2021年2月21日、東京からシンガポールに到着し、ホテルでの2週間の隔離が終わりました。渡航の準備から、シンガポールへの到着、そしてホテルに入って数日経ったところまでは前回のブログでご紹介いたしました。15日目の3月7日の日曜日に無事に隔離が終了して、シンガポールの自宅に戻ることができました。
来る前は2週間という時間の長さが不安でした。また、部屋から一歩も外に出ることなく、一定の場所に留まるという、これまでの人生の中で一度も経験もしたことのない事だったので、心配でいっぱいでした。外の空気を吸えなくて、大丈夫だろうか?同じ環境の中で飽きることはないだろうか?食事は飽きないだろうか?閉塞感で精神的におかしくならないだろうか?など不安のオンパレードでした。
おまけに夫婦二人で同じ部屋に四六時中 x 2週間いるということがどういうことか、想像すらできませんでした。「一人の時間も必要なんだよ」とよく言っていた妻が果たして、狭い空間に閉じ込められ、時間と空間を共有せざるを得ない状況の中でどうなるのかを考えると、少々不安でした。もしも機嫌が悪くなった場合に、ホテルの部屋では逃げ場がありません(汗)。
でも人間、何とか適応できるものです。2週間が終わってみると、あっと言う間でした。幸いにして、滞在したホテルが、シンガポールのリージェントホテルという五つ星ホテルで、部屋は思ったより広々としているし、バルコニーは無いけれど窓は大きくくて景色は良いし、食事は美味しいし、ホテルのサービスも良いので、滞在はとても快適でした。
2週間の隔離が終わって、ここを去るのが寂しくなったくらいです。住めば都というように、この平和な空間に慣れてしまうと、隔離空間が心地よく思えてしまいます。2週間を指定された場所で過ごすというのは強制的な義務なのですが、この経験はユニークな体験でした。リゾートに旅行に行っても、何だかんだ忙しいのですが、この2週間は、自分で予定を決めたり、手配をする必要もなく、何を食べるのかを考える必要がなく、料理をする必要もなく、外の世界のストレスを感じることもなく、平和な時間だけが過ぎてゆきました。
この2週間の滞在の中で、いろいろなことを経験したり、発見したことがあるので、それを書き留めておきたいと思います。また、これからシンガポールに入国するために隔離をする方もおられると思いますので、持ってきてよかった物などについても記しておきたいと思います。参考になりましたら幸いです。
ホテルに関して
どのホテルになるのかは全く運によります。同じ日の朝に到着した人は、キッチナーロードのパークロイヤルだったようですし、別な日に到着した人は、隣のJENだったり、シティーホールのスイソテルやJWマリオット、フェアモント、あるいは、グランドコプソーンや、シェラトン、シャングリラといういう人もいました。
2月21日の夕方、50人以上の人がリージェントホテルに来て、15日目の3月7日に全員が出て行ったので、数日中に。また多くの人たちがこのホテルにやってくるのでしょう。それがいつになるのかは、ホテル側の準備もあるし、他のホテルとの調整や、到着者の数などいろんな調整で決まるので、どのホテルになるのかは全くわかりません。
私たちが隔離で2週間を過ごすことになったのは、オーチャードロードから少し外れた静かなエリアにあるリージェントホテルでした。シンガポールのホテルの値段は高いので、このような五つ星のホテルに泊まれたことは非常に幸運でした。
あくまでも個人の感想ですが、隔離施設としては非常にレベルの高いものでした。6階の窓の部屋の景色はとても平和な感じだし、食事やサービス対応も非常に満足のいくものでした。
このホテルには宿泊したことはないのですが、宴会場や、レストランや、バーには何度か訪れたことがありました。シンガポール日本商工会議所が毎年行っている新年会はこのホテルの一階の宴会場で行われているので、何度も来たことがあります。一昨年には、このホテルに入っている天ぷらの天信や、アジアトップ50バーの一位を獲得したことのあるマンハッタンというバーにも来たことがありました。さらに、イタリアン・レストランのバジリコや、中華料理のサマー・パレスはシンガポールでも有名なレストランとなっています。
景色という点では、高層のスイソテルから見える景色はとても魅力的だし、フェアモントや、JWマリオットとかも設備がよさそうだったのですが、結果的には、リージェントになってとてもよかったと思います。自分で選択することはできないので、比較してもあまり意味はありません。どのホテルになるのかは運で、到着する時間帯やどの航空会社、どの国から来た便なのかは全く関連がないようです。
