住みこみ*著書:『住みこみ』(2007年/ラトルズ刊) 戸田家の一年を写真とエッセイで綴った本のタイトルです。

人の暮らしは時間と共に変化します。それを調整しつつ自在に手を入れられる、ゆるやかな設計を心がけています。

日常・旅

2015-11-24 21:11:20 | 建築設計

(スタディ-模型と日常を旅する本)

独り言

いろいろ挫折を味わった20代、一年間働いて貯蓄した100万円を使いヨーロッパにバックパッカーに出た。為替のレートが1ドル240円頃であったので、潤沢とは言えない金額でしたが、贅沢はしないで自炊しながらであったので、4か月間いろいろな国を廻ることができました。一人での旅、ましてや外国も行ったことがなかった自分にとって見るもの出会うもの触れるものすべてが驚きの連続でした。海外の見知らぬところに行き、少しでも長く滞在し、時に逆境に遭遇ながら「どうする自分?」とそこはどこかで楽しみながら廻るのが「旅」だと思っていた。

30代はタイ・インド・ネパールとバックパッカー、同じアジアの国々。いろいろとエピソードはあったがその話はまたの機会として、「旅」の場所としてやはり海外を選んだ

今度は数週間、東日本テントの旅。国内でありながら、国内外問わず出会うバックパッカー、海外と違いのない事に気付く。

一生の内の数年間のみのサラリーマン時代と、数度の旅を経て、33歳自営の道を歩むことになる。バブルがはじけて世の中不況へと景気も下降線をたどる中での船出となる。何一つ仕事のあてがあったわけでは無かったので、仕事はもうそれこそ手探り状態。諸手続きやら、打ち合わせやら、仕事の進め方など、サラリーマンとして仕事してきたはずなのに、全て一から行おうとすると勝手が違う。会ったことのない施主に合う事も、行ったことがない土地を見ることも、考えてもみない要望が出てきたりすることも…未知で思いがけないものとの出会いの連続。

この感覚は懐かしいな~?何だろうと思っていたある日、ふと「旅」に似ている事に気付く。

まえがきは長くなりましたが、先日、「最小限住居」と名づけられた増沢邸のリメイク住宅「スミレアオイハウス」で、この住宅の住人でもある萩原百合さんの編集した「日常を旅する」の出版記念パーティーが開かれました。それぞれが持ち寄った料理やお酒を頂きながら、これまで百合さんが手がけてこられた書籍をはじめ、今回刊行した「日常を旅する」の取材や編集のエピソードの話題に花が咲いた

萩原百合さんのあとがきで

「身近な街であればあるほど、その土地のよさに気づいていない-中略-自身の感覚をたよりに歩いていると、これまで見えなかった街の側面が現れ、新鮮な驚きや出会いにつながります…」

先日、私の住んでいる八王子で、「ハニーズガーデン」という催しがあった。ハロウィーンの日に近い日曜日に開催しその八王子南口商店街一帯でパフォーマンスやおのおの仮装を楽しむ企画である。楽しい~八王子に移り住んできた友人は「八王子らしさ」を感じるイベントとしてとらえてましたが、私は楽しいのですがその「らしさ?」って言われても答えが出なかった。その友人曰く「ネ-ティブ八王子(八王子の地元民)にはわかんないと思う~」とも…身近過ぎて“よさ”“らしさ”が見えないのかもしれないな~と感じたエピソード

話はそれましたが、「旅」はどこか行くのではなく、自分の感覚がどれだけ自由になれるかだと思う…それはヨーロッパでもアジアでも日本の何処かでもなく、日常生活の延長線上にある。いや仕事を含む日常そのものが旅なのかもしれない。本の内容とは直接関係ないかもしれませんが、勝手に思いが膨らみました。「日常を旅する」いい言葉だな~ ありがとう。

「日常を旅する」株式会社けやき出版刊 編集・執筆/萩原百合 企画/萩原修 

 

(「スミレアオイハウス」で出版記念パーティ-の様子)


ゲンチョウワンダーランド

2015-11-12 01:35:55 | 建築設計

住まいの相談で現地に行くことがよくあります。リノベーションの場合の現地とは、すなわち「住まい」という事になりますが、実際の建物の状況を知る事はもちろん、どのような暮らし方をしているしているかを知る為にも、現地調査(ゲンチョウ)は欠かせない。ゲンチョウの時は、現在の状況を知るのが目的であるので、なるべく普段通りの様子を拝見させてもらう。飾っても装ってもない状況-だからこそ見えるもの。

調査しながらその暮らし方に魅せられる事がよくある。そんな時、建物の老朽化だったり、不具合だったりはしっかり調査しつつ、この世界観を活かす空間とは?とあれこれ考え始めたり妄想の世界に入る。住まい手のそれぞれの暮らしがあり、設計者はその暮らし方にインレーションを受け、その住まい手ならではのものを創ろうとする。当たり前のことではあるが、住まいは住まい手が居てこそなのだ。

ゲンチョウは創造の世界の入り口 ゲンチョウワンダーランド!

