セミの命は短い。地中で数年間過ごし、
地上に出た後、一週間程度の命しかない
と言われている。実は一週間ではなく、
本当はもっと長いとも言われている。
しかしいずれにしても、夏の盛りにその
短い命は終わる。
長い準備期間を終えて、やっと地面から
這い上がって、空を飛べる自由を謳歌し、
思いの限り声を張り上げてシャウトでき
たかと思いきや、その命はあっという間
に尽きてしまう。
その短い命の間に、空の飛び方を本能的
に習得し、樹液の美味しさを覚え、雄は
声をからして配偶者を見つけ出し、子孫
を残していく。悩んだり、いじけたり、
躊躇したりしている暇もないのだろう。
誰から教わるでもなく、セミの一生を
精一杯生き、潔く死んでゆく。
先日、妻が、道を歩いている時に、セミ
が地面に仰向けに横たわっているのに
遭遇したのだそうです。彼女は、サン
ダルの先にセミをつかまらせ、サンダル
を木のところに持っていき、セミを木に
戻したと言っておりました。
そんなことをしても、セミはいずれ死ん
でしまうんだからと私が言っても、彼女
はどうしてもセミを助けたいらしい。
彼女も彼女の母親も、セミを捕る子供と
かが許せないようです。
私は子供の頃はセミを捕るのが好きでし
た。近所のお寺に捕虫網を持って出かけ
ては、セミ捕りに夢中になっていました。
籠に入れたセミはやがて死んでしまうの
ですが、罪悪感は感じませんでした。
セミは絶滅種というわけではないので、
子供がセミを捕ったからといって、種が
滅ぶ危険も、生態系が崩れてしまう危険
もないのだろう。そんなことを言うと、
私の妻およびその母のようなセミ擁護派
の人々から集中砲火を浴びそうです。
以前、お祭りの時に、小さな男の子が、
妻の実家の家に、セミを持ってきて、
「このセミが道に落ちていたので、ここ
の家の木にとまらせてもいいですか」
と言ってきたそうです。妻と母は大いに
喜んで、その男の子の行為を褒めたの
だとか。
セミに対しての考え方に関しては、
我々夫婦の間に意見の相違があるが、
この話題も暑い夏の間だけなので、あと
少しの辛抱であります。セミが原因で
夫婦の不和になるということもないで
しょう。
しかし、都会のセミは短命な気がします。
普通はセミは夜中は鳴かないようなので
すが、東京では夜中にもうるさく鳴いて
います。灯りが昼間のように明るいから
なのでしょうか。夜鳴くセミは、ただで
さえ短い命がさらに短くなってしまうの
ではないかとちょっと心配になります。
そんなに生き急がないで、とセミに言い
たくなります。
この夏もしばらくは、妻のセミ救済活動
は続くのでしょう。セミがそれを感謝し
てくれているのかどうなのかはわかりま
せんが。
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