クラブボクシング@ゴールドジム湘南神奈川

普通、湘南辻堂といえばサーフィンなのにボクシングでひたすら汗を流すオッさん達のうだうだ話!

師匠と僕のアフターファイブ 3

2014年10月30日 | あの頃 朴は若かった
英国赴任が2年過ぎた1990年に一時帰国の機会がありました。もう四半世紀前のお話です。

一時帰国の期間は10日ほどだったでしょうか、本社に顔を出した後に佐藤師匠に電話しました。佐藤師匠は当時上野支店長でした。

「師匠!只今帰国しました。娘さんに土産もあるし、夜どうっすか?」
「お、朴ちゃん。帰ってきて直ぐに連絡くれるなんて嬉しいね~。まあ、俺が偉くしてやったから当たり前だけどね。ま、いいや何喰いたい?」
「ありがとうございます。では、美味い寿司喰いたいっす。」と銀座とか築地とかを期待して吹っかけると。

「分かってるよ~朴ちゃん。では、エリートの朴さんに最高級の寿司をご馳走しますから19時にJR大塚駅の改札で!」と電話が切れました。「え~ 大塚?もしかして、師匠の昔のお客さんで、回転寿しだったりして。」と昔によく付き合わされたお店を思いました。

さて、約束通りに大塚で待ち合わせ、歩みを進めていくうちに辿り着いたのは予想通りに師匠の昔のお客さんの回転寿しのお店でした。

「お、大将!こいつのこと覚えてる?俺が偉くしてやった朴君。大将!美味しいとこ握ってやってよ!」「朴ちゃん。どんどん食えよ~‼︎」

まあ、気持ちの問題ですから、それはそれでよしです。ありがたい限りでした。

問題はですね。

例えば、今から2年前に我々ふたりの上司が亡くなった時の葬儀のお浄めや、流れて行った飲み屋で、「朴ちゃん、昔、一時帰国した時に銀座の寿司を喰わせてあげたら、涙流して美味い美味いと食ってたよなあ。あの時、ご馳走になったの忘れてはいないよね?」

また、今もたまに電話があり、何かと思うと「お~!稼いでるか?朴ちゃん、外資系で働けるくらい鍛えられたのは誰のお陰でしょう? お前、年収いくら? え?言わない?言わないんじゃなくて、言えないくらいもらってるんだろ? あ~ 昔、一時帰国した時に銀座で寿司を喰わせたら、俺、北海道生まれだからこんな美味い寿司初めてですと泣きながら食ってたのは忘れてないよね?」

四半世紀前のことですよ。それも銀座じゃないし。

「師匠!すんません。今、忙しいんで。用件はなんすか?」
「馬鹿!用件なんかねーよ。暇だからかけたんだよ。お前、散々俺に世話かけたんだから、たまには奢れよ!」とか
「あ~。偉くなっら昔の恩も忘れちゃうんだあ。そんな教育したつもりないんだけどなあ」とかぐちぐちいうんですよ。

多分照れ隠しなんでしょうね。あと寂しいんですよね。たまに僕もそうですから。

じゃあ、来週にふたりで大塚行きましょう。
僕がとびきり美味い寿司をご馳走させて頂きます。その店まだあるといいですね。


師匠と僕のアフターファイブ 2

2014年10月30日 | あの頃 朴は若かった
ちゃらんぽらんの佐藤先輩が上野支店長になりました。自己管理が不得手な師匠が支店の運営を果たして出来るのか甚だ心配でした。名選手が名監督になれる訳でもないように、トップセールスマンが支店長として務まるかは全く別の話です。

さて、佐藤師匠が支店長に昇進した年の大納会の日(年内最後の営業日)のこと。昔の大納会は午前中のみ株式市場は開いていて、午後はお休みの「半どんの日」でした。ですので営業マンはお昼にはもう帰っても良いのでした。

本社国際部にいた私も帰り支度をしていた頃、師匠から電話がありました。嫌な予感がします。「お~ 朴ちゃん!仕事終わったあ?支店の会議室でさ軽く一杯やるからさおいでよー」と思った通りのお誘いでした。既に上司部下ではありませんが、師匠のお誘いはなかなか断りづらい関係です。嫌々ですが駆けつけることにしました。