リージェントホテルは、現在ほ隔離用の施設として使われています。下のレストランや宴会場は営業しています。バルコニー付きの部屋もあるのですが、私たちに与えられた部屋はバルコニーのない部屋でした。バルコニーがあると、外の空気を吸えてよいし、開放感があるので、バルコニー付きの部屋だったらいいなと思っていたのですが、普通の部屋でした。でも、天井も高いし、窓も大きいので、外に出られなくても全く閉塞感はありませんでした。
同じホテルでも建物のどの面の部屋なのか、また何階なのかによって風景は変わるのですが、与えられた6階の部屋で十分満足することができました。馴染みのあるタングリンモールのすぐ裏手だし、静かな住宅地が見えています。自分が住んでいるコンドミニアムが遠くに見えているのも、何か不思議な縁を感じました。
ホテルの食事
ホテルの食事は非常に満足のいくものでした。到着した日に、2週間分のメニューの選択をしなければならないのですが、何を選んだのかはすぐに忘れてしまいました。忘れないようにスマホで撮っておけばよかったと後で思いました。朝食は固定なのですが、昼食と夕食は、二種類の中からの選択です。イタリアンやローカルフードが並んでいましたが、片方どちらかがベジタリアンになっていました。
イタリアンは、パスタはペンネやラビオリで、ベジタリアンになっていました。ベジタリアンと言っても、いろんな野菜が入っていて、チーズもかかっていてとても美味しかったです。イタリアンのパスタだと、ベーコンなどが入っていることを期待してしまうのですが、ベジタリアンだけでもきちんとした料理として成立するのだということをあらためて思い知らされました。
あと、夜は必ずスープが付いてくるというのもよかったです。コーン、マッシュルーム、豆、ブロッコリーなど日替わりで暖かいスープが出ました。
朝食も、デニッシュが二つ(一つはクロワッサンの時が多い)で、バターとジャム、ヨーグルト、ジュース、フルーツのセットですが、ヨーグルトは日替わりでストロベリー、アップル、アプリコット、アロエ、マンゴなど、ジュースもオレンジ、マンゴ、アップル、フルーツはバナナ、リンゴ、みかん、プラム、洋梨など日替わりになっていました。
ランチには、オレオやリッツなどのお菓子が付き、夜は小さなロールケーキや、デザートが付いていました。
料理の味つけは、濃過ぎず、薄過ぎず、ちょうどいい感じでした。また、どのメニューも野菜が多めで、野菜の種類も豊富で、非常にバランスがよかったと思います。生野菜がなくても、野菜は十分取れ、健康に配慮してくれていることを感謝したくなるようなメニューでした。
料理も温かい状態で届けられ、美味しく食べられました。
このホテルには、バジリコという有名なイタリアンが入っているのですが、このイタリアンの食事はこのレストランのキッチンで作られているのではと思われました。それほどまでに美味しかったです。
また、チキンライスなどのローカルフードも素晴らしかったです。
こちらの食事は、BioPakという紙の容器と、木製のスプーン、フォーク、ナイフのセットで供給されました。他のホテルの食事は、プラスチックのものがほとんどなのに、このホテルのこの環境意識は非常に感心しました。
持ってきて役立ったもの
日本から沢山のものを段ボールで持ってきたのですが、役立ったものをいくつかご紹介したいと思います。
1) 乾燥野菜とスープ、味噌汁など
ホテルで出る食事で野菜不足になることはありませんでしたが、ランチには野菜スープや味噌汁を付けることにしました。
2) ルームスプレーと消臭除菌剤
こちらのスリーフという身体に安全な消臭除菌スプレーを妻が持ってきて、食後などに時々シュッとやって部屋ににおいがこもらないようにしていました。
またこちらの商品を妻が持ってきましたが、朝や寝る前とかに心を落ち着かせることができました。いろいろなタイプがあったそうなのですが、妻が自分の好きな香りのものを選んで購入したら、「愛と調和」というシンボルワードのものでした。おかげで2週間、平和に過ごすことができました。
3) ポータブルDVDプレーヤー
こちらは、以前、シンガポールで買ったものですが、妻が韓国ドラマを見るのに使いました。ホテルにはDVDプレーヤーなどはついていないので、これが役立ちました。
4) 体温計
これは必需品です。1日3回体温を測り、FWMOM/Careというアプリで報告しなければならないので、体温計がないとこれができません。
5) 延長コード
