イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

クリスマス前の浮かれ切った雰囲気に水を差す、戦没兵士を悼む厳粛な日

2024年11月11日 06時51分28秒 | 英国の、生活のひとコマ

昨日、11月10日はリメンブランス・サンデー Remembrance Sundayでした。

毎年、第一次世界大戦が終結した11月11日(1918年)に一番近い日曜日、レッド・ポピー・デイ Red Poppy Day とも言われます。午前中に英国全土とコモンウェルス、旧植民地の第一次、第二次大戦その他の紛争の戦没者を追悼する厳粛な式典があります。

軍関係者、王室メンバー、政府の要人、退役軍人などなどのものすごい数の人々が軍礼装や黒服でロンドン・セニタフ(戦没者慰霊塔)に集まって、赤いポピーの花輪をささげ、11時の黙とう、礼拝、長い長いパレードがあります。一部始終がテレビ放送されます。

これが終わると、「さあっ、クリスマスだ」と国中が公然と浮かれ立ちます。いえまだ1カ月半以上先なのですが...

 

ほんの10年ほど前までは、この日が終わるまではクリスマス気分で浮かれ立つのは不謹慎...みたいな雰囲気が確実にあったのですが...

今はもう、10月31日のハロウィーンが終わり次第「クリスマス商戦(日本的表現!)」のスイッチが入ってしまいます。

先週のストックポート、タウンセンターのショッピング・センター、マージー・ウェイ Merseyway のクリスマス飾りです。

浮かれ切った、クリスマスツリーと記念写真用のサンタクロースの帽子をかぶったクマさんベンチ、天井から下がるプレゼント(いずれも日暮れをすぎれば電飾できらめくはずです)の脇では...

リメンブランス・サンデーにむけて、レッド・ポピー募金のキャンペーンが展開されています。勲章をいっぱいつけた退役軍人が素朴な紙製やピンバッジの赤いポピーを販売して戦没軍人の遺族や、傷痍軍人を支援する基金を募っています。

毎年この時期になるとストックポート日報で記事にしている戦没者追悼行事に関して、私はあまり興味はありません。ただ、季節感を重んじる日本人の私にとって英国の季節の節目として意味があります。

ショーウィンドウのハロウィーンの飾りつけを見て深まる秋を、ボンファイヤ・ナイト(11月5日)の花火の音で夜の長い冬がもうそこまで来ていることを、10月の半ばごろから始まるレッド・ポピーのキャンペーンはリメンブランス・デイが近いことを、リメンブランス・デイが終われば、もう冬だ、クリスマス!!(うんざり)...を実感できます。

マージーウェイの入り口です。

...生木のクリスマスツリーは12月の最初の週末前にそえ付けられることが多いですね。伐ってきた木は早すぎると1月6日のエピファニー(クリスマス飾りをかたづける日)まで保たないのでしょう。

 

いちばん最初の写真は、マージーウェイ名物の、やはり記念撮影用の季節に合わせて飾り付けられるスイング・ベンチ(ブランコ)です。すわってセルフィーを撮るのがはばかられる重々しさです。

シルエットのモチーフは、有名な絵画からとった戦友の墓に黙とうをささげる第一次大戦の従軍兵士です。戦没兵士への追悼のシンボルになっているイメージです。(重い...)

スイング・ベンチの後ろの書店のショーウィンドウに本棚のイラストがプリントされた白い覆いがかかっていますね。追悼の思いに敬意を表して右隣のウィンドウのような浮かれたクリスマス・ディスプレイを隠しているのでしょう。

 

先月、家族でマンチェスターに行った時に撮った写真です。

松葉づえの将校に導かれ列になって堤防の上を歩く、ドイツ軍のマスタード・ガス(世界初の化学兵器)で失明した英軍兵士のブロンズ群像です。これも有名な絵画からの題材です。

2,019年の第一次大戦終結100周年を記念してマンチェスター・ピカディリー駅正面に設置された永久展示です。春夏秋冬1年中、マンチェスターを訪れる人々の気分をドンと重くしてくれる重厚なメッセージ...。「反戦」ではありません。何だろう?「犠牲の尊さをかみしめる」ようなことでしょうか。ここになくてもいいような気がするのですが...

