すずめ休憩室

日々のこと、好きなこと、飼っていたペットのことなどなど・・・。
気の向くままにつづってみました。

海街diary1 蝉時雨のやむ頃

2008年02月20日 | 漫画・本
「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」 吉田秋生 小学館

彼氏と朝を迎えた佳乃の下にある知らせが届いた。それは幼い頃に母以外の女性と家を出た父が亡くなったというものだった。夜勤で葬儀に出られない姉・幸の代わりに、佳乃は妹・千佳と共に父が住んでいたという小さな町へと赴く。そこへ迎えに来たのは佳乃たちにとって異母妹にあたる「すず」という少女だった・・・
海の見える街・鎌倉を舞台に家族とはそして優しさとは何かと問いかけるストーリー


漫画好きさんの間では評価の高い吉田秋生さんの新シリーズ。
やっとこ読みました
一言でいうと「やられた」という感じ(笑)

吉田さんの描く作品は静と動のように正反対のイメージを持っていても「カルフォルニア物語」や「BANANA FISH」のようにアメリカ映画に通じそうなテイストが共通しているように思っていましたが、今回は乾いた大地に沁みこむ水のような作品ですね

冒頭「やられた」と言ったのは、個人的な話になりますが実は私も似たような家庭境遇を経て来てて、実際に異父弟妹もいたりするから・・・
登場人物である3姉妹にとっても感情移入をしてしまった訳なのです

早くに母を失い、そしてまた父を失い他人の中で暮らしていたすずを引き取り、3姉妹から、4姉妹となった香田家の姉妹ですが、それぞれのキャラから発せられるセリフが胸を打ちます・・・

「大人のするべきことを子供に肩代わりさせてはいけないと思います。
 子供であることを奪われた子供ほど悲しいものはありません」

「死んでいく人とと向き合うのはとてもエネルギーのいることなの。
 許容量が少ないからってそれを責めるのは酷なことなのよ」

ちょこっとね、昔を思い出しました。
理性と感情という違いもあるけど、理解をすることと、受け入れたり、許すということは別なんだよね。
そして後者の方がより難しい・・・


私にはまだ見ぬ弟妹と対面する日が来るかどうかは判らないけど、もしそのことで葛藤する日が来たら、この漫画を思い出そうと思いました。

それにしても・・・すずちゃん、いじらしすぎ

「裕也ほんとにみんなに会いたいのかなって。
 あたしたちに会うの ほんとはまだつらいんじゃないかなって思ったから・・・」

苦労しているから人の心の機微がとっても判って・・・いや、しっかりし過ぎている位に他人の気持ちが判りすぎるトコロに彼女が乗り越えてきた背景が見えてね、目頭がジーンとね
今までの切ない話とはちょっと違い、このゆったりと穏やかに流れる雰囲気に吉田秋生さんの新境地をみた気分です

1と銘打っているって事はこのシリーズで2巻以降も出るって事なんでしょうけど、とっても気になる作品ですね

出来ることならあの4姉妹に幸多かれと祈りたいわ(漫画だけと・笑)


「深夜食堂」 他

2008年02月07日 | 漫画・本
「深夜食堂」 安倍夜郎 小学館

営業時間は深夜12時から翌朝7時まで。店の店主は顔に古傷のあるちょいと厳しい中年男。店に掲げるメニューも豚汁定食と、ビール、酒、焼酎のみ。あとは好きなものを言ってみて、店主が作れれば、出て来るという感じ。こんな店に人が来るのかと思いきや、結構色んな人が来る。そしてその食べ物にまつわる色んなドラマも・・・・

4コマ漫画に出てくるようなデフォルメされたキャラと誰もが一度は食べたことのある料理が相まっていい味を出している作品ですね。取り上げている料理もタコさんに切った赤いウインナー炒めだったり、一晩置いた昨日のカレーだったり・・・なんか昭和の頃の懐かしい雰囲気が立ち込める庶民食堂という感じで。
一見、強面の店主がリクエストされた料理を差し出ながら、訪れる客を温かい目で見ている感じがしてととてもいいです。

食べ物漫画って多いんでしょうか?
一時はグルメ漫画が一世を風靡しましたが、B級というか、ありふれた食べ物を題材にした漫画って多くなりましたよね。


「深夜食堂」が訪れる客たちを見つめる店主からの目線だとすると、完全に客側からの目線なのが、
 「孤独のグルメ」谷口ジロー

こちらも一話完結式なんですが、毎回、腹を空かせた主人公の男が目に入った店屋に入り、頼んだ料理を「ウマいウマい」と食べるというもの。
ただひたすらに「食べる」事、そしてちょっと主人公の呟きがハードボイルドぽいところが、男性ウケしそうな作品です

出てくるお店が殆ど何故か東京近郊なので、お近くこの人だったら、実在する店なのか気になってしまうのでは??それにしても食べる量を考えると、何故太らないか不思議ですけど(笑)