スマホの充電などで電源が沢山必要だろうと延長コードを持ってきたのですが、ホテルの部屋にはデスクに3個、ベッドサイドに4個、壁面に2個あり、これだけで十分な数がありました。しかもデスクとベッドサイドの電源は、日本タイプのもシンガポールタイプのもアダプターなしで、どちらでも入るのでこれは便利でした。
6) ハンドソープ
ホテルには石鹸や、シャワージェルはあるのですが、ハンドソープを持ってきました。手洗いをする機会も多いので、これは便利でした。
7) トイレ掃除用の流せるシート
滞在中はホテルの掃除は入らないので、トイレを清潔に保つために流せるシートを持ってきたのですが、これは便利でした。他にも除菌シートや、掃除用のシートなども便利でした。
8) ナイフ
フルーツをカットしたりする場合に使いました。
9) 洗濯用洗剤
下着などを洗うための洗剤は必要ですね。あとハンガーもあると便利です。ホテルのクリーニングに出してもよいのですが、下着などは洗ってバスルームにかけておけば1日もせずに乾きます。
10)サランラップやジプロック
洗った果物を置いておいたり、飲みかけの飲み物に蓋をするような場合に便利でした。また、朝食でついてくるバターやジャムなど使わなくて溜まっていくものを冷蔵庫に入れておくのにジプロックは便利でした。
11)シャンプーやコンディショナー、シャワージェルなどは、ホテルにロクシタンのものがついていたので、それを使わせてもらいました。
12)本は何冊か持ってきたのですが、結局読む時間はほとんどありませんでした。
13)カップ麺や梅干しなど日本の食材を持ってきたのですが、ホテルの食事が美味しいのであまり出番がなかったです。でも、ペヤングの焼きそばと、カップヌードルは懐かしかったです。
14)ゴミ袋
ゴミはドアの外に出しておけば回収してくれます。ホテルから袋ももらえるのですが、部屋にゴミを溜めたくなかったので、持ってきたゴミ袋が役にたちました。
15)ラジオ(ブルートゥーススピーカー)
テレビにもスマホのスポティファイを飛ばせましたが、時々ラジオでローカルのラジオ番組などを聞きました。また夜寝る時には、スポティファイに入れてある睡眠用の音楽をブルートゥースで繋いでかけていました。
隔離生活の日常に関して
2週間の間は、部屋の掃除とかベッドメーキングなどのサービスはありません。バスタオルやバスマットは、電話で頼むと新しいのを持ってきてくれました。ピローケースなども取り替えてくれたし、掃除機は一度借りました。トイレットペーパーも電話すればすぐに補充してくれますし、インスタントコーヒーや紅茶も補充してくれました。部屋の外の椅子の上に置いてくれて、ドアベルや、ノックで知らせてくれます。手渡しで受け取るということはありません。最初はどこまでお願いしていいのかよくわからなかったのですが、必要なものはどんどん頼んでいいんだと思いました。
滞在中に、シンガポールのMOM (人材開発省)から何度も電話がありました。全部で数回かかってきました。最初のうちは、名前、ホテル名、部屋番号、IDナンバーなどを聞かれ、一人で滞在しているのかなども聞かれました。アプリで体温を3回報告しているかなどの念もおされました。健康状況も尋ねられることもありました。隔離も後半になると、隔離の終わる日の確認と、Swab Test (PCR検査)の日時の確認などが加わりました。
毎回違う人がスマホに電話してきて、かなりシンガポール訛りの強い(いわゆるシングリッシュ)の人も多いので、シンガポールの英語に慣れていない人には最初は聞き取りにくいのではないかと思いました。
また、スマホがないとシンガポールに来るのは無理だというのを痛感しました。PCR検査などの結果は、スマホにメッセージで連絡がきますし、最後のPCRの検査結果を受け取ったらそれをスクリーンショットにしてホテルに転送しなければなりません。また、ホテルに着いたら、FWMOM/Careというアプリをダウンロードして、2週間毎日、1日3回、計測した体温を報告しないといけません。
さらに、MOMからの連絡もすべてスマホです。これほどまでにスマホが重要な役割を果たすのだとあらためて痛感しました。
最後のPCR検査とチェックアウトに向けて
11日目の夕方にHPB(Health Promotion Board)というところからスマホにメッセージが入ってきて、PCR検査の日時と場所を知らせてきました。
