思惟石

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『旅行者の朝食』 グルメ話しだけじゃない!

2025-01-10 11:09:58 | 日記
『旅行者の朝食』
米原万里

ロシア語通訳の先駆け的存在であり、
めっちゃ文筆の才もある米原万里さんの
食にまつわるエッセイを集めた一冊。

ちなみにこの人、ものすごい大食漢でもあるらしい。
私の憧れスキルを全部持っている人だな笑

まえがきからもう楽しい。
ロシア語同時通訳で知らない単語「アブオーヴォ」に出会って
慌てたというエピソードから始まるのですが。
これはラテン語の「AB OVO」で
「最初から(どうでもいいことからくどくどと)」の意。

「AB OVO LEDAEUS」(=レダの卵から)という表現があったそうで。
トロイ戦争の叙述(美女ヘレネーが攫われたのが発端)を
レダの卵(ヘレネーは母レダから卵で生まれてる。
ってなんでやねん、の、そもそもから)から話す必要はない、
という含意だそうです。

また、「AB OVO USQUE AD MALA」(=卵からりんごまで)
という古代ローマの慣用句もあったらしい。
宴席の最初には卵でシメは果物だったことから転じて
「最初から最後まで」の意だそうで。

勉強になる〜。
もう米原さん大好き!ってなる〜。

という感じで、単なる食いしん坊話で終わらず
めちゃくちゃ資料をあたって話を展開してくれる人なのです。
論文とか書こうと思えば書けるんじゃかなろうか。
私はエッセイで出版いただけてうれしいけれども。

ウオトカの話しも良かった。
ロシアでは通説の
「ウオトカのアルコールは39度でも41度でもなく、
丁度40度が最も美味。これを発見したのはメンデレーエフである」
を紹介したところ出典の問い合わせが来た。
言われてみたら分からない、ので、調べた。調べまくった。
という話しの展開がもう素敵。
結局これはデマっぽいんですが、
「ウオトカはロシアの酒」という常識にもあぐらをかいていたら
他国に製造特許や名称使用を奪われそうになってる。
という話しへと繋がります。
めっちゃおもしろい笑
あと、めっちゃロシアっぽい。

ちなみに権利を奪おうと画策した各国は、
自国の蒸留酒の由来は把握&権利獲得していて、
コニャック(1334年)、イギリス・ジン(1485年)、
ドイツ・ブラントヴァイン(1520年頃)と、
意外とハッキリしているらしい。
(ウオトカも1446年ロシア生まれで落着したそうです)

超楽しい。
あと10冊くらい読みたい。

ちびくろサンボがインド舞台のお話しだってのも
めっちゃおもしろいので、ぜひ。

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