一方女性向けなのがこちら
  「月夜見亭の主人」青柳たくみ

食べることをおなざりにしていた美大生・若水(おちみず)は或る日、古い民家を改造したカフェ「月夜見亭」の主人に呼び止められて、親子丼を食べさせてもらう。きちんとした食には「美味しさ」という幸せがあるという事を再認識した若水はここ月夜見亭に通うこととなり・・・・

食べることを題材にした女性向きの漫画といえば、よしながふみさんの作品の数々を思い浮かべますが、一瞬、二番煎じか?!と思ったけど、読んでみたらちょっと違いましたね~

よしながさんのは身近にある食材でも美味しいモノは作れ、それが人にどれだけの幸せをもたらすかみたいなモノにコンセプトをおいているとしたら、こちら「月夜見亭」はお料理そのものにスポットをあて、日々何の気なしに食べられている料理に手間とどれほどの思いが込められているかという事を表現しているというか。

月夜見亭のマスターが長髪なのが少々ナンだけど(基本的に男性料理人の髪が長いのは好きではないの)季節ごとに作られる主役の料理の美味しそうな絵もさることながら、人が作り上げる料理というものの大切さ、手作りならではの穏やかで優しい空気みたいなものが伝わってきます。
一話ごとに題材となった料理のレシピが載っているのも嬉しい。
が、意外と作るのが面倒くさそうだ(爆)

やっぱり食べることって幸せの何者でもないのね

でもどうせなら誰かが愛情をこめて作ってくれるお料理が良いわ~なんて思ってしまった3作品でした



JIN-仁 10巻

2008年02月02日 | 漫画・本
1/4に出た「JIN-仁」10巻です。
読んでたけど、感想を書くのが遅くなってしまった・・・

あらすじはこちらを読んで戴くことにして、まずは10巻の感想

今回は江戸時代から今に続く庶民の娯楽「歌舞伎」と「相撲」という2つの伝統芸に携わる人に関わる一種の職業病を取り上げています

ますば「歌舞伎」
今回は血筋がものを言う歌舞伎の世界で、下積みから名を上げながら、鉛中毒となった名優を南方が診るというお話

歌舞伎役者には欠かすことの出来ない「おしろい」ですが、実は昭和の初めまでこのおしろいには鉛が使われていたんですよね。
それ以前は鉛ではなく、水銀も使われていたそうで、「天上の虹」でも讚良が水銀の入ったおしろいを塗り、水銀そのものを長寿の妙薬として飲むというシーンがありましたが、ご存知の通り、水銀、鉛などの重金属は毒性が強い・・・江戸時代などで高貴な女性である正室の寿命が短かったり、嫡出子が少なく、側室などが多かったのもこういうおしろいによる「鉛」中毒が多かったからなのかなとも思ったり・・・
古代ローマの皇帝に狂人的行動をした人が多いのや生まれてくる子供の数が少なかったのも、一説にはこの「鉛中毒」という説もあるようですよ

実際、鉛中毒のため、手足が動かなくなった役者さんって居るそうで、名優と名を残している方たちもかなり体に負担を強いての伝統芸なんだなと思いましたね

南方の現代の知識があっても、どうすることも出来ない病もありますが、言葉に出さなくても伝わること、伝えられることってあるんだなーと感じた一話でした。


そしてもう一つの「相撲」
スポーツ肘(関節ねずみ)に悩む力士の話。
こちらは外科医の南方の本領発揮のお話です
スポーツというのもは倒すべき、ライバルがいてこそ、見ている方も盛り上がるものですが、その競技の頂点を極めるものにはやはり試合の場を離れていも、礼節をわきまえ、正々堂々としてしてほしいもの。
昨今も勝つことにとらわれすぎて、それを見失っている人もいますが、ファンはその辺りって見逃さないのですよね

ライバルというものはそういう時に自分が進むべき道を指し示してくれる存在でもある訳で、今もなお、年寄名跡として名を残す「不知火」「陣幕」両力士に思いを馳せた一話でした

芸事、スポーツって一見、華やかだけど、舞台裏ではその役者や選手たちの努力とともにスポーツ医師と言われるドクターたちの努力と苦労もある訳で、その方たちのご苦労もうかがい知れたお話でした

それはそうと・・・・咲さん、いいですよね

将来、南方とくっついてくれないかなーと密かに思っているんですが・・・両人ともに意識していない訳じゃないと思うで、可能性はないとは言えないと思うんだけど・・・(笑)

それにしても、「RON」といい、「メロドラマ」といい、村上さんの書く女性って良いオンナが多いな
作者さんの理想が反映されているのかしら??



