朝起きて私が一番にすることは、体重測定である。そして、会社から帰って来
て最初にすることも、体重測定。ついでに、お風呂上りにすることも、これまた
体重測定なのだ。つまり、特別に忙しい時を除き、私は一日三回以上体重測定
をしていることになる。そしてその体重計の針が、たったひと目盛り右に動いた
か、左に動いたかで一喜一憂するわけである。
笑ってはいけない。口にせずとも、女性の(特に十代・二十代の)多くは、それ
と同じようなことをしているのに違いない、と私は思っている。何故なら、女性雑
誌が「ダイエット特集」を掲載した時の、あの素早い売れ方がなによりも女の子
達の現実を物語っているではないか。また、あの雑誌のタイトルの付け方もうま
い。「クリスマスまでに3kg痩せる」とか、「水着が似合う身体になる」あるいは
「春までにカッコよく痩せる」など。ここで不思議なのは、「3」という数字が必ず
記事のどこかに登場することだ。そして女の子達は、面白いように簡単に「マイ
ナス3」の魔法にかかる。一体いつから3キロが、こんなに女の子の心を支配す
るようになってしまったのだろう?
分からない。なぜか分からないが、気がついたら、体重計の針の動きが女性
の心の中に「どかん」と居座っていた。確かに太りすぎは不健康だし、あまり美
しくないかもしれない。でも、今の女の子達の痩せ願望はちょっとヘンだ。
だって「ダイエットしてる」ということが、ひとつのステイタスのようになってしまっ
ているからだ。だから、太っている子は標準に、標準の子は痩せぎみに、そして
痩せている子はガリガリに、とエスカレートしてしまった。なのに、ダイエットブー
ムのあとにマスコミが送り出したのはセクシー路線だ。
せっかく痩せたいというのに……なんと残酷な現実。
今こそ、女性達は叫ばなければ。「もう、マスコミと体重計の針には振り回さ
れないぞ」と。