~蒲田の老夫婦刺殺事件の容疑者の中に時効事件の重要参考人・松倉の名前を見つけた最上検事は、今度こそ法の裁きを受けさせるべく松倉を追い込んでいく。
最上に心酔する若手検事の沖野は厳しい尋問で松倉を締め上げるが、最上の強引なやり方に疑問を抱くようになる。正義のあり方を根本から問う雫井ミステリー最高傑作!「BOOK」データベースより
雫井脩介氏の作品は、『火の粉』、『仮面同窓会』、『望み』、そして『犯人に告ぐ 上・下』に次ぐ5作品目になります。
どの作品も良く練れていて、ハズレの少ない評価の高い作家さんです。
本作は、木村拓哉と二宮和也のダブル主演で映画化されている作品でもあり、とても楽しみにして読みました。
こういうミステリー作品にとって、タイトルはとても重要で、「誰が犯人で、どんなトリックが!?」というのがミステリー作品を読むうえで読者の興味を引き続けるはずなんですが、本作のタイトルは『検察側の罪人」という、どストレートなタイトルの為に、読み始めの段階から、「最上検事か沖野検事のどちらかが犯罪に手を染めるんやろな。まぁ最上やろな」と、簡単に予想が出来たため、ドキドキ感はあまりありませんでした。もう少しタイトルを捻っても良かったのかな?と思います。
それでも、雫井氏の筆力によって、結末がわかっていても、敏腕検事がどのようにして犯罪を犯してしまうのかというプロセスは読んでいて面白かったです。
しかし、いよいよ最上が最後の一線を越えようとするあたりから、雫井氏の筆が鈍り始め、「ここから足が付くな」という単純なミスによって、そこから計画が破綻し、捜査の手が伸びるという展開が稚拙で、少し残念に思いました。
東野圭吾氏なら、もっとうまくやってくれたのではないかと思うと、雫井氏の評価がそこまで高く成らない理由についても納得するものがありました。
もちろん結末は予想通りでしたが、松倉が無罪放免されて、沖野が謝罪する場面にムカつきが止まりませんし、凄腕弁護士の白川雄馬のキャラクター設定やセリフなどがチープで、物語の締め方も残念です。
上下巻をまとめ上げる力は中々のものですが、「雫井ミステリー最高傑作!」というほどでないと思います。
★★★3つです。