片恋の日記少女

2008年01月14日 | 漫画・本
「片恋の日記少女」 中村明日美子 白泉社

高野たかしは教員を目指していたが、去年は脆くも破れる。名門私立学園の物理教師であった父が亡くなり受験どころではなかったのだ。今年こそと思い書斎で書物を探しているときにある1冊に日記をみつける。それは亡き父が恋の告白を綴った日記だった。しかもその想いの相手は父の勤める学園の生徒らしい。たかしは父が乗っていた通勤電車に乗り彼女を探してみることに・・・


表題作の他に色んな出会いや恋を書いた7編の短編を収録したコミックスですが、いや~漫画にラブモノは求めない私が久々に良かったな~と思えたテイスト。
この作者さん、初めて読みましたが、なんか興味出てきました

私的には今回、巻頭に載っていた「父と息子とブリ大根」という作品が好き

満くんという男の子が都会に出て1人暮らしを機に本来自分がなりたかった女の子へと姿を変え、男性の恋人も出来て幸せに暮らしていた或る日帰宅するとアパートに田舎からカタブツ親父が出てきていた!!とっさに自分は満の恋人だと名乗ってしまうという話なんですが、お父さんがね、いいのよ!!全て判っていて騙されていてあげているの

子供ってどうしても親に素直になれないところがあるけど、父親のそれを上回る器の大きいところや、第三者である恋人の大人っぷりが、後からじわじわと温かい気持ちとなってやってくる。
どの話も大小はあれども、それがまたさざ波の様にやってくる。

まぁ根底には相手を思う慈しみというものがあるからだと思うけど、言葉も大切だけど、恋ってのは言葉には出していなくても相手が発しているものをどれだけ受け止めれるかというのも大切なんだよね。
まだまだ未熟ですわ、私


-探しても見つけ難いのに、 
    恋とは突然訪れるのです-


帯にそうかかれているこの漫画。
訪れたあと、どう育てるかも大切。

恋人がいる人も、そしていない人にもお奨めです


金魚屋古書店 6巻

2008年01月10日 | 漫画・本
「金魚屋古書店」 芳崎せいむ ~6巻 小学館

まさに
漫画好きによる、漫画好きの為の漫画

貴方のお探しの漫画はどれですか?
どんな漫画もここ「金魚屋」でなら見つかります

地下に巨大なダンジョンと呼ばれる漫画倉庫を持つ「金魚屋古書店」という名の古本屋を舞台にさまざまな漫画が作り出す人生のエピソードを主にした漫画です。
とかく古い過去作品や漫画を取り上げると、レビューになったり批評になりがちですが、これはただただこよなく漫画を愛している人たちが繰りなすストーリーとなっています。

ネットを始めた頃、この漫画の前身「金魚屋古書店出納長」の存在を知り、ネット通販もしたことが無かった私はその漫画を探して本屋をさすらいました。新刊がでて本屋に行ったものの、発売日を5日も過ぎても書店に入荷すらされていなかったという時期もあり・・・それが今や書店でも平積みまでされる存在となりました。・・・うっうっうれしい

ここにはさまざまに漫画が出てきますが、ウンチクもさることながら、自分が読んでいる漫画が出ているとすんごく嬉しいんだよね~
今回はまんだ林檎さんの「コンプレックス」が紹介されてました。
BLの中でもこれを取り上げるとは・・・さすが通です(爆)

そして見逃してはならないのがコマ横の注釈!!

ここにも色々コネタや漫画の紹介もあったりするのよね
(「あくまで執事ですから」って黒執事?持ってる!持ってる!!とか・笑)


さて今回の6巻は漫画好きにとっては他人事とは思えない事件が題材となってます。
それは地震による本棚からの漫画の崩落・・・はいはい、ウチも他人事ではありません。
本って結構重く、以前に雑誌や本を溜め込みアパートの床が抜けたというニュースが流れていましたが、アガサさんによると本棚ぴっちりだとその重さは200㌔くらいになるそうで、グランドピアノの重さが300~400㌔と考えるとかなりの重さですよね

たいていの漫画好きでは本箱1つという事はまずなく、ウチなんかは2階の自室に本棚はもちろんのこと、押入れ、ベットの下、カラーボックスと想像すると怖いくらいの漫画があります

築30年のボロな我が家の床を考えると少し処分しなけれればなりません

うぅ・・・辛い(涙)

はるかなる光の国へ

2008年01月08日 | 漫画・本
「はるかなる光の国へ」 中山星香 秋田書店

はるかなる昔、アルトディアスの王・ロクリスは知恵を求めるあまり、封印されていた魔女を解き放ってしまう。それから100年後、西方の地、「玉ねぎ村」と呼ばれる土地である姉弟が暮らしていた。銀の乙女と言われるフライヤとその弟ローラントだった・・・。


1986年から連載が始まった中山さんのライフワークとも言える三剣物語の中の最大の長編「妖精国の騎士」が昨年無事に完結しました。実に20年以上のノンストップ連載ですよ、中山さんの情熱にただ感服するばかり。

