住みこみ*著書:『住みこみ』(2007年/ラトルズ刊) 戸田家の一年を写真とエッセイで綴った本のタイトルです。

人の暮らしは時間と共に変化します。それを調整しつつ自在に手を入れられる、ゆるやかな設計を心がけています。

景色

2009-10-31 22:43:30 | 建築


昔住んでいた家の天井の杉板の、片隅にひとつ足跡があった。そして、その板は微妙にずれている。子供の時はそれがとても怖かった。

わゎ~~誰かが、天井裏から出入りしている。しかも、天地さかさまに歩いている!いくらクレバーな私でも(ウソ!)、その頃はそうとしか思えなかったのだ!

今思えばなんて事ない。しっかりギザギザのついたいかにも”足跡”は、現場で使用する安全靴か何かの足跡で、その足跡のついたまま施工しちゃったんじゃあないかと容易に想像できる。

話は違うが、先日竣工したお宅で、その引渡し何日か前、大工の岡部さんとその現場を味わう最後のチャンスとばかりに、仕事が終わった夜にいろいろ雑談していた時の事。バルコニーからふと室内を見ると、暗い照明とそれに映し出されたリビング収納のモンキーポットの木目が、月夜に照らし出された海の風景だった。

「ちょっと波だっているな~。台風が近いせいかな~?」そう、台風が近づいている頃だったのです。。

住宅は、設計者やつくり手が全く想像しないところで、お気に入りの場所や、怖い場所、はたまた物語が生まれるものである気がする。
もちろん、”天井に足跡”はとんでもない事であるが、家の記憶として今となっては何だかいとおしいとさえ思う。私のように、子供の時に味わっちゃったものだから、それが一種、原風景になっていた事に、その風景?を見て気が付いた。

このお宅も、住み手にとってこれからどんな風景や場所、そして物語が生まれるんでしょうね~

明日、「南大沢・南風の家」オープンハウス。みなさまお待ちしております。

=戸田晃建築設計事務所=

”現場”から”住まい”へ

2009-10-27 17:09:08 | 建築
(南大沢・南風の家-引渡しとそのまま竣工写真撮り)

10月26日(月) 重陽
10月23日から24節気 霜降(そうこう)霜が降り始めるころ。日増しに気温は下がり、紅葉は里へ降りる。
72候 第52候 霜始降(しもはじめてふる) 初霜が降り始めるころ。

重陽(ちょうよう):五節句の一つで、旧暦9月9日(今年は10月26日)のこと。旧暦では菊が咲く季節であることから菊の節句とも呼ばれる。陰陽思想では奇数は陽の数であり、陽数の極である9が重なる日であることから「重陽」と呼ばれる。奇数の重なる月日は陽の気が強すぎるため不吉とされ、それを払う行事として節句が行なわれていたが、九は一桁の数のうち最大の「陽」であり、特に負担の大きい節句と考えられていた。後、陽の重なりを吉祥とする考えに転じ、祝い事となったものである

昔は不吉で、後に祝い事とは面白い。。。平安時代に習って、先日、施主にいただいた梅酒に菊の花を浮かべて飲もっと! 

昨日は「南大沢・南風の家」の引渡し式でした。おめでとうございます。

引渡し式はそのものズバリ、現場が建設会社の管理下から施主に引き渡されるもの。あたりまえであるが、この日・この瞬間から我々は勝手に中に入れない。今まで我々が施主に向かい「ありがとう。また来てください」と言ってたのが今度は言われる立場に・・・あれほど通い、出来上がる事を夢見たお宅なのに、完成した途端にどうして入れなくなっちゃうんだぁ~(笑)

このくらいの思いがちょうどよい。終わってホッとする気持ちと、寂しい気持ちが入り混じるくらいがちょうどよい。

引渡しが無事終り、竣工写真撮影開始。

カメラマンはいつもお願いしている、古田陽子さん!? ええ~? 
そうです。[緑と共に暮らす家]オープンハウスで、お菓子担当のあの人です。そして昨日に続き、これも”編集”なんだって。。もちろんいわゆる編集の仕事もしている。新建築「住宅特集」の記事なんかも書いている。

古田さんの場合、妙に説得力がある。新しい編集のカタチ。かも。。。

そして、その撮影の場になぜかみんないる。手伝っちゃったりもしている。現場監督が照明を持ち、施主がものをどかし、設計者が扉を開け閉めしたり・・・それはまるでそれぞれが”現場”から”住まい”に変わっちゃう前に、最後の”現場”を楽しみ、そして名残惜しんでいるようでもあった。



今回のお宅、新築なのにリフォーム とちょっと変わった経緯である事は何度かブログでお話をした。施主とお話をして、最初は中古のマンションを探していたが、不動産売買が低迷している昨今、想定していた金額で新築が購入できた事が大きな理由であったとの事。

このお宅に携わり、例えば上写真の、正面左側の壁紙をはがしたままのコンクリートや、



カバーをはずしたまま、壁紙の余ったものを挟み込んだスイッチ(施主が建築廃材から拾い出しはめていた)や



いつも開け閉めする居間の扉に、大好きなアンティークを使用する。

など。。。

”古い家をいじる”という事が何だかトレンドの様に思えるが、そうした価値観の人たちにも”新築”に手を入れる今回のケースは、選択肢のひとつになりうるように感じた。

この空間は、今後施主によってどのように育ってゆくでしょう?楽しみでなりません。

そしてHPでもお知らせしましたが、11月1日(日)施主のご好意により、この「南大沢・南風の家」のオープンハウスを開催する運びとなりました。詳しくは下記HPで


=戸田晃建築設計事務所=




お礼

2009-10-27 14:28:19 | 我家の歳時記
(中庭にある洞窟石を舞台?に、コの字型に囲う様にそれぞれお話をしてもらった。舞台に立つ人はびしょぬれで、さらに見るほうも座る位置によっては木々が視線をさえぎり、舞台に立つ人が見えなくなると言う特殊な状況ではあった。。)

