日本滞在の2か月ちょっとのあいだ、たまに思い出して食べたくなった英国の料理のひとつは...
やっぱり、ポーク・パイ pork pie !「やっぱり」というのは、はい。今まで何回も何回もストックポート日報で取り上げている、私の大好物だからです。
フィッシュ&チップスとならぶ、英国固有の「土着の食品」あるいは英国人がたまに無性に食べたくなる食べ物(英語でcomfort food )なはずです。
フィッシュ&チップスに比べると日本での知名度は格段に落ちますよね。
日本に行く直前に開店した「デリィ deli 」(お惣菜店、デリカテッセンという言葉は普及していません)に先週末はじめて立ち寄りました。
そこで買った2ポンド95ペンス(568円)のポーク・パイです。
たぶん...自家製だと思います。同じ通りに同じ家族が経営するらしい何十年も営業を続ける昔ながらの精肉店があります。
ショーケースに並ぶすべてのセイボリー・ペイストリー savoury pastry (お食事として食べられる甘くないパイ類)は街のパン屋のチェーン店と同じ品ぞろえなのに、高級で美味しそうに見えます。右側のケースに並んだ伝統のケーキ類や奥の棚にむき出しで並んだパンも同様...
普通のポークパイは売り切れ、カラメライズト・オニオン caramelized onion という砂糖と煮詰めたタマネギの入ったオシャレっぽいのを買いました。
上にのったかわいらしいハートの飾りを真っ二つに切って半分にしました。
ポークパイと言えば、空気抜きの穴がひとつ、てっぺんにくろぐろと穿ってあるのがー般的です。
チーズやハムといっしょに食べる、市販の瓶詰めオニオン・チャツネーと同じ味でした。美味しかったです。
塩味のきいたしっとりどっしりとした厚いパイ皮に煮凝り状の脂に包まれた豚肉のパテの大きなお団子がドン!と詰まっています。大きさのわりには食べ応えがあります。半分でじゅうぶん軽い昼食分のボリュームだったのですが...ああ、とまらない。
あまりの美味しさに1個丸ごと食べてしまいました。
娘はポークパイが好きではありませんし、夫はベジタリアン。好きなものを誰とも分けずに1人じめして食べるうしろめたい満足感...!!たまりません。
セイボリー・ペイストリーの中には温めた方がおいしいものもありますが、ポーク・パイは冷たいまま食べた方がいいでしょう。冷たく煮凝ったプリプリの脂が温まって溶けたらベタベタしてあまりおいしくなくなるような気がします。温めて、ナイフとフォークで食べる地方もあるようなのですが。
私がよく食べるのは...
スーパーマーケットに売られているこの、1口大のミニ・ポークパイ。庶民派スーパーマーケットのアスダで6個入りが2ポンド50ペンス(478円)。気軽に食べられるおやつサイズです。帰って来てからもう計3回スーパーマーケットで買い物をしています。
禁断症状のように行くたびに買って食べています!
ペイストリ―(パイ皮)の厚さは大きいものと同じですので必然的にサイズが小さい方が大好きなペイストリ―の量の割合が高くなります。
甘酸っぱいガーキン(小さいキュウリ)の酢漬け(ピックル pickle )のみじん切りが入ったものも味にパンチがあって好きです。
ポーク・パイの製法には英国の地方の数だけの豊富なバリエーションがあるそうです。スーパーマーケットで買えるのはもっぱら同じ製法の標準のパイ皮と中身の「肉団子」に数種類のチャツネやピックル、チーズなどの「トッピング」で味のバリエーションがつけられていることが多いですね。
今回、英国を離れていたのはたったの2カ月余りです。それでも、「帰ったら絶対に買って食べよう!」とたまらなく懐かしくなったのがポーク・パイ!
日本を離れて30年以上たつものの、この味が恋しい...と切実に思う日本の食べ物が思いつきません。もちろん日本滞在中になつかしい日本の食事を思う存分楽しみましたが!
スペインのバルセロナに永住する息子は故郷である英国の料理をあまりなつかしがりません。帰国した際にいつもきまって食べたがるのはフィッシュ&チップスとなぜか、中華料理だけ...
「英国で食べる価値があるのはフィッシュ&チップスと中華、インド料理だけ」と国外で言われているようですが、日本でも特にフィッシュ&チップスの評判が独り歩きしているようです。
他にもあるんですよ、おいしいものが!そのー例がこのポーク・パイ!
...ポーク・パイを買ったパイ近所のデリィの英国産のチーズ売り場です☟果物の形の容器に詰まったクリーム状のチーズに興味津々です。今まで見たことがありません。
現在タイでムエ‐タイの修行中の息子の本業はシェフです。1週間ほど私と合流した日本で、プロの好奇心でどん欲に日本の料理を楽しんでいました。それこそ高級寿司からコンビニエンスストアのハムカツ、唐揚げまで...
息子もポーク・パイは特に好きではありません。
「心の故郷の料理(日本で言うソールフード)」って必ずしも生まれ育った国のものとは限らないんですよね。私は息子に英国料理をたくさん作って食べさせたはずですが「お母さんの作る料理でいちばん好きなものはオムライス!」と言います。
以前に書いたポークパイに関する記事のリンクです。
肉屋の自家製を買ってみた、英国名物のポークパイ