隔離12日目、ホテルのマネジメントからレターが届きました。15日目に隔離が終了するので、その段取りと、チェックアウトに関してのお知らせでした。事務的なレターなのに、その書き方がとても温かい気がしました。下の画像がそのレターなのですが、印象に残った箇所を赤枠で囲っておきました。
「次はもっとハッピーな機会にこのホテルでお客様を再びお迎えできることを心待ちにしています」というメッセージですが、とても好印象でした。
13日目にホテルから部屋の電話に連絡があり、PCRテストの時間に関しては、人数が多いので、土曜日(14日目)の朝9時頃から部屋でスタンバイしておいてほしいとの連絡が入りました。HPBからのメッセージにあった時間ではないようです。ホテルの人間が部屋に来て、案内するので、それまで部屋で待機するようにとのことでした。
また、それと別にホテルから連絡がありました。15日のチェックアウトの段取りに関してでした。PCRテストの結果を15日に受け取ったら、そのスクリーンショットをホテルの電話に送る。そうするとチェックアウトの手続きに入るとのこと。荷物がどれくらいあるのか、タクシーは必要かなども聞かれました。
いよいよ14日目の午前9時から部屋でスタンバイしていましたが、10時過ぎに部屋をノックする音が。外に、防護服を着た女性が立っていました。私たちは、パスポートとIDカードだけ持って、部屋を出ます。エレベーターにはまた別の防護服の人がいて、エレベーターで11階まで上がりました。
エレベーターを降り、案内されたところが、リージェント・クラブという部屋。普段は豪華なクラブルームなのですが、部屋のテーブルや椅子は取り払われていました。下の写真が普段のホテルのサイトに出ているリージェント・クラブの様子です。
入り口に受付の机があり、パスポートとIDの確認と、鼻水などの症状がないかどうかの確認をさせられます。そしてそこから、バルコニーに設置された検査場所に。
何とそこはバルコニー。久々に触れる熱帯の空気、そしてシンガポールの風景。こんな素敵な場所で検査をしてくれるということに感激すら覚えました。防護服の担当者が、この検査の説明をします。空港で受けたのとはちょっと違って、鼻だけで行い、それもちょっと奥深くまで綿棒を入れる。それもすこし長い時間になるとのことでした。いわゆる鼻出しマスクの状態で、まっすぐ前を見ているようにとの指示。綿棒が鼻の奥まで届くのを感じます。口で息をするようにと指示されます。そしてさらに5秒くらい待って、綿棒が抜かれます。それを右と左で同じように行うのですが、痛さ等は特に感じず終わりました。
こんな素敵な場所でPCR検査を受ける機会はなかなかないんじゃないかと思いました。瞬間的ではあったのですが、外の空気と景色を味わえることの幸せを感じました。
結果が来たのは、翌日の15日目の午前10時ちょっと前。スマホのメッセージに送られてきました。
"NEGATIVE"(陰性)という文字にほっとしました。
これをスクリーンショットにして、ホテルに送らなければならないのですが、いろいろ試行錯誤の末、WhatsAppで送りました。隔離中の食事は15日目の朝食までですが、昼前にランチのフライドライスが届けられました。
チェックアウトが午後2時を過ぎる場合は、昼食が届けられるという情報が事前レターに書かれていました。ということは、チェックアウトは午後になるのかなと思っておりました。2時過ぎまで部屋で待っていたらホテルのフロントから電話が来て、結果はまだ届かないかとのこと。朝送ったと伝えましたが、どうやら確認がうまくできてなかったようです。
すぐにチェックアウトできたのですが、ホテルの下のフロアは普通にレストランは営業をしていて、宴会場では宴会をやっているようで、賑やかな声が聞こえていました。ホテル側でタクシーを呼んでくれて、雨の中、我々は久々の自宅に向かったのでした。
かくして、シンガポールでの2週間のホテルでの隔離生活が終わったのですが、こういう努力のおかげでシンガポールの市内感染はほぼゼロに抑えられています。シンガポールに向かう飛行機に乗る72時間前以内にPCR検査を受け、陰性証明を持っている人しかシンガポールに入国できず、さらに入国時に空港でPCR検査をして、その日のうちに結果が確認できるのにも関わらず、さらに2週間の隔離とその最後にまたPCR検査をするという念の入れようです。(入国前の準備からシンガポール到着、ホテルへのチェックインまでの様子はこの記事の前の記事で書いていますので、そちらを参考にしてください)
このおかげで、2週間の隔離という稀有な体験をすることができました。部屋から一歩も外に出る事なく、部屋の中で過ごした2週間は、忘れることのできない思い出となるでしょう。そして早くコロナが収束し、こんなことが昔話になることを祈っております。