10月25日、あいにくの雨ではありましたが、当事務所で開催されました[緑と共に暮らす家]のオープンハウスにたくさんの方がおいでくださり、ありがとうございました。

この日の様子や詳しい報告は、後日HP上でUPしますね。

(古田さんのデータより)

お茶は菩提樹の入ったハーブティーに、ケーキは豆腐ブラウニーに抹茶クリームとナッツがのったもの。[緑と共に暮らす家]にあわせ樹木系のメニュ-は、この日のお菓子担当、古田陽子さんのこころ使いによるもの。古田さんはテーマに沿ったメニューをあれこれ創作するのが得意。

古田さんいわく「これも”編集”なんです!!」
そうか、”編集”はまとめる事だけでなく、方向性を読みとって創り出す事何だとひとり勝手に納得する。。。

中庭と一体になった空間で、雨と草と土の香りと、お茶のほのかな香りが相まってなんだかすがすがしい一日でした。(あまりの人の多さに少々戸惑ってはいましたが・・・)


=戸田晃建築設計事務所=



繋がり

2009-10-21 00:29:20 | 展覧会


最近、人と人が”繋がっていく”事が増えていると実感する。違う人から同じ人を紹介してもらったり、全く違う場所で、同じ人にばったり会ったり・・・
それは広がっているといえば、必ずしもそうとも言えない気がする!広がっているようでコアな世界に入っていたりする。あるいは世界が限定されはじめているのかも・・・いずれにしても、無理して付き合う事が少なく、会うべきして会う といったら大げさかもしれないが、とにかく居心地がよい。歳を重ね、鼻が利くようになってきたとも言える。。こんな感じで仕事も、今まで以上に廻ってってくれれば幸せなんだが、、、あまりにも都合よすぎか??

『住みこみ』本のデザインを手がけてもらった、葉田いづみさんのHPを覗いていて、そんな事を思った。
http://www.ne.jp/asahi/mame/niwa/  
のhpより引用

沼津の雑貨店halの店主・後藤由紀子さんの『ワードローブと日用品』(マーブルトロン)が発売になりました。後藤さんとは、halで開催された『住みこみ』という本の出版記念展のとき以来のおつきあいで、いろんな場所で遭遇しては楽しくお話させて頂く関係です。(沼津に住んでいるとは全く思えない頻度で出会います)ものが本当に好きで好きで仕方ない、彼女の熱い思いが詰まった1冊。カバーのキルトスカートの写真が目印です。

という事で、9月9日のブログに続き、勝手にお知らせです。早くも二冊目の出版です。後藤さんやるぅ~
http://www.marbleweb.net/books/check.php?no=363 

そしてその本のデザインを担当したのが、葉田いづみさんです。先日お会いした時も、25日の[緑と共に暮らす家] に遊びに来るかも?といってました。是非、お越しくださいね。

=戸田晃建築設計事務所=

開放木

2009-10-20 00:48:05 | 

(10月10日、トマトの収穫です。)

それにしても今年はよく採れた。今年のトマトは最終。実はちょっとホッとしている。ホームページでも書いたが、畑は実家にある為、ひょうたんの時などは、母から毎日のように「ブラブラしちゃってるわよ!!!」コールが・・・そしてトマトの時は「赤くなっているわよ!!!」コールの荒しだった。

あとは紅芋紅芋!!早く収穫しなければ・・と妙なあせりを感じる。。。もっとも紅芋は地中にあるので、さすがに母の目にも触れないだろう~

トマト、ナス、ピーマンをはじめ、紅芋や唐辛子にざくろ・柿・ゆずと、今の時期、実家に行くとまあ~いろいろと採れる・・・


(アゲハの幼虫もすくすく育っています/虫の嫌いな人がいると思いますので、画像を小さくしてあります)

ところ変わって我家の庭。
今年はほとんど農薬を散布していない・・・残っていて欲しい昆虫まで死んでしまうからだ。
何をもって”益虫”といわれるかぼくにはよくわからないが、そもそもこの世の中に不必要な生き物はいないとすれば、農薬が食物連鎖のどこかの過程で入るという事は、全体にとっても何らかの影響が出るのではないかという、ごくごく単純な理由からだ。(なんと稚拙な文章だ~)

といっても、屋上テラスで育てているゆずの葉が、毎年のようにアゲハ蝶の幼虫に、それもすごい勢いで食い尽くされている様を見過ごすわけにはいかない。

そこで考えたのが「開放木」

食べてよい木を設定してそこに幼虫達を移住させ、その木だけはおくつろぎいただく。。。そして、その木に選ばれたのが写真の”犬山椒”である。その数20匹近く。その上、いつのまにかカマキリやらカタツムリやらも増えている。娘よ!家の外から捕まえてきて、勝手に移住させないでくれるかな~

「幼虫のみんな!この木の葉っぱだろうが、茎だろうが自由に召し上がれっ!!」

=戸田晃建築設計事務所=