その「妖精国」番外編がプリンセスGOLD誌2007年7+8号に掲載されていたのですが、日ごろ懇意にさせて戴いているすずさんのブログを読んでびっくり!!
以下すずさんのブログ記事よりのコピペ

>こちらもようやく「玉ねぎ村」までたどり着きました♪魔法使いの長・七代目のアーサー・ロビンの生まれた村、三剣物語りのエピソードが時空を超えて繋がる場所でもあります。
ローゼリィは光の剣を*黒髪の女の子に取られてしまいます。そして剣が手元に戻るまで、たまねぎ村でアーサーと幸せに暮らして子どもを生むのですよ。あ~、もう長年の読者には待ちに待った場面なんですが、感慨が大きくて泣けてきますねぇ。そしてこの村に”子どもとロビン”を置いて、二人は旅立って行くのです。

*「はるかなる光の国へ」アーサーと一緒に西に向かって旅をしているところに、未来から来たユング・アルダに光の剣を暫く貸すことになった。

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ええええ~!! 


「はるかなる光の国へ」はリアルで読んでいるけど全く記憶に無い・・・

つーことで、中山さんは殆ど網羅している漫画友に借りて読み返してみました。

この「はるかなる~」は1982年に掲載・・・今から25年も前に作られたお話なんですが、改めて読んでビックリ!!これがまー!!細部にわたり見事なまでに「妖精国の騎士ballad」とリンクしている。

当時の服装、掲載されているセリフ、剣の形・・・全く同じ。なおかつ「はるかなる~」ではアルダからの目線、「妖精国」ではローゼリィからの目線で書いているという細部にわたる細やかな気配り。
「はるかなる~」自体の作品の出来は中山さんご自身は「未熟で敗北した作品」と評しておられますが、「はるかなる~」のローラントがローゼリィとアーサーの息子(ローラント)の子孫であるという伏線を含め、こうやって読むとすごいなぁと。後から見てのこじつけで書いたのではなく、しっかりした構成は根底にありのに対し、表現力がご自身が納得できるものでなかっただけだと感じました

長らく連載をしていると途中でストーリーが変わったり、矛盾が出てきて、ファンや読者にツッコまれがちなんですが(苦笑)それが全く無い!!

wikiによると三剣物語のうち、作品化されているのはこの「妖精国の騎士」と「はるかなる光の国」の2つのみでまだ1部(三剣の創生)と4部(アルディアの炎)がまた作品化されていないとの事ですが、20年の時を経てもブレないプロットをお持ちの中山さんですから、きっと素晴らしい作品に仕上げてくれることでしょう

ってことで気長に待つこととします(笑)

親なるもの 断崖

2008年01月04日 | 漫画・本
 
「親なるもの 断崖」上下巻 曽根富美子 宙出版

昭和2年、北海道の室蘭にある遊郭に東北の寒村から16才の松恵を筆頭に4人の少女が売られてきた。飢えに苦しむ家族を救うため、自らの運命を受け入れやってきたのだが、身を売る生活に耐え切れず、初日で松恵は首を吊る。11才だった妹の梅は姉の墓を建てるため、女の地獄とも言える女郎の道へと進むのだった。遊郭で生きるしかなかった梅、武子、道子を待ち受ける運命とは・・・


ネットを始めて少しした頃、自分の地元を題材としているこの「親なるもの 断崖」という作品を知りました。検索すると北海道新聞のコラムでも取り上げられていたそうで、知るほどに「読みたい」という意識が強くなりました。ですが絶版・・・それがこの度文庫として復刊したので早速買っちゃいました

ここ舞台となっている地球岬は私も釣りに良く行くところ。太平洋にしては珍しく切り立った崖です。岬から眺める海は180度の水平線が広がります

ずーっと地元で過ごしてきましたが、室蘭に遊郭があったのはこの作品を知るまで知りませんでした。作中にも出てくるイタンキ浜にはタコ部屋労働の果て亡くなった人が埋められているというのは小学生の頃に教わりましたが、さすがに小学生にはその時代を影で支えていた「遊郭」のことは禁句だったらしい(苦笑)

曽根さんの漫画はお借りして数作読ませて戴きましたが、底辺で生きる女性、女であるが故の悲しみ苦しむ女性の姿を綺麗ごとを一切加えず、生々しいまでに書き上げる方だなぁと感じます。

遊郭を題材にした漫画は他にもありますが、ここまで掘り下げて底辺で生きる女たちを書いた作品があっただろうかとすら思う。親のため、家族のために売られた来たのに、まるで人として認められないような偏見と生活を強いられ、借金に縛られ死ぬまで逃れない女たち。
実際そういう生き方しか出来なかった女性も多かったんでしょう。

作中のお梅のように途中で身請けされる女性はまれで、道子のような最期をたどった女性も少なくなかったはず。仮に身請けされても一生「元・女郎」という偏見は付いて回ったのでしょうし・・・。

