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なかなかやるな!『盤上のアルファ』by塩田武士

2019年07月11日 | 小説レビュー
『盤上のアルファ』by塩田武士


~真田信繁三十三歳。
家なし、職なし、目標・プロ棋士。
とてつもなく迷惑な男が巻き起こすかつてなく熱い感動の物語。第五回小説現代長編新人賞選考会満場一致の完全受賞作。「BOOK」データベースより


面白かった!色んな意味で、なかなか面白かった!

「こんなにうまいこといくかい!?」と突っ込みたくなる気持ちを抑えて、素直な気持ちで読んでみてください。

将棋を題材にした小説は数多く出版されており、僕も、

・『将棋の』by大崎善生
・『泣き虫しょったんの奇跡』by瀬川晶司
・『聖の青春』by大崎善生

そして、マンガでは
・ハチワンダイバーby柴田ヨクサル
を愛読したものです。

どの作品にも、奨励会から三段リーグに上がり、そして四段(すなわちプロ棋士)になることの大変な難しさが、様々な場面で語られています。

僕は囲碁は打ちますが、将棋は小さい頃に近所の子どもたちと遊びでやったぐらいで、とても弱いと思います

将棋の面白いところは、取った駒を自分の手駒として使えるということと、成ることによって局面が大きく動くことでしょうかね?それだけにドラマチックな展開があり、小説や漫画でも描いていて面白みがあるのかなと思います。

またプロ棋士の身分についても囲碁と将棋では大きく違い、囲碁では最上位の九段になってしまえば、自ら引退を宣言しなければ、九段のままで生涯通すことが出来ますが、将棋は、プロになったあとも順位戦C級2組からの降格して「フリークラス」という階級に編入された後、10年以内または満60歳の誕生日を迎えた年度が終了するまでに順位戦C級2組に上がれなかったり、60歳を迎えた後にC級2組から降級した場合は、連盟から引退を宣告されるという過酷なルールがあります。プロになってからも厳しいランク戦が続いていく訳で、本当に厳しい世界です。

今作の『盤上のアルファ』でも、もちろん一度は挫折した主人公?が、全てを失ってから、もう一度、泥水をすすって、地面を這いつくばってでも、石にかじりついてでも、プロ棋士を目指していくという話です。

それにしても、サイドストーリーが何とも言えん空気感を出していて、息詰まる展開の中にも、「ぷぷっ」と吹き出してしまいそうな挿話があって、良い息抜きになったりします。キャラクターも立っていて、わかりやすく読みやすいです。

プロ編入試験のクライマックスから、大どんでん返しが待っている展開にも、「お主なかなかやるな!」と唸ってしまいました。最後にも爽やかなエンディングが用意されており、続編を読みたくなりました。

作者の塩田武士氏を一躍有名にした作品『罪の声』を読んでみたいと、ずっと思っていたんですが、図書館の待ちが凄くて断念していたんです。

次回は、『盤上に散る』を読んでから、『罪の声』を読んでみたいと思います。

★★★☆3.5です。
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