都市圏の住宅事情を考えると、2・3階建てはもはや当たり前になっている。平屋建ての住宅はこの時代ではむしろ贅沢なものとなった。
2・3階建て。そこで階と階をつなぐものとして階段がある。
今回はその階段のお話。個人の住宅と言えど、その段の高さ(けあげ)や踏むための幅(踏面)そして踊り場の設置や階段の有効幅などは、法律(建築基準法)によって細かく設定されている。(守らなければ法律違反で処罰の対象となる)上下階の往来において、その数値はしっかりまもった上で、その計画や、立地条件に沿った考え方や使い方を加味することによって、ダイナミックで使いやすい空間になる。
そんな例を、当事務所の作品例を基にお話しします
小屋裏収納への階段。収納上部を階段状にして、家具の延長線上の階段。建設地が京都という訳ではないが、ちょうど古くからある階段箪笥的なもの (仮称/京都の家)
湾曲した漆喰壁に沿って、両サイドより踊り場まで伸びる階段。1階のパブリックに対し、2階のプライベートスペースを切り替える為のスイッチ的な役割がある。
友人知人を招きホームコンサート開催時などは、この階段が一つの舞台として、非日常の空間を演出する装置としての役割もある。
また、上部と側面に窓を設けることで、自然な光を間接的に取り入れ、湾曲した漆喰壁がその光を柔らかく反射させ、空間全体を優しく包み込む
(k-white邸)
漆喰と木のみで構成されたミニマムな階段。(jyousui-berino-house邸)
その上部、玉川上水に面した壁一面をガラスにすることで、柔らかな光が、階段全体を包み込む(jyousui-berino-house邸)
間口5.5m奥行約20mの梅原横丁の家は、どうしても中間位置で光を取り入れたかった。でないと、家の真ん中あたりが暗くなってしまうのです。
建築自体、間口に制限があるため、また隣地が迫っているので、窓というよりは、光を上部より取り入れたかった。そこで、床を極力スケルトンとした。
光を取り入れる装置としての階段と廊下。
(梅原横丁の家)
トップライトからの光は、エクスパントメタルの床を通し、1階を含む通り庭全体を明るくする。
階段はキャンティレバー(片持ちだし)とし、一段一段独立した構造になっているので、その間からも光が通る。
また余談であるが、天井より下げた竹の棒が、悪天時の物干しスペースにもなる
(梅原横丁の家)
手摺をただ支えるものだけでなく、鉄棒のようにぶら下がったり、雲梯のように登ったり、洋服をかけたりと(笑)多用途に使えるものとした。遊びとしての空間。
(k-white邸 ファミリ-階段)
白いドアの向こうにある裏庭まで続く土間がある住宅。この白い漆喰壁にあいた黒い穴に吸い込まれるように上がる階段。色と明るさを変えることで、1階のパブリックに対し、ここから先はプライベートになるので、家主がこれ以上進むことを拒んでいるという意思表示でもある。
(千人町の家)
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