クイズです;2カ月の日本滞在を経て、英国に帰国した私がその日の夕食にリクエストした食事は何でしょうか。
(答はー番下)
日本に滞在中、恋しくなった英国の食べ物が数々ありました。
代表的なのがオーブン料理。
日本の実家にはオーブンがありません。短時間で表面に焼き色を付けて調理する「オーブントースター」はありますが、あれは英国で言う「グリル grill」に近いものでしょう。じっくりと長時間ローストroastする本格的なオーブン料理には適していません。(アメリカ合衆国でグリルといえば、炭火の上の網の上で調理する焼き鳥やバーベキューのような調理法のことだそうです)
スーパーマーケットで半額落ちした当日が賞味期限のステーキ&エール・パイ Steak & ale pie の出来合いを買ってきました。
箱入りデリの本来なら高級品です。2個入り4ポンド80ペンス(911円)はお手頃でした。
エール(ビールの一種)で長時間、トロットロになるまでやわらかーく煮込んだ角切りの牛肉がサクサクのパイ皮の壺に入っています。
ベジタリアンの夫には、ショートブレッドのようなしっとりしたペイストリ―(パイ皮)に包まれた、植物由来の肉モドキ食材のみで作られた冷凍食品のステーキ&キドニーパイモドキ(左)をオーブン調理しました。
オーブンからアツアツを出したところ、夫のモドキパイがプッツンと破裂、パイ皮のふちが決壊してグレイビーがジュクジュクあふれ出しました。
それを見た夫がひと言「ネコのゲロみたい」...食べたくなかったら、食べなくていいから!
久々の、濃厚な英国の味、堪能しました。
夫のリクエストで作った海洋国英国の人気の家庭料理、フィッシュ・パイ fish pie。
以前にもストックポート日報にレシピを載せたのですが、今回は改定版です。
私はバターで小麦粉をゆっくりと炒め、牛乳を少しずつ加えてとろみのあるベシャメル・ソースBéchamel sauce(ホワイトソース)を別の小鍋で作っていましたが、日本で「グラタン」などを作る時の簡略式でじゅうぶん美味しくできることがわかりました。
以下、簡略式レシピです。約4人分
タマネギ1個のみじん切り、ニンジン1本の短冊切りをよく炒め、少量の水を加えて柔らかく煮る。
水気が減った頃に1口大のサカナ数種類(シャケ、タラ、小エビなど)400gと大さじ1杯ぐらいの小麦粉と400ml ほどの牛乳を加え、とろみがつくまで弱火で煮る。冷凍のグリーンピースを入れると彩りがきれい!
半リットルほどの水に適した量のフィッシュ・ストックかベジタブル・ストックを加える。
*「ストック」は味付けに使うスープの素です。日本では万能西洋料理の味付け「コンソメスープの素」で代用できるはずです!
1㎏ぐらいのゆでたジャガイモをつぶして、ツブツブマスタードを少量加え、マッシュ・ポテトを作る。
大型のオーブン皿にサカナと野菜のミックスをいれ、マッシュポテトをかぶせて平らにならし、200℃であらかじめ熱してあるオーブンで焼き色がつくまで20分...できあがり。
私は必ずフォークで「ユニオン・フラッグ」の模様に筋をつけます。
英国では「フィッシュ・パイ・ミックス fish pie mix 」というフィッシュ・パイのなかみ(サカナ各種)の詰め合わせがスーパーマーケットのサカナ売り場で買えます。値段もお手頃で便利です。
ステーキ&キドニーパイ(私が今回食べたものの製品名はステーキ&エールパイ)は家庭で作って再現するにはちょっとハードルの高い英国伝統料理ですが英国のパブ・ディナー(昼食)の定番です。「食べてみたいな」と思った方、英国旅行の際にお試しください。パブはふつう3時前にオーダーストップなのでご注意を!
フィッシュ・パイはオーブンのあるご家庭で作って食べてみてください。サカナ好きの日本人がきっと好きになる英国の伝統家庭料理です。
彩りがよくなるように、サラダを添えてお皿につけました。
英国人は温かい料理に生野菜を添えるのをとても嫌がります。高齢者ほどその傾向があるのではないでしょうか。トンカツやエビフライにキャベツの千切りやトマトが添えられているのも気持ち悪いようです。
ベジタリアンなのに私と子供たちが同じ食卓で肉を食べるのを嫌がらない夫も、私と子供たちのお皿に調理した肉と生野菜がのるのを嫌がりました。15,6年ほど前までのことでしょうか。
その頃は、炊いた白米をソースや汁に浸してビショビショにして食べる「西洋人の和食の食べ方」を私がいくら頼んでも頑としてやめなかった夫ですが、同じようにやりたがる小さかった子供たちに「日本の食卓ではやらない」と言ってやめさせようとしている私を見て...考えを改めてくれました。
日本人の母を持つ子供たちが日本の食習慣を学ぶ重要性についてとつぜん理解してくれたようです。
今ではご飯に「おかず」やみそ汁を混ぜないで食べてくれますし、お皿に生野菜が添えられても彩りを喜んでくれるようになりました。
クイズの答え;帰国したその日の夕食に、私が食べたい!と言って買ってきたのは...ジャーン!
フィッシュ&チップス fish & chipsです。たまに無性に食べたくなる英国の人気ソウルフード!
ぜんぜん美味しそうに見えない写真です。持ち帰ると、こんなものです。チップス(ポテトフライ)はわら半紙にまかれて待機中です。うちではいつも3人で2人分ポーションのフィッシュフライ、3人分のチップスを注文します。1人前の量は驚きの大きさです。
実は日本滞在中に「フィッシュ&チップスが食べたい...!」と思ったことはー度もなかったのですが、帰ったら突然食べたくなりました。
お昼休みに持ち帰って職場で、バス停でバスを待ちながら食べる、あるいは主婦が夕食の支度をサボりたい時に夫が気を利かせて買ってくる...ようなイメージの庶民的なファーストフードです。海辺の町で食べると旅情をかきたてる特別な感じがします。
「ガストロ・パブ(食事が評判のパブ)」でもオシャレに盛り付けたサクサクコロモの極上フィッシュ&チップスが食べられますが、なにか作りものめいた感じがします。
英国で本場のフィッシュ&チップスが食べてみたい方は、お昼時に持ち帰りカウンターで建設作業員が列を作っているようないきのいい店の、何となくベタベタしたテーブル席に座ってアルミのティーポットに入った濃い紅茶といっしょに注文してみてください。揚げたては格別です!