来る前は2週間という時間の長さが不安でした。また、部屋から一歩も外に出ることなく、一定の場所に留まるという、これまでの人生の中で一度も経験もしたことのない事だったので、心配でいっぱいでした。外の空気を吸えなくて、大丈夫だろうか?同じ環境の中で飽きることはないだろうか?食事は飽きないだろうか?閉塞感で精神的におかしくならないだろうか?など不安のオンパレードでした。
おまけに夫婦二人で同じ部屋に四六時中 x 2週間いるということがどういうことか、想像すらできませんでした。「一人の時間も必要なんだよ」とよく言っていた妻が果たして、狭い空間に閉じ込められ、時間と空間を共有せざるを得ない状況の中でどうなるのかを考えると、少々不安でした。もしも機嫌が悪くなった場合に、ホテルの部屋では逃げ場がありません(汗)。
でも人間、何とか適応できるものです。2週間が終わってみると、あっと言う間でした。幸いにして、滞在したホテルが、シンガポールのリージェントホテルという五つ星ホテルで、部屋は思ったより広々としているし、バルコニーは無いけれど窓は大きくくて景色は良いし、食事は美味しいし、ホテルのサービスも良いので、滞在はとても快適でした。
2週間の隔離が終わって、ここを去るのが寂しくなったくらいです。住めば都というように、この平和な空間に慣れてしまうと、隔離空間が心地よく思えてしまいます。2週間を指定された場所で過ごすというのは強制的な義務なのですが、この経験はユニークな体験でした。リゾートに旅行に行っても、何だかんだ忙しいのですが、この2週間は、自分で予定を決めたり、手配をする必要もなく、何を食べるのかを考える必要がなく、料理をする必要もなく、外の世界のストレスを感じることもなく、平和な時間だけが過ぎてゆきました。
この2週間の滞在の中で、いろいろなことを経験したり、発見したことがあるので、それを書き留めておきたいと思います。また、これからシンガポールに入国するために隔離をする方もおられると思いますので、持ってきてよかった物などについても記しておきたいと思います。参考になりましたら幸いです。
ホテルに関して
どのホテルになるのかは全く運によります。同じ日の朝に到着した人は、キッチナーロードのパークロイヤルだったようですし、別な日に到着した人は、隣のJENだったり、シティーホールのスイソテルやJWマリオット、フェアモント、あるいは、グランドコプソーンや、シェラトン、シャングリラといういう人もいました。
2月21日の夕方、50人以上の人がリージェントホテルに来て、15日目の3月7日に全員が出て行ったので、数日中に。また多くの人たちがこのホテルにやってくるのでしょう。それがいつになるのかは、ホテル側の準備もあるし、他のホテルとの調整や、到着者の数などいろんな調整で決まるので、どのホテルになるのかは全くわかりません。
私たちが隔離で2週間を過ごすことになったのは、オーチャードロードから少し外れた静かなエリアにあるリージェントホテルでした。シンガポールのホテルの値段は高いので、このような五つ星のホテルに泊まれたことは非常に幸運でした。
あくまでも個人の感想ですが、隔離施設としては非常にレベルの高いものでした。6階の窓の部屋の景色はとても平和な感じだし、食事やサービス対応も非常に満足のいくものでした。
このホテルには宿泊したことはないのですが、宴会場や、レストランや、バーには何度か訪れたことがありました。シンガポール日本商工会議所が毎年行っている新年会はこのホテルの一階の宴会場で行われているので、何度も来たことがあります。一昨年には、このホテルに入っている天ぷらの天信や、アジアトップ50バーの一位を獲得したことのあるマンハッタンというバーにも来たことがありました。さらに、イタリアン・レストランのバジリコや、中華料理のサマー・パレスはシンガポールでも有名なレストランとなっています。
景色という点では、高層のスイソテルから見える景色はとても魅力的だし、フェアモントや、JWマリオットとかも設備がよさそうだったのですが、結果的には、リージェントになってとてもよかったと思います。自分で選択することはできないので、比較してもあまり意味はありません。どのホテルになるのかは運で、到着する時間帯やどの航空会社、どの国から来た便なのかは全く関連がないようです。
