~触れるだけで相手の命を奪う恐ろしい手を持って生まれてきた少女、自分を殺そうとする父から逃げ、山賊に拾われた男、幼き日に犯した罪を贖おうとするかのように必死に悪を糺す同心、人々の哀しい運命が、謎の存在・金色様を介して交錯する。人にとって善とは何か、悪とは何か。「BOOK」データベースより
なかなかのホラーミステリー『夜市』by恒川光太郎、一気に読ませる空想科学小説『滅びの園』by恒川光太郎につぐ、三作目です。
本作を読み始めたころは、「熊悟朗の立身出世物語か?」と思ったり、「紅葉との恋物語?」などと思うほど、ストーリーの全体像が見えにくく、興味がそそられます。
登場人物が巧みに交錯し、時系列も組み直されている上に、各章節が短めで、読んでいて楽しかったです。※しかしながら、本が分厚くて重いので持ち運びには不向きな本です。
厳信が彫った仏像が笑い出した時には、「これはすごい小説かも!?」と期待しましたが、ストーリーの根拠となる「金色様」の正体の謎が解明されませんし、予想されるエンディングに向かって然したる障害もなく淡々と事が進んでいき、クライマックスの盛り上がりも今ひとつで、静かにエンドロールが流れるようなラストを迎えてしまったのが少し残念ですね。
恒川氏は多くのホラーミステリー作品を世に出されているので、今後も色々と読んでいきたい作家さんです。
★★★3つです。
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