上海双龍ラグビー倶楽部

上海にてラグビーを愛する者達の活動報告です。

(Vol.27) 暗澹たる気分でレッドカード[後編]

2007-11-02 18:54:32 | レフリー日記
(前回;Vol.27よりつづく)

ちょっと話がズレ掛け始めたけれど、ズレ掛けついでに………。

以前、筆者の「或る分野での師匠(*5)」が仰っていた事には「乱闘」という事で
お馴染みのスポーツで言えば、例えばアイスホッケーでは、NHLの試合なんかを
観てると、2人のプレイヤーが取っ組み合いを始めたとしますわね。そうすると、
両者は先ず、手に持っているスティックを放り出す(*6)。周りはというと、喧嘩
に加勢もせず仲裁もせず。で、ひと通りパンチの応酬をさせたところで「ハイ両者
とも一時退場」で収束させる………というのが、お約束というか暗黙の了解みたい
になっているらしいんです。ホントですかな?

(*5)意味深な書き方ですが、特に意味無しです。流して下さい。
(*6)或いは、レフリーが取り上げるだったか(?)。何れにしても、あんなものを
   振り回したりしたら危ないですからな。

例えばプロ野球の乱闘シーン。あれはあれで「ショー」的な要素も有るんでしょう
から、まぁお子様には見せたくないシーンではありますが、やれやれぇ~みたいな
もんなんでしょうね。ビーンボールを投げられたバッターが、マウンドに2歩3歩
と近付いたところで「それっ!」とばかりに両チームのベンチから選手が飛出して
来たら………、そら、2歩3歩と駆け寄ったバッターのアドレナリンも増量、仮に
本心的にそんなつもりではなかったとしても、今更戻れないってもんです。これが
2歩3歩と歩き出しても、両チーム、ベンチにキチンと腰掛けて「ナニしてんねん、
早よバッターボックスに戻れやぁ~」みたいなシラけた空気が醸し出されたならば、
バッターもスゴスゴと戻るしかないはず。

NHLの場合はだから、取り敢えず興奮している分だけは十分に発散させて、それ
を上手くフェードアウトさせる様に周りは決して仲裁もしないし、ましてや加勢も
しない。放っておくと、やり合ってる本人同士が「おい、何か周りシラけとるぞ。
そろそろ止めようぜ。あーアホらし」………という事ではないかと、思うんですね。

(写真と本文とは関係有りません。以下同じ。)

筆者は「或る分野での師匠」からこの「NHL理論」を聞いて以降は、ラグビーに
限らずあらゆる喧嘩の場面に於いて、この原則、つまり仲裁も加勢もしない………
を身上としているものです。

今回の乱闘シーンでも、暫くは「傍観」しておりました(*7)。こんなのはもう、
止められない。止めるつもりもない。珍プレー好プレーの特集なんかでは、バック
にゴングの音が鳴って、みのもんたの絶妙なナレーションが入って、ドスッ!だの
バシッ!だのとパンチの擬音が被さるんだろうなぁ。俺はさしずめ関根監督かな?
ベンチで手を後ろにやって「ナニやってんのよ。早くお止めなさいよ。人生はねぇ
1勝2敗よ」とか………。そうすると目の前でバトルやっとるこやつらは星野か?
大島か?島野コーチか?

(*7)これってやっぱり卑怯なのかなぁ?



そうそう、ラグビーでも、未だトップリーグになる前の社会人だったか学生の試合
だったか、場所は花園だったと思うけど、やはり乱闘状態になった時にレフリーが
「やれやれもう」みたいな表情で呆れかえっていた事が有りましたねぇ。岩下さん
だったか下井さんだったかだと思うけど、何か妙に共感したのを覚えています。