リージェントホテルは、現在ほ隔離用の施設として使われています。下のレストランや宴会場は営業しています。バルコニー付きの部屋もあるのですが、私たちに与えられた部屋はバルコニーのない部屋でした。バルコニーがあると、外の空気を吸えてよいし、開放感があるので、バルコニー付きの部屋だったらいいなと思っていたのですが、普通の部屋でした。でも、天井も高いし、窓も大きいので、外に出られなくても全く閉塞感はありませんでした。
同じホテルでも建物のどの面の部屋なのか、また何階なのかによって風景は変わるのですが、与えられた6階の部屋で十分満足することができました。馴染みのあるタングリンモールのすぐ裏手だし、静かな住宅地が見えています。自分が住んでいるコンドミニアムが遠くに見えているのも、何か不思議な縁を感じました。
ホテルの食事
ホテルの食事は非常に満足のいくものでした。到着した日に、2週間分のメニューの選択をしなければならないのですが、何を選んだのかはすぐに忘れてしまいました。忘れないようにスマホで撮っておけばよかったと後で思いました。朝食は固定なのですが、昼食と夕食は、二種類の中からの選択です。イタリアンやローカルフードが並んでいましたが、片方どちらかがベジタリアンになっていました。
イタリアンは、パスタはペンネやラビオリで、ベジタリアンになっていました。ベジタリアンと言っても、いろんな野菜が入っていて、チーズもかかっていてとても美味しかったです。イタリアンのパスタだと、ベーコンなどが入っていることを期待してしまうのですが、ベジタリアンだけでもきちんとした料理として成立するのだということをあらためて思い知らされました。
あと、夜は必ずスープが付いてくるというのもよかったです。コーン、マッシュルーム、豆、ブロッコリーなど日替わりで暖かいスープが出ました。
朝食も、デニッシュが二つ(一つはクロワッサンの時が多い)で、バターとジャム、ヨーグルト、ジュース、フルーツのセットですが、ヨーグルトは日替わりでストロベリー、アップル、アプリコット、アロエ、マンゴなど、ジュースもオレンジ、マンゴ、アップル、フルーツはバナナ、リンゴ、みかん、プラム、洋梨など日替わりになっていました。
ランチには、オレオやリッツなどのお菓子が付き、夜は小さなロールケーキや、デザートが付いていました。
料理の味つけは、濃過ぎず、薄過ぎず、ちょうどいい感じでした。また、どのメニューも野菜が多めで、野菜の種類も豊富で、非常にバランスがよかったと思います。生野菜がなくても、野菜は十分取れ、健康に配慮してくれていることを感謝したくなるようなメニューでした。
料理も温かい状態で届けられ、美味しく食べられました。
このホテルには、バジリコという有名なイタリアンが入っているのですが、このイタリアンの食事はこのレストランのキッチンで作られているのではと思われました。それほどまでに美味しかったです。
また、チキンライスなどのローカルフードも素晴らしかったです。
こちらの食事は、BioPakという紙の容器と、木製のスプーン、フォーク、ナイフのセットで供給されました。他のホテルの食事は、プラスチックのものがほとんどなのに、このホテルのこの環境意識は非常に感心しました。
持ってきて役立ったもの
日本から沢山のものを段ボールで持ってきたのですが、役立ったものをいくつかご紹介したいと思います。
1) 乾燥野菜とスープ、味噌汁など
ホテルで出る食事で野菜不足になることはありませんでしたが、ランチには野菜スープや味噌汁を付けることにしました。
2) ルームスプレーと消臭除菌剤
こちらのスリーフという身体に安全な消臭除菌スプレーを妻が持ってきて、食後などに時々シュッとやって部屋ににおいがこもらないようにしていました。
またこちらの商品を妻が持ってきましたが、朝や寝る前とかに心を落ち着かせることができました。いろいろなタイプがあったそうなのですが、妻が自分の好きな香りのものを選んで購入したら、「愛と調和」というシンボルワードのものでした。おかげで2週間、平和に過ごすことができました。
3) ポータブルDVDプレーヤー
こちらは、以前、シンガポールで買ったものですが、妻が韓国ドラマを見るのに使いました。ホテルにはDVDプレーヤーなどはついていないので、これが役立ちました。
4) 体温計
これは必需品です。1日3回体温を測り、FWMOM/Careというアプリで報告しなければならないので、体温計がないとこれができません。
5) 延長コード
スマホの充電などで電源が沢山必要だろうと延長コードを持ってきたのですが、ホテルの部屋にはデスクに3個、ベッドサイドに4個、壁面に2個あり、これだけで十分な数がありました。しかもデスクとベッドサイドの電源は、日本タイプのもシンガポールタイプのもアダプターなしで、どちらでも入るのでこれは便利でした。
