素浪人旅日記

2009年3月31日に35年の教師生活を終え、無職の身となって歩む毎日の中で、心に浮かぶさまざまなことを綴っていきたい。

ようやく『東京自叙伝』(奥泉光 著・集英社)読了

2014年12月11日 | 日記
朝井まかてさんの『恋歌』を読み終わった後の10月5日から林田愼之助著『幕末維新の漢詩』(筑摩選書)を一日一人と決めて読み始めた。その時並行して読み始めたのが『東京自叙伝』(奥泉光 著・集英社)であった。

 予定では10月26日の大阪マラソンまでに2冊とも読み終え、スッキリした気分で走るであった。『幕末維新の漢詩』の方はであったが、『東京自叙伝』は失速した。独白調の文体で字数が多いためページが進まない。幕末から明治の柿崎幸緒に始まり、大正末期から昭和初めの榊春彦、戦争末期の曽根大吾、高度経済成長期に入った頃の友成光宏、バブル期からバブル崩壊にかけての戸部みどり、そして平成23年3月11日東日本大震災での郷原聖士と各時代を生きた6人の体を転々と間借りした東京が主人公(東京の地霊)である。内容の濃さに寄り道を繰り返し3ヶ月かかってしまった。大阪マラソンをゴールした時と同じ気分になった。

 
 天災や空襲の度に破壊と再建を繰り返してきた東京には、何度でも立ち上がれる逞しさと、それとは裏腹なニヒリズムが根底にあることを、先のNHKスペシャル「カラーでよみがえる東京~不死鳥都市100年~と合わせて再認識した。なるようにしかならない。という反省、検証を忘れた無責任体質を毒とユーモアを取り混ぜて迫ってくる。

 福島第一原発事故の現場に東京(=日本)の未来を見て終わるラストは何とも言えない読後感を持った。
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