代でマシンによるスタンダード(標準値)を受け付けない【堀内孝雄】や【武田鉄也】は国民(ファン)の平均値を下回り、逆にこの番組にプロとして何度も出場している【森口博子】は、自身のアニソン曲を音程の正確さを守りながら歌い上げ、96点台というメンバー中の最高得点を叩き出した。ちなみに、この96点台では一般の大会では予選突破は難しいレベルである。19年前に高校在学中の17歳でデビューし、日本人離れした脅威的な歌唱力でJソウル界に君臨した【小柳ゆき】は、この番組でも度々歌われるデビュー曲『あなたのキスを数えましょう』を、公然と100点(賞金100万円)を狙うと言い切り、音程グラフを睨みながら挑戦したが、95点台に止まった。ただ単に技術的な修正を加えるだけではなく、表現主体としての自分自身の歌唱そのものを全て洗い直し、マシンに更新された自分をぶつけない限り【カラオケバトル】は勝ち抜けない。この日、普段の大会の出場者ひいては私たち全国民の存在をデータベースとした《カラオケ》という大衆文化の歴史的な存在意義を余すところなく見せつけることになった。来週は、珍しく2週連続で放送されるようだ。年末を前に、U-18(18歳以下)の【冬の頂上決戦】である。すでに高三で受験・卒業を前に10冠を目指す【堀優衣】やこの3大会で優勝に一歩届かなかった【佐々木麻衣】の激突が楽しみだ。他にも、今春地元名門校に進学し、中学時代に続いて合唱部に入った郡山の癒しボイス【熊田このは】はことし未勝利で、ここでの奮起が期待される。・・・《続く》