幕西遊郭の文書は殆ど残っていないそうですが、数年前に見つかった「精算帳」には1000円で家一軒立つ時代に娼妓1人平均の借金が963円、1カ月の稼ぎである「玉代(たまだい)」は11円から49円との記述があったそう。
そういう生活を強いられていた女性が江戸時代ではなく、昭和32年まで存在していたとはかなり衝撃でした

「自分が女郎でいることを当たり前だと思うな」
「自分が女郎でいることを疑問に持て」

その言葉に異常とも思える現状を不思議と思わない社会、現代にも通じそうな社会の中にある「麻痺」というものへの危惧が込められている感じすらします

賛否両論あるのかもしれませんが、目をそむけてはいけない1つの歴史を描いた傑作だと思いました。

真空融接

2007年12月10日 | 漫画・本
  
「真空融接」 びっけ エンターブレイン 全2巻


全寮制の学校で暮らすラエルとアレクシの国の人間には2種類のタイプがいる。
それはエネルギーを生み続け、誰かに抜いて貰わないと生きていけない供給者と、供給者からエネルギーを与えてもらわねば生きていけない補給者。しかも力の受け渡しは唇からでなくてはならない・・・。
ふたりはこの国でも珍しい同性同士の供給者と補給者という決められたパートナー同士。でも、恋人同士ではなく・・・。

ブックさんお薦めのびっけさんの作品です。
最初ビブロスから出たせいでしょうか、カテゴリー的にはBLになるんでしょうけど、読んでいて全くそんな感じはしませんね。
むしろファンタジーの部分が強いと思います。

口からのエネルギーの受け渡しという部分が腐女子をそそりますが(笑)、なんていうか、性別を超えた「大切な人を持つ人へのメッセージ」というか・・・。

夫婦でも友人でもまた家族でも共通すると思うのですが、「一生この人と生きていく」と決めた人がいても、たまーにはちょっと気持ちが揺らぐ時があるはず・・・「あ~なんで判ってくれないのかな」とか「どうして何にもいってくれないんだろう・・・」とか。

なんとなーくそんな時、ふっと脳裏を掠めそうな漫画です(笑)

性別を超え、恋愛感情を抜きにしても、大切な人、そして一生を共に生きる人がいるという事はどんなに素晴らしいことかと思い起こさせてくれるような感覚になりますね~


最初出版したいたビブロス出版は会社が倒産という憂き目に会いましたが、下巻の殆どを書き下ろし、上下巻としてエンターブレインから出版されたという事。
こうやつて再販されるという事は結構このびっけさんの柔らかな雰囲気をお好きな方がいるんでしょうね~
アレクシの両親の恋話など作者さんも書きたかったことをギュっと下巻に詰め込んだ感じがします。もしかしたらまだ書ききれなかったエピソードがあったのかも・・・

私的にはもっと続きが読みたかったというのが感想かな。

エンターブレイン社に移ってから、新しい連載もされているようで、びっけさんのこの柔らかく温かい雰囲気がどの様に新作に表されているか楽しみです。
出たらまた貸してね(笑)


エメラルドの海賊

2007年12月04日 | 漫画・本
「エメラルドの海賊」 木原としえ 集英社

ロウィーナは船遊びに出かけた時に嵐に会い、荒れ狂う波間に落ちてしまう。
絶体絶命と思ったとき、彼女を救ったのは黒髪にエメラルド色の瞳を持った青年・アスール。
仲間たちと海賊行為を行っていたアスールだが、実はある小国の王子だった。父である国王には海賊をしている事は秘密にしていた為、側近らの考えでアスールは秘密を知るロウィーナと結婚式をあげる事になるのだが・・・


古本屋で2冊で100円で売られていました(笑)

初版(74年)ではなく、第9版(79年)だし、文庫も出ているので価値的なものは無いのでしょうけど、未読だったこともあり、なんとなく買っちゃいました(笑)

私が始めて木原作品を読んだのは「アンジェリク」だったのだけど、これはそれよりも以前に書かれているものなんですね~

それにしてもこの頃の少女漫画ってなんで今読んでも面白いんでしょう?