6) ハンドソープ
ホテルには石鹸や、シャワージェルはあるのですが、ハンドソープを持ってきました。手洗いをする機会も多いので、これは便利でした。
7) トイレ掃除用の流せるシート
滞在中はホテルの掃除は入らないので、トイレを清潔に保つために流せるシートを持ってきたのですが、これは便利でした。他にも除菌シートや、掃除用のシートなども便利でした。
8) ナイフ
フルーツをカットしたりする場合に使いました。
9) 洗濯用洗剤
下着などを洗うための洗剤は必要ですね。あとハンガーもあると便利です。ホテルのクリーニングに出してもよいのですが、下着などは洗ってバスルームにかけておけば1日もせずに乾きます。
10)サランラップやジプロック
洗った果物を置いておいたり、飲みかけの飲み物に蓋をするような場合に便利でした。また、朝食でついてくるバターやジャムなど使わなくて溜まっていくものを冷蔵庫に入れておくのにジプロックは便利でした。
11)シャンプーやコンディショナー、シャワージェルなどは、ホテルにロクシタンのものがついていたので、それを使わせてもらいました。
12)本は何冊か持ってきたのですが、結局読む時間はほとんどありませんでした。
13)カップ麺や梅干しなど日本の食材を持ってきたのですが、ホテルの食事が美味しいのであまり出番がなかったです。でも、ペヤングの焼きそばと、カップヌードルは懐かしかったです。
14)ゴミ袋
ゴミはドアの外に出しておけば回収してくれます。ホテルから袋ももらえるのですが、部屋にゴミを溜めたくなかったので、持ってきたゴミ袋が役にたちました。
15)ラジオ(ブルートゥーススピーカー)
テレビにもスマホのスポティファイを飛ばせましたが、時々ラジオでローカルのラジオ番組などを聞きました。また夜寝る時には、スポティファイに入れてある睡眠用の音楽をブルートゥースで繋いでかけていました。
隔離生活の日常に関して
2週間の間は、部屋の掃除とかベッドメーキングなどのサービスはありません。バスタオルやバスマットは、電話で頼むと新しいのを持ってきてくれました。ピローケースなども取り替えてくれたし、掃除機は一度借りました。トイレットペーパーも電話すればすぐに補充してくれますし、インスタントコーヒーや紅茶も補充してくれました。部屋の外の椅子の上に置いてくれて、ドアベルや、ノックで知らせてくれます。手渡しで受け取るということはありません。最初はどこまでお願いしていいのかよくわからなかったのですが、必要なものはどんどん頼んでいいんだと思いました。
滞在中に、シンガポールのMOM (人材開発省)から何度も電話がありました。全部で数回かかってきました。最初のうちは、名前、ホテル名、部屋番号、IDナンバーなどを聞かれ、一人で滞在しているのかなども聞かれました。アプリで体温を3回報告しているかなどの念もおされました。健康状況も尋ねられることもありました。隔離も後半になると、隔離の終わる日の確認と、Swab Test (PCR検査)の日時の確認などが加わりました。
毎回違う人がスマホに電話してきて、かなりシンガポール訛りの強い(いわゆるシングリッシュ)の人も多いので、シンガポールの英語に慣れていない人には最初は聞き取りにくいのではないかと思いました。
また、スマホがないとシンガポールに来るのは無理だというのを痛感しました。PCR検査などの結果は、スマホにメッセージで連絡がきますし、最後のPCRの検査結果を受け取ったらそれをスクリーンショットにしてホテルに転送しなければなりません。また、ホテルに着いたら、FWMOM/Careというアプリをダウンロードして、2週間毎日、1日3回、計測した体温を報告しないといけません。
さらに、MOMからの連絡もすべてスマホです。これほどまでにスマホが重要な役割を果たすのだとあらためて痛感しました。
最後のPCR検査とチェックアウトに向けて
11日目の夕方にHPB(Health Promotion Board)というところからスマホにメッセージが入ってきて、PCR検査の日時と場所を知らせてきました。
隔離12日目、ホテルのマネジメントからレターが届きました。15日目に隔離が終了するので、その段取りと、チェックアウトに関してのお知らせでした。事務的なレターなのに、その書き方がとても温かい気がしました。下の画像がそのレターなのですが、印象に残った箇所を赤枠で囲っておきました。