この時期、赤いポピーの花輪でも首からかけられているのではないでしょうか。

 

 

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6 コメント

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犬と暮らす日々 (浅井 洋)
2024-11-11 16:37:16
凄いですね
 勲章をつけた 元軍人さんも
  並んで 歩いている 銅像の 軍人さんも

まるで「早く 戦争でも してくれ」って
  言外に 匂わせてるのかと
   心配します
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11月11日 (H.W.)
2024-11-12 10:49:11
11月11日が第一次大戦の終戦の日だとは知りませんでした。ドイツが連合国と休戦協定を結んだ日のようですね。オーストリアはその前、3日に既に降伏していたようです。アルプス山中でのイタリアとの戦闘などは相当に悲惨なものだったようで、今も何かにつけ語られたり、ドキュメンタリー番組などで見かけたりします。
ですが、11月11日に特にそのような話題が報じられることはあまりない気がします。それはおそらくこの日の午前11時に、四季に加わる“第5の季節”(とはいえ完全に“冬”と重なっているではないか?と私は思うのですが)−カーニバル(オーストリアではファッシング、スイスではファストナハト)のシーズンが始まるからではないかと...。ニュースとしてはこちらの方が大事、関心事でしょうし。特にドイツは現在、内政の方が大変な事態に陥っているので、こうしたばかばかしくも明るい話題が必要だろうと思います。
中欧カーニバルの本場、ケルンやデュッセルドルフなどでは、仮装した市民が集まって、市長さんあたりがシーズン開始を宣言したりします。オーストリアでも、ちょっとしたオープニングセレモニーのようなものは所々にありますが、ドイツのように「え?仕事はどうしたの?祭日?」と思うような規模ではありません。
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浅井さんへ (江里)
2024-11-14 06:15:11
浅井さん、
「早く 戦争でも してくれ」とまではいきませんが「戦争になったらおまかせください」ぐらいの意気込みだと思います。
2日間の戦没者追悼、愛国イベントのあいだ、「私たちが享受している平和と自由のためにあなた方は非常に多くのものを犠牲にしてくださいました」という追悼コメンタリーを何回もききました。センチメンタルでグッとくる決めゼリフです。
要するに「平和と自由のためなら戦争をしても良い」ということなのです。
戦後の反戦教育を受けた敗戦国の国民である私たちと価値観が違います。
ナチやファシズムを食い止める第二次大戦と違って第一次大戦は大義名分がないように思います。
深く考えなず、儀式をテレビで見て楽しむ...ぐらいのことでいいとおもいます。
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H.W.さんへ (江里)
2024-11-14 06:59:14
H.W.さん、
実は、H.W.さんがオーストリアに関する情報をコメントしてくださればいいなぁとおもって本文を書きました。
興味深いコメントをありがとうございます。

オーストリアがセルビアに宣戦布告したのが第一次大戦の始まりでしたよね、始めた張本人です!