王子様との突然の出会い、父母の仇、異母兄弟の確執・・・ドラマチックがてんこ盛(笑)

そして最後がハッピーエンドなのも少女の夢がぎゅっと濃縮されている感じ
木原さんの漫画って見目麗しい男性が登場するのに対しに、主人公はごく普通の女の子、いやともすればチンクシャな女の子(あるいは幼い少年)だったりすることが多いのだけど、普通の女の子である読者が自分を重ね合わせて読めるというのがいいのかもね~

作中で繰り広がれているラブロマンスに少女たちが自分に重ねて夢がみれるというか・・・
いやいい大人な私でも十分に楽しめてますけどね(笑)

それにしても木原さんって「フィリップ」という名前に思い入れがあるのかしらね~??
長髪の容姿端麗な姿といい、役回りと言い、なんかよくこの名前を見る感じがするのだけど・・・気のせい??(笑)



捜索者

2007年11月14日 | 漫画・本
「捜索者」 谷口ジロー 小学館 ビッグコミックススペシャル
 


南アルプスの山小屋の主・志賀の元に1本の電話が入った。それは今は亡き親友の妻からのもので一人娘・恵美が失踪したというものだった。都会の雑踏に消えた15歳の少女を追って、志賀は南アルプスの山から降りる。そして今度はビルが乱立する都会という名の山へ恵美を探しての単独行が始まるのだった・・・。

以前、なごいくさんから谷口ジローさんが作画を担当された「神々の山嶺」という漫画をお借りして読んだのですが、それからがぜん谷口さんが書く山漫画に興味が沸いてしまい、買ってしまったのがこちら。

谷口さんの作品ってなんていうんでしょ、一歩間違えは「死」へと繋がるかもしれない「山」というものに人生というものを表現しているような書き方をされるんですよね~
何作か読ませていただいてますが、この方、ほんと「人間」を書くのが上手い。なんともいえない魅力と迫力があるんです。

この作品は「神々の山嶺」とは違い、谷口さんオリジナルという事、またストーリーも純粋な山登り漫画とはちょっと違うんですが、読んでいると人生という大きな山の中でルートを見失い、さまざまな信号を送り助けを求めている若者の姿が見えてきます。
今の世の中、色んな誘惑や犯罪があり、それらの中から子供達に対して指針を示したり、危険より守ったりするというのがとても大変になってきていますが、たぶん山での救助を求める遭難者を見つけに行く事と、それらはとても似ているようにも感じるのです。

そして読み進める内に実直な男、志賀に「こんな人が身近にいてくれたら・・・」と思ってしまう大人も子供も多いんじゃないかな・・・そんな風にも思えるんですね。

ラスト・・・監禁されていた恵美を救い出すべく、ビルという名の垂直な崖を己の腕だけで登攀していく無謀だとも思えるシーン、ハラハラはするんですが、山漫画を書きなれている谷口さんの画力が光ります

あぁこの人は山は登ったことがなくても山とそして人間を愛しているに違いない・・・そんな風に感じさせてくれる1冊です




とりぱん 4巻

2007年11月09日 | 漫画・本
出ましたね~待望の「とりぱん」4巻。
相変わらず、ゆるくて、ニヤっとしてしまう笑いがあっていい。
やっばりつぐみんは貧乏性だし、相変わらずヒヨ(鳥)は乱暴だし、しかも科学戦隊みたいな鳥も出てくるし・・・
そして何と言っても表紙は私の大好きな「スズメ」だし(笑)

でもいつも心にじんわりと来るのは作者のつぶやくような1節なんだよね~


4巻より抜粋

 今 特に
 欲しい物はない

 「好きなことだけをして
 のらくら暮らす」
 という望みが叶ったし

 たいていのものは
 なくてもなんとか
 なるみたいだし

 だから もう

 いい子になろうと
 しなくていいのだ

 サンタが頭上を
 素通りしても

 平然たる者に
 幸あれ


なんか、人って誰しも自分で意識しなくても「良い子(人)」でいようとするところがある。
それが、親に対してだったり、先生に対してだったり、上司に対してだったり、恋人に対してだったり、姑に対してだったり・・・
それはけして悪いことでは無いのだけど、それが知らず知らずに自分に無理を強いている場合もあったりする。


ありのままでいるという事はなんて難しいことだろう・・・


なんだか「平然」という言葉に込められた想いに感慨深くなったしまった4巻でした。
やっぱり秋だからかしらね??

イキガミ

2007年10月11日 | 漫画・本
   
「イキガミ」 間瀬元朗 小学館 1~4巻(以下続刊)

「生きることの大切さ」を認識させるため、全ての国民に小学校入学時「国繁予防接種」が義務付けられた。だが、その予防接種の注射器の中には命を奪うナノカプセルが混入され、それにより1000人中1人の若者が、18歳から24歳までの、あらかじめ設定された日時に命を奪われることとなっていた。
しかもその運命を知らせる死亡予告通知書(イキガミ)が彼らの元に届くのは、死のわずか24時間前・・・今まで健康で何事も無く生きてた若者にある日突然届く1枚の非情なる宣告書
「明日の今頃は君は死ぬんだ」と告知された人々は残る24時間をいったいどう生きるのか?!