 


小上がり

2015-11-09 15:15:08 | 建築設計

世界の建築・インテリアを紹介しているウェブマガジンhomifyに「有楽の家」が紹介されております。

https://www.homify.jp/ideabooks/178384/

和室について日本の内外のデザイナーの作品についてのレポートです

今回のお話はその和室について

私の設計では小上がりの和室をよく作ります。

小上がりは一段高くなっているため、空間に変化が生まれます。床を高くした分、その床下を収納にする事もできる。障子やふすまといった建具を開放性のあるものを採用することにより、一つの大きな空間としても、仕切ることで個室のようにするなど、多目的に利用できる。また、小上がりの高さを調整することにより、椅子に座るかのように気軽に腰かける事が出来るし、その使い勝手から和洋ともに相性が良い

その「小上がり」について、当事務所の施工例を基にお話します。

 

(画像をクリックすると大きくなります)

今回、Homifyで紹介されたこの家は、居間の中に現れた水色の壁紙にラッピングされた箱の様なたたずまいの内部が3畳大の小上がりの和室になっております。建具は施主が以前のお宅で使っておりました雪見障子。8枚折戸の為、開放性を確保できました。この建具(支給品)は他の部分との調和と、細かな寸法と歪み(使用されたものはその使用状況の良し悪しにかかわらず多少の歪みや変形がある)に注意を払い使用に至りました。

折戸と引き戸を閉めますと、内部は土塗り壁の純和風な空間になります。和室を居間から向かって左側の金色の蜂を模った障子紙部分は仏壇置場になります。普段はすっきりと静かな場所に設置するため、柱ごと移動出来る壁?障子?にしました。(写真右側は襖を開けた状態)

小上がりスペース全体に言えることかもしれませんが、その使い勝手と空間の利用状況から、限られたスペースでの設置が多いので、収納方法を一工夫しなくてはなりません

「有楽の家」

TVや雑誌でご活躍のガ-デンデザイナ-の吉谷桂子さんのお宅は、2畳半+(堀)机のスペースの、洋風空間の中にある小上がりの畳スペース。二枚のふすま紙の素材は英国Farrow&Ball社製の壁紙で、その引き戸は2枚とも脇に引き込めるので、部屋全体を一体的に使用できます。このお宅は部屋の中は靴での生活をされてますので、生活の合間に腰かける長椅子のようにも使用されています。日本では「縁側」といったところでしょうか?庭に向かって言葉は適切ではないかもしれませんが、「掘りごたつ」の様な足を入れられる窪みと、それに合わせ横板を渡し、ちょうどテーブルと椅子の関係に近くし、庭を眺めながら書き物や作庭の構想を練るのにちょうど良い書斎スペースとなりました。また、畳に油圧ダンパーを内蔵し、床下収納にしています。

写真は以前、雑誌「ミセス」にご紹介いただいたもの。

「花と庭の家」

 

 

こちらはマンションのリフォームです。3畳大の和室です。写真の右側、の3枚引き戸の枠はあえて作らず、一本の面付柱(角に丸太の丸みがある)にして、壁からは離し、部屋の一体感を損なわないよう配慮した。引き戸を開けた状態では、あたかも床柱のようなたたずまいになります。ウイリアムモリスの花の壁紙を背景に面付柱がすっ-と立つ

こちらも床下収納になります。

「南大沢・南風の家」

 こちらは主に客間として使われておりますが、3畳大の和室+ベットルームです。小上がりは腰掛けた状態から、畳スペースへの移動は比較的楽です。このお宅でではないですが、私の高齢の母親の行動を見ていると、立った状態から和室に腰を下ろす(しゃがむ感じな)のが辛そうで、ゆっくりと、しかも何かに掴まらないと不安定な状態です。枠に手を置き、いったん小上がり腰かけくるりと回転し、畳に座るのは多少楽そうに見えます。このお宅では高齢者もいることから、手摺を加え、ステップを一段付加し、立ったままでも和室に入れるように配慮しました。小上がりに座ることを考えると高さはどうしても350~400㎜前後になり、一段での上り下りはきついからです。余談ですが、ベットルーム廻りの腰壁の境に三方手摺を設け、起床就寝時に配慮しました。

小上がりの和室、そもそも畳が必要か?という話になるかもしれませんが、座ったり寝転んだり、おむつ替えに使ったり、また寝室代わりにしたりと、たとえ3畳大、いや3畳大畳が使い勝手がとてもよいと思い、積極的に畳の導入をおすすめしています。

「K-white邸」


インテリア計画

2015-11-07 16:38:57 | 建築設計

 

事務所ビルの竣工に向け、絶賛工事中。

建設中のビル全体のインテリア計画をしました。今回私が関わらせてもらったのが、ほとんど間取り決まっていた後でしたので、一部の内外装設計と外構設計の他、ほとんどがカラー計画でした。という訳で営業開始期日が決まっており、限られた時間の中での設計になりましたが、みなさん一致団結し、完成が見えてきました!

もうひと踏ん張りです。

 


「衣」「食」「住」と

2015-11-03 01:11:23 | 建築設計

住環境を「衣」「食」「住」そして「緑」「美」の五つの観点から、それぞれジャンルで著名な人達による暮らしの提案

その中で吉谷桂子さんは「緑」のジャンルで住空間とガーデニングの関係をひも解いてます。

庭を単に植栽スペースとし他だけではなく、アートの世界まで昇華している点はさすがにアーチストですね。

 

2003年設計開始し2005年に竣工した吉谷邸、その後の住み込んだ様子が紹介されるのは、設計した者としてもうれしい限りです。

この表紙の画像も吉谷桂子邸です。

おしゃれ-西村玲子、住まい-門倉多仁亜、ガーデニング-吉谷桂子、美容-吉川千明、食事-李映林(初刊2013年11月/エクスエナジ-)

参考 「花と庭の家」(戸田晃建築設計事務所のHP)