「次はもっとハッピーな機会にこのホテルでお客様を再びお迎えできることを心待ちにしています」というメッセージですが、とても好印象でした。
13日目にホテルから部屋の電話に連絡があり、PCRテストの時間に関しては、人数が多いので、土曜日(14日目)の朝9時頃から部屋でスタンバイしておいてほしいとの連絡が入りました。HPBからのメッセージにあった時間ではないようです。ホテルの人間が部屋に来て、案内するので、それまで部屋で待機するようにとのことでした。
また、それと別にホテルから連絡がありました。15日のチェックアウトの段取りに関してでした。PCRテストの結果を15日に受け取ったら、そのスクリーンショットをホテルの電話に送る。そうするとチェックアウトの手続きに入るとのこと。荷物がどれくらいあるのか、タクシーは必要かなども聞かれました。
いよいよ14日目の午前9時から部屋でスタンバイしていましたが、10時過ぎに部屋をノックする音が。外に、防護服を着た女性が立っていました。私たちは、パスポートとIDカードだけ持って、部屋を出ます。エレベーターにはまた別の防護服の人がいて、エレベーターで11階まで上がりました。
エレベーターを降り、案内されたところが、リージェント・クラブという部屋。普段は豪華なクラブルームなのですが、部屋のテーブルや椅子は取り払われていました。下の写真が普段のホテルのサイトに出ているリージェント・クラブの様子です。
入り口に受付の机があり、パスポートとIDの確認と、鼻水などの症状がないかどうかの確認をさせられます。そしてそこから、バルコニーに設置された検査場所に。
何とそこはバルコニー。久々に触れる熱帯の空気、そしてシンガポールの風景。こんな素敵な場所で検査をしてくれるということに感激すら覚えました。防護服の担当者が、この検査の説明をします。空港で受けたのとはちょっと違って、鼻だけで行い、それもちょっと奥深くまで綿棒を入れる。それもすこし長い時間になるとのことでした。いわゆる鼻出しマスクの状態で、まっすぐ前を見ているようにとの指示。綿棒が鼻の奥まで届くのを感じます。口で息をするようにと指示されます。そしてさらに5秒くらい待って、綿棒が抜かれます。それを右と左で同じように行うのですが、痛さ等は特に感じず終わりました。
こんな素敵な場所でPCR検査を受ける機会はなかなかないんじゃないかと思いました。瞬間的ではあったのですが、外の空気と景色を味わえることの幸せを感じました。
結果が来たのは、翌日の15日目の午前10時ちょっと前。スマホのメッセージに送られてきました。
"NEGATIVE"(陰性)という文字にほっとしました。
これをスクリーンショットにして、ホテルに送らなければならないのですが、いろいろ試行錯誤の末、WhatsAppで送りました。隔離中の食事は15日目の朝食までですが、昼前にランチのフライドライスが届けられました。
チェックアウトが午後2時を過ぎる場合は、昼食が届けられるという情報が事前レターに書かれていました。ということは、チェックアウトは午後になるのかなと思っておりました。2時過ぎまで部屋で待っていたらホテルのフロントから電話が来て、結果はまだ届かないかとのこと。朝送ったと伝えましたが、どうやら確認がうまくできてなかったようです。
すぐにチェックアウトできたのですが、ホテルの下のフロアは普通にレストランは営業をしていて、宴会場では宴会をやっているようで、賑やかな声が聞こえていました。ホテル側でタクシーを呼んでくれて、雨の中、我々は久々の自宅に向かったのでした。
かくして、シンガポールでの2週間のホテルでの隔離生活が終わったのですが、こういう努力のおかげでシンガポールの市内感染はほぼゼロに抑えられています。シンガポールに向かう飛行機に乗る72時間前以内にPCR検査を受け、陰性証明を持っている人しかシンガポールに入国できず、さらに入国時に空港でPCR検査をして、その日のうちに結果が確認できるのにも関わらず、さらに2週間の隔離とその最後にまたPCR検査をするという念の入れようです。(入国前の準備からシンガポール到着、ホテルへのチェックインまでの様子はこの記事の前の記事で書いていますので、そちらを参考にしてください)
このおかげで、2週間の隔離という稀有な体験をすることができました。部屋から一歩も外に出る事なく、部屋の中で過ごした2週間は、忘れることのできない思い出となるでしょう。そして早くコロナが収束し、こんなことが昔話になることを祈っております。
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