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この本を古本で読みました。
思いのほかいい本でした、と言うと著者に失礼になるのでしょうが、本当にそう思いました。
田中澄江、串田孫一、小西政継、山野井泰史など13名の名文を1冊にした本ですが、著者の選択眼の良さと適格な解説によりいい本に仕上がっています。
この本が良かったので同じ著者の本を探しました。
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この本を見つけてワンクリック。このような時Amazonは有難いですね。
本が届いて目次を見ると第二章は「地獄谷からの生還 大山」。ピントきました。これは高見和成のことだと。
読んでみるとその通りでした。それを読んで、あの遭難事故のあと高見といろいろ話したことを思い出しました。その文章の中に次のような一節があります。
四時過ぎ、とてつもなく大きな滝に行く手をはばまれた(後で大山滝と判明)。
ザイルを下ろすまではしなかったが、途中が大きくオーバーハング(突き出し)し、優に四十メートル近くはあろう。滝の落ち口より名も知らぬ小さな一羽の小鳥の飛翔(ひしょう)。あの三日間で出会った唯一の生き物だった気がする。
地獄谷を下がるとき「青い鳥を見た」と聞きました。2月の谷で青い鳥?タカ長にはそれが何という鳥か分かりませんでした。
鳥の名前は分からなくても良いから、その経験を野鳥の会の機関誌に投稿してくれないか、と頼んだものです。でも、それは無理な相談でした。相手は名のある登山家、原稿料の裏付けもなく依頼できることではありません。
「あれは遭難じゃぁない、予定通り登山できなかっただけ。登山は予定通り出来るとは限らない」と言うようなことも言っていました。しかし、世の中は上よ下への大騒ぎ、そのようなことは口外できません。そのもやもやした気持ちをタカ長の前で吐露したのだと思います。このことは、本当は言ってはいけないことでしょうが、昔の山友だちの戯言として聞き流してください。もう時効が成立しているはずですから。
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高見からは署名いりの本をもらっています。この本にも大山での遭難のことが書かれています。
30年近く前にもらった本で、書かれていることはほとんど忘れています。これを機に、あらためて読みかえすのも良さそうです。
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高見和成は今も私たちの心に生きていて、「彼が言っていた『文化人もどき』の活動に専念していたら死なないで済んだのに」と女房殿と話すことがあります。
登山では、高見は「ヒマラヤ級」で、タカ長は「裏山級」ですから、山歩きに誘われたことは一度もありませんし、タカ長のほうからお願いしたこともありません。しかし、文化人もどきの活動では接点もあり、ささやかなお手伝いをしたこともあります。
高見が生きていたら裏山に来てもらって、コーヒータイムの世話をしてもらうのに。今なら裏山に来てくれて、美味しいチャイをご馳走してもらえる実感はあるのですが、鬼籍に入った人には依頼できません。それを思うと今でも残念です。
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山はいいなぁ、とあらためて思います。山を介在すればヒマラヤ級の人と裏山級の人が楽しい時間を共有できます。
そのようなことを考えると、失ったものの大きさも思い知らされるのですが、それはそれとしてあの頃のように悪口を言ってやろうかなぁ。
バカ、何をやっとるんじゃ!
そんなこと言ったら化けて出るななぁ。それならそれでいいけど。
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