ただ、処分は処分として下さねばなりません。事態がひと通り収束したのを見計り、
先ずは両チームを遠避ける。アイツが悪い、コイツが先に手を出したと、これまた
ピーチクパーチクと言って来る。(そんな元気が有るんなら試合中にへタれた走り
すんなよ~)と思う。で、こういう場合「没収試合にしたろか」とか、まぁこちら
も色々と思うんだけど、客観的に、あくまでも客観的に処分を下そうという事で、
タッチジャッジ(2名)を交え、協議(らしい事)をする。その時点で実は筆者の判断
は決まっていて、まぁそれが処分の方法としてIRB(国際ラグビーボード)の規定
或いは基準通りか否かは判らないけれど………、

・最初に手(か脚)を出した者を「レッドカード(一発退場)」。やり出しっぺの罪が
 最も重い。
 ⇒これは、タッチジャッジの小林君がちゃんと見ていてくれました。
・残り全員(両チーム)に、限り無くイエローカードに近い「警告」。喧嘩両成敗。
・「警告」なのでイエローカードは示さないけれど「シンビン同様に、頭を冷やし
 なさい」という事で、全員10分間の退場………代わりのハーフタイム。

………という事で、我乍ら「大岡裁き」じゃなかったでしょうか………と、これは
勿論、自己満足。

さて、後半。気を取り直して、先ずは両チームのキャプテンに「鎮まりましょうね」
と声を掛けて、それでも未だマグマがグツグツしている感じではあったけど(*8)、
何とか後半の30分を乗り切りました。

(*8)活火山の上でラグビーしているみたいだな。

ところで、ここまでこういう具合に書いていると、何だか、体育学院も毛蟹も全員
が「幼稚園レベルのオツム」みたいに思われるかも知れませんけれど勿論の事乍ら
さに在らずで、特に毛蟹の方は試合としては快勝という余裕でもあるんだろうけど、
試合後に「あんな暴力は両チームとも駄目だよねぇ」とか「君のレフリング、今日
はとても良かったよ」とか「同情するよ」とか「ボクシングの審判も勉強したら」
とか………、色々と声を掛けてくれた。レフリーって、ともすれば広いピッチ上で
30対1というか、まぁタッチジャッジが居てくれるので30対3なんだろうけど、
何れにしてもとても孤独な立場ですよ。出来るだけ「対」という関係ではなくて、
「合計33名ご一同様」という空気の中で居たいもんだけど、中々そうも行かない。
試合中はプレイヤーも興奮しているから無理だろうけど、終わった後でも良いから
一言二言、勿論、耳に痛い批判、提言、アドバイスも大歓迎。声を掛けてもらえる
のはとても嬉しいものです。

そうした中で、お互いをリスペクトして、プレイヤーもレフリーも研鑽しスキルを
高めて、美味しいお酒を呑む、裸になる、踊る………。年に何回も有る事ではない
けれど、今週末こそは、来週こそはそうあって欲しいと、今日も空想の試合の中で
新米レフリーは走り回っているのである。

(完)



【付 録】

今年の5月の事ですが「乱闘みたいな事はしないで欲しい」と【オチ通】をお借り
して以下の様な投稿をしました。当時、そこそこの反響も有りましたのでご記憶の
方も居られるかと思いますが、今一度、その文章をコピーしておきたいと思います。
事態はさほど変わって(進歩して)いないのです。

これからも「アンチバイオレンス」の姿勢を、我々レフリーコミッティ一同は貫く
所存です。頑なに、辛抱強く………。




Michael.



[5月のメール・コピー]
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双龍の皆さんへ;


お早うございます。

今週も試合(ミックスで)かも知れないという事で、ちょっとご意見を。

先週、ぷ~けっと組は、南国の海辺に集まった各国地域のラグビーバカ達との
友情深まる至福のひと時を堪能された様で、ユキオちゃん編集のメールを読む
だに、誠に羨ましい限りです。ラグビーに限らずでしょうけど、スポーツって
イイなぁ~と思う瞬間ですね。

さて、ほぼ同じ時間、上海に残った留守番'sの数人はしかし、暗澹たる思いで
おりました。

先週、上海では毛蟹vs体育学院が試合をしました。双龍留守番'sは参加せず。
私;Michael.は、20分×3本の内の、2本目の20分の笛を吹かせてもらい
ました(1本目はアーロン小林、3本目はアレックス)。