上野支店の会議室では営業マンなど20名位が飲んでいましたが、時間が経つにつれ人もだんだんといなくなり、16時くらいには私と師匠だけになりました。

飲み足りない師匠は生来の我が儘さで「お~朴ちゃん!一軒行こう、一軒だけ。超軽くね。大宮でいい?」「師匠、一軒はいいっすけど大宮は嫌ですよ。師匠は大宮だからいいけど、俺辻堂に住んでるんすから!」「もう朴ちゃん、久しぶりだし行こうよ。大宮までの往復新幹線代出したげるからさあ。」としっこいことしっこいこと。根負けして大宮に行くはめになりました。

そしてほろ酔い気分でふたりで上野から東北新幹線に乗り込みました。大宮まで25分程度で着きます。

で、ちょっと寝た積りが気がついたらふたりでなんと!新幹線は仙台駅に到着していたのです!慌てて降りるふたり。このままだと山形に行ってしまいます。

ホームの反対側には上り新幹線が来ています。慌てて走るふたり。え?ふたりのはずが師匠の姿が見えません。この場に及びkioskでビールとつまみ、冷凍ミカンを買っているのです。

なんとか新幹線に滑り込むと師匠はビールを飲み始めます。私も疲れてうとうと始めました。大宮で降りてもまだ少し飲む時間はありそうです。

が、目が覚めたら、ふたりを乗せた新幹線は上野に到着していたのです。

「あら~ 朴ちゃん!上野に戻ってきたよ。冷凍ミカンどうしよう?」
「師匠!冷凍ミカンじゃないでしょう?俺まだ間に合うから帰りますよ!師匠も帰りましょうよ。」
「え~、なんか飲み足りないなあ。一軒付き合えよ。奢るし。」
「師匠、初めから上野で飲めば良かったっすね」
「そうだな。仙台までの往復新幹線代払って、俺も金なくなっちゃったよ。」
肩を落とすふたり。そこで師匠!
「よし、朴ちゃん!支店で呑み明かそう!毛布あるし」

と、振り出しに戻った師弟コンビでありました。

師匠と僕のアフターファイブ 1

2014年10月30日 | あの頃 朴は若かった
佐藤先輩はスナックやバーで飲むのが好きでよく連れて行って頂いたものです。
その殆どが巣鴨や田端、上野や赤羽など下町の寂れたスナックです。

その手のスナックには容姿端麗なママがいるわけでなく、可愛いおねえちゃんがいるわけもないのです。

佐藤先輩は「安くて簡単に口説けそうなお店」が大好き。

綺麗だったり可愛かったりすると気が引けるようで、支店長や副支店長からは「佐藤はブ○好き」と言われてましたし、私の同期の女性社員からも「佐藤さんって志が低い!」と弄られていました。

新規のスナックを探すと「朴ちゃん、ここでちょっと待っていなさい!私が交渉してくるから!」とひとりでスナックの中に入り、女性の数と質を見定めた上で、2人分の価格交渉に入るのです。

「安くて綺麗な女性が沢山いる」これが師匠の条件です。普通「綺麗な女性が沢山いる店」は値段も高いものです。何だかんだ言っても「無い袖は振れない」ので「安くしてくれて、地味な女性が2~3人いる下町のお店」になってしまうのです。はっきり言ってせこいです。ちょっと恥ずかしいです。

そして、店に入って名前を尋ねられると「安田一平です!」と答えます。「安田一平」は本宮ひろ志の漫画「俺の空」の主人公。日本最大の財閥、安田グループの総帥の息子の名です。

「私が安田一平、後輩ですが、こいつは冴羽遼です。」
「師匠!恥ずかしいからやめてくれよ~(心の中で)」

まあ百歩譲って「安田一平」は知らない女性も多いでしょう、だからこれは許す!でも「冴羽遼」はアンタ今テレビでアニメやってるし。っていうか、オレの顔「冴羽」って顔じゃね~し。

で、「安田一平」の割には金持ってねぇ~し。そんな師匠、段々と酔ってくると自分が「一平」であることを忘れてしまいます。女性が「一平さん、何歌う?」と聞いても自分が呼ばれたとは思っていません。そんな時は「一平師匠!次何歌いますか?」としっかりフォローしなければなりません。そうすると「あ、ありがとうね朴ちゃん!」と私が「冴羽遼」であったこともすっかり忘れているのでした。

これは私と飲みに行く時に限らず、支店長と行く時も「安田一平」を名乗るのです。

支店の会議で支店長が「あ~佐藤!佐藤から発言がないようだけど?あれ? いないのかな?」佐藤師匠は爆睡しています。

そうすると支店長は「あ~、では安田一平君はいらっしゃいますか?」と言い直すと、師匠はむにゃむにゃ言いながらやっと眼を覚ますのでありました。