え、オーストリアは停戦協定の1週間も前に「降伏」?知りませんでした。
欧州のオランダとベルギー、フランスは公休日だそうですし、戦争に干渉しただけの合衆国、(英国のコモンウェルス国である)カナダ、オーストラリア、ニュージーランドも儀式をとりおこなっている、軍事史上重大な記念日みたいなのですが、肝心のオーストリアと、最後まで戦って協定に調印して甚大な戦死者を出したドイツがカーニバル...ですって?しかも11時にはじまるカーニバル!?のんきすぎませんか。
同じ欧州のしんみりした追悼儀式のようすが国際ニュースで入ってこないのでしょうか。
やはり、敗戦国だからでしょうか。あまり話題にしたくないとか?
いえ、季節の変わり目のカーニバルのほうがずっと楽しそうですし。いいですね、そういう宗教と起源が関係なさそうな暦の上の原始的なお祭り。楽しそうです。
映像が見たいなと思ってカタカナで検索してみたのですが見つかりませんでした。第五の季節...ウィーンの舞踏会みたいな日本人が好きそうな日本語記事は見つけましたが...違うでしょう?もっと土着の民俗祭みたいなのを期待したのですが。仮装して外で飲み食いするような...?
返信する
敗戦国 (H.W.)
2024-11-15 11:36:35
ドイツでもオーストリアでも、2つの大戦の終戦に関する大きな催しがないのは、やはり敗戦国だからだろうと思います。
それと、第一次大戦では終戦前後にオーストリアでもドイツでも帝政が崩壊、第二次大戦後も連合軍4カ国の占領期を経て戦前とは全く異なる国家体制に変わったため、両国共に今の国家は“当時の体制を継承するものではない”ということなのではないでしょうか。英仏米連合国のように、退役軍人が勲章でも着けて堂々と参列するような場というのは、両国ではちょっと考えられませんね。そのあたりは日本と似ているのではないでしょうか。
日本と同様、第二次大戦終戦の日(5月9日)には追悼の式典がありますが、戦争犠牲者慰霊のためというか、「世界に向けてひたすらナチスドイツの悪行を詫びる」ためのもののように、私には見えます。

サラエボ事件から100年だった2014年には、メディアで色々な特集があって、テレビのドキュメンタリー番組など結構面白いものがありました。
オーストリアもドイツも戦争はしたくなかったようです。特にドイツはオーストリア擁護のためかなり“仕方なく”だったようで、本当に“引き摺り込まれてしまった”ような。

ドイツ・ケルンのカーニバルは Karneval Köln で検索すればよいかと。Fasching 或いは Faschingsumzug で検索すれば、オーストリアのカーニバルの様子が見られると思います。
カーニバルのクライマックスは、四旬節の初日“灰の水曜日”の前の“バラの月曜日” Rosenmontag で、この日はあちこちで仮装パレードがあります。公の祝日ではないのですが、特にドイツでは伝統的に(?)ほぼ休日扱いとする町や会社等が多く、ウチの辺りでも、イカれた連中がウロウロして危ないので、商店などは午後2時には閉めてしまうところが多いです。
それと、カーニバルシーズンは Ball 舞踏会のシーズンでもあるので、特に1月あたりはあちこちで色んな舞踏会が開かれます。ギムナジウムなど高校相当の学校の卒業舞踏会もこの時期です。
すみません!また本来の話題と全く関係のない話で長くなってしまいました。
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H.W.さんへ (江里)
2024-11-18 09:08:30
H.W.さん、
ありがとうございます。Faschingで検索して、次々と出てくるYouTubeのビデオをたくさん見ました。土着の習慣みたいなものがとても面白いです。ナマハゲみたいなお面もすごい。中世っぽい英国のグリーンマンみたいなのも共通性が興味深いです
11月にやるものには限らないようで場所もバラバラ、無作為にストリート・パレード多数が見られました。Rosenmontag でも検索しました。パワフルでやっぱり楽しそうです。
これをヨーロッパ中がしんみりする停戦記念日にやるのってやはり敗戦国だから...?納得です。さすがに勲章つけて武勇談や尊い犠牲は語れまい...

日本は第二次大戦の終戦記念日に大きな追悼儀式をやりますが、ドイツと違って謝罪の姿勢はあまり見えませんね。「平和の誓いを新たに」ってところは厳粛ですが世界(特にアジア)に申し訳ない気がします。日本の帝国主義の悪行はナチスの悪行とは微妙に異質ですが。
ところで日独伊三国同盟の悪行トリオのもう一国、イタリアはファシズムの反省教育をほとんどしないんだそうですね。ファシズム賛美の彫刻や門などがそのまま観光地などに残っているようです。ドキュメンタリーで見ました。
ドイツの反省には誠意と本気が感じられ、好ましいです。
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