果たして試合は、1本目の終盤辺りからヒートアップ気味でラフプレーの応酬。
2本目でもその流れは塞き止まらず、3本目ではもう収集の着かない状態に。

ゲームマネジメントはレフリーの仕事。それが出来ないのはレフリーが悪いと
言われればそれ迄ですが、先週の試合に関して言えば、それ以前の問題。自分
が言うのも何ですけど、プレイヤーがストレスを感じる様な裁き方だったとは
決して思えません。

何かもう、ガキの喧嘩以下。ラフプレーに取っ組み合いにどつき合い。最後の
最後は30人が入り乱れての文字通り乱闘で、ノーサイドのホイッスルも無い
まま、没収試合同然でフルタイム。何やら「ファイトォ!イッパァ~ツ!」を
勘違いしている様ですな。

「キッズラグビーやりましょう」ですか?子供は先に帰らせましょう。絶対に
見せたくないシーン。親御さんにしたってあんなの見たら「ラグビー止めよか」
と家族会議の議題にしたくなる様なシーン。

それでいて、ラストはお決まりの「花道作って拍手して」ですわな。舐めとん
のか毛蟹も体育学院も。それ自体は誠に美しい光景かも知れんけど、ぜ~ぜん
シラケとるわ。オマエらに試合後に花道作って拍手して「嗚呼、ラグビーって
イイなぁ~」を感じる資格なんぞ無いわ。そんなんで「ラグビーって試合中は
喧嘩になるかも知れん程に激しくやり合うけど、試合が終わったらノーサイド
の精神なんやでぇ……」とか、ごまかされへんで。それは、キチンとルールを
守って、その中でしかし、激しくやり合ったプレイヤー同士だけが、敵味方も
無く美しく相手を称え合える権利を持つのであって、毛蟹やら体育学院の様な
五流六流のドアホ乱闘プレイヤーにはチンポコの周りの毛ェ剃ってもろたかて
やってもらいたくない行為ですわ………いや失礼。ちょっと言葉が過ぎました。

で、何が言いたいかというと、ちょっとまとまりにくくなってますけど、よく
竹監督が試合後に「もう毛蟹とはやりたないわ~」って言うでしょ。私もそう
思うんですよ。体育学院もしかり。でも、今の上海で、この2チームを度外視
するとなると、我が双龍としても試合する相手が居なくなる訳で、まさか試合
相手を求めて毎週の様に北京や香港へ遠征するのも現実的ではないし………と
いう事は、意外にも、いや意外ではなく、我々は上海に居てラグビー(の試合)
難民なんかなぁ~と、ちょっと心細く思った次第。双龍が単独で30人以上を
集めてのABマッチ、これは夢の夢でしょうか???

ワタクシゴトですんませんが、今週は欠席です。試合になった場合、双龍だけ
で単独でチームが組めるかどうか判りませんが、単独であれ合同であれ、先ず
は本当に馬鹿馬鹿しい反則やラフプレー、そういった挑発には、双龍の皆さん
は決して乗らない、乗せられない様にして下さい。目には目を………的な報復
行為はしないで下さい。そんなんに巻き込まれて、怪我でもしたら、それこそ
やられ損です。目に余る様でしたら「辞めたらぁ!」でケツ撒くってピッチを
出て下さい。奴らの行為は、本当にラグビー、いや全スポーツを冒涜するもの
です。

まぁ今に始まった事ではなく、私にも免疫は出来ていますが、齢40を過ぎて
益々ラグビーへの愛情が深まるにつれ、本当に許せない気持ちなのです。今週
は会場が体育学院との事。応援の学生さんも沢山観に来るでしょう。体育学院
プレイヤーとしてはアドレナリン充分。負けられないという気持ちが、良い形
で表に出て来る事を祈るだけです。

試合に参加される双龍プレイヤーだけでなく、ピッチに立つ全てのプレイヤー
のご健闘をお祈り致します。

以 上


Michael.
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