アヤネさんが教えてくれ、興味があったのでさっそく購入したところ、偶然にもその翌日にまちるださんも読んだと知ってなんか不思議な感覚。人を惹きつける漫画というのは何かあるんですね。

さて、国家繁栄の為に公的殺人が行われていくというストーリーのこの漫画。読んで、ふと思い出したのが星新一さんの「生活維持省」(「ボッコちゃん」所収)という、ショートショート。
あれもまた平和で秩序ある国民生活を維持するため、コンピューターが公平に選んだ人間を生活維持省という国家公務員が間引いていく(殺していく)話なんですが、あれは選ばれた人間が苦痛を感じないように知らされる間もなく、殺人が行われるのに対し、こちらは死までのタイムリミットが教えられ、その当人達が死と言う恐怖と向き合い迎える24時間と、薄々この体制は間違っていると認識しながらも、自らの命を守るためにはその思いを表に出してはならないと葛藤し続ける「逝き紙」配達人である主人公の心の揺れが一層のドラマを生み出しています。

自分の命があと24時間だと宣告されたら、人はどう生きるか・・・
そして人は何の為に「生きる」のか・・・

そんなことを問いかけしている様に思えてなりません。
まちるださんと同じく、私も誰しも「自分が生きた証」を残したいと思うのではないかとチラリと思ったり。
それがとんでもなく立派なことじゃなくても、そして形に残らないものでも誰かの記憶の片隅に残っていたい、そんな風にも思うけど、日々をぼーっと生きている自分にはそれはそれで難しいのかなとも思ったり
まぁ私ならヘタレなので、オロオロしている間にタイムリミットを迎えそうな気がしますが(苦笑)

ちなみに星さんの「生活維持省」でのラストはその公的殺人を行っていた役人本人がコンピューターに選ばれ、その国を揚げてのシステムになんら疑問すら思わず「争いの無い時代に、こんなにも生きられて良かったな」という言葉を残し終わっています。
読んでいる側はその言葉に疑問すら持たない憐憫さと洗脳される事の恐怖を感じる終り方となっていますが、はたしてこの「イキガミ」はどのようなラストを迎えるんでしょう??

いつの時代も「国民全てが公平に責務を負う」となってても、必ず例外はいるんですよね(例えば国の中枢にいる方とか、要人とか)また暗部に気づく登場人物も出てくることでしょう。そしていつの世にも必ず「間違い」に気づく人もいるはず。
4巻ではようやくこの「国繁法」に異議を唱える人が出てきましたが、そういう部分が今後どのような形となって出てくるのか、そして「逝き紙」を配達し続ける主人公の心の葛藤がどのような形になって表に現れるか、これからの構成によって「ありがち」になるか「傑作」になるか分かれ目のような気もします。今後の続刊に注目です

そして最新刊の帯を見たところ2008年秋に映画化がされるとの事。
どういう話を持ってくるのか、そして現行ではまだ連載中のこの話をどうまとめるのかも楽しみですね


青池保子コレクション

2007年10月03日 | 漫画・本
復刊ドットコムというサイトがあるのはご存知でしょうか?
読みたくても読めない絶版本や重版予定のない本を出版社に掛け合って再出版してくれるサイトです。
もちろんどの本も出来る訳ではなく、ユーザーのリクエストが沢山あること、そして作者、出版社側の協力が必要となっているんですが、昔の漫画を読みたい場合とても頼りになるサイトです

この復刊ドットコムさんのお陰で昨年の1月から「青池保子コレクション」なるものが5冊刊行されました。今でこそ「エロイカより愛をこめて」など男性が主人公を数多く書かれていますが、昔は女の子が主人公の漫画を数多くかかれていたんです。

この「青池保子コレクション」は青池先生が1960~1970年代に書かれていた短編少女マンガを中心に復刊したもの。表紙は今の絵なんですが、中身をみたらきっと懐かしいと感じる人も多いのでは??

収録作品と発表年
『アクアマリン』
 「アクアマリン」    1976年
 「エピタフ-墓碑銘」 1975年

『ロマン組曲』
 「ロマン組曲」    1976年
 「フランソワの部屋」 1974年

『オールマンものがたり』
 オールマンものがたり「ドラキュラ館は大騒動!」 1975年
             「混戦!オールマン大学」  1976年
 「拝啓おやじ殿」   1974年
 「さよならジュリアン」 1972年
 「黄昏にかえれ」   1976年
 「ローラのほほえみ」 1964年

『ハムレットを殺せ!』
 「ハムレットを殺せ!」 1974年
 「ジェシカの秘密」   1975年
 「呪われた谷」     1975年
 「死の谷」        1965年
 「恋の不時着」     1974年
 「かあさんの休診日」  1974年

『水の中の赤い家』
 「水の中の赤い家」 1973年
 「呪いのスペードエース」 1974年
 「蝶になったモニカ」  1971年
 「吸血鬼」        1969年
 「竹の花がよぶ」    1971年
 「ミラ」          1965年
 「月まつり」       1965年

何百何千といる漫画家さんの中で全集や選集を出してもらえる漫画家さんはどれほどいるでしょう・・・まして40年近く前の初期の頃の作品が再出版される人ってそうそういないのでは?
これもひとえに青池さんが長年頑張ってこられた成果なんでしょうね~

「イブの息子たち」や「エロイカ」などから読み始めた人には物足りない作品もあるかもしれませんが、これが青池先生の原点かと思うと感慨深いです。
特に「オールマンものがたり」は後の「イブの息子たち」の源流ですからね。

元々同じ山口県下関出身の水野英子先生に憧れ、水野先生の元へ原稿を持っていったという青池先生。初期の作品をみると敬愛していた水野先生の影響が確かにかい間みえます。
懐かしい漫画をお探しの方、是非手にとって見てください


そして謎は残った

2007年09月26日 | 漫画・本
1924年まだ人類が未踏の地だった世界最高峰のエベレストの頂点を目指したマロリーとアーヴィンの2人の男達。彼らは頂上を目前としていた姿を仲間のオデールに目撃された後、忽然と姿を消した。
彼らは果たして世界最高峰の山を征服したのか?それとも・・・

山に登る理由を問われ「そこに山があるからだ」という有名な言葉を残した登山家ジョージ・マロリーの行方を75年ぶりに厳寒の地で探し出した米国調査隊の手記

「神々の山嶺」を読んで、物語の中軸にもなっていたマロリーのカメラとマロリーとアーヴィンの行方が気になり買ってみたのがこちら。
翻訳本独特の読みづらさに加え、活字嫌いの脳タリンな私の頭はシバシバ睡魔に襲われ、中々読み進められませんでしたが、ようやく完読・・・ふぅ長かった(苦笑)

表紙にも使われているこの写真、この打ち捨てられた壊れかけのデパートのマネキンみたいなのが実はマロリーその人なんですよ。8000メートルを超える高地では75年経っても人は土には還らないんですね・・・

でも私には一瞬、マロリーが魅入られたこのエベレストと言う山を自身の思いを込めて全身で抱きしめているようにも見えた。

実際にはこのポーズは滑落防止体勢(両手を開いて、全身の摩擦抵抗で滑落を止める体勢)と言うそうで、この姿でいるという事は類いまれな登山技術を持っていたマロリーですら、なんらかの原因で誤って滑落したという証拠でもあるんですが、発見時に捜索隊になんとも言えない厳粛さをもたらせたというのが判る気がします

少し離れたところで相棒のアーヴィンの遺体も見つかってはいるんですが、色んな状況証拠を照らし合わせても、2人が登頂を果たしたかどうかはやはり未だに不明みたい。

現在の登山家の間では今では考えられない軽装な衣服、そして鉄鋲の登山靴などの装備などを考えても「登頂は無理だった」と考える人が多いようですが、私は個人的には登頂を果たし、下山する途中にこの不幸に襲われたと信じたいな。

だって私たちが思う以上に昔の人は強靭だったと思うから・・・
自動車ですぐ目的地に着く現代と違い、一歩一歩自分の足で目的地まで歩くことが当たり前だった時代、現代人よりはるかに足腰は強くて、尚且つ高度順応とかも出来ていたとも思うから・・・。

厳寒のエベレストに登るとは思えない軽装だとも言われるけど、それでも同じ時代に南極だって踏破しているし・・・

謎は謎のままだけど、マロリーの魂と彼の愛する妻と家族の写真はエベレストの何処かに埋まっていると信じたい。

本の半分はこの謎に挑もうとした有志からなるマロリー捜索隊が結成され、その計画の実現化、そして現地に趣くまでの苦労などが書かれて読みづらいところもありますが、やはり「神々の山嶺」と合わせて読んでみると、谷口さんの漫画のシーンがありありとそのまま蘇る1冊です。
余裕があればチラ読みでも是非ご一緒にどうぞ。

佐賀のがばいばぁちゃん

2007年08月23日 | 漫画・本
 島田洋七 著 徳間文庫


広島で生まれた昭広は、父の記憶がほとんど無い。父は疎開先で家がある広島に原爆が落とされたと聞き、家の様子を見に行ったが故に放射能に汚染され、昭弘が生まれて間もなく原爆症で亡くなったのだ。その後は母が1人で働いて昭弘たち兄弟を育ててくれたが、幼かった昭弘は或る日佐賀の祖母の家へ預けられることとなる。
祖母は1人で7人もの子供を育てたツワモノ。
そこではその「がばい(佐渡の方言で「とても」「非情に」の意)凄いばぁちゃん」とのとんでもなく貧乏な生活が待っていた・・・

なごいくさんからお借りしました。
私たち年代ではB&Bの洋七さんと言った方が馴染みが深いかもしれない、島田洋七さんが幼い頃の自分と祖母との生活を綴った自叙伝

戦後の傷跡がまだ残る日本、みんな貧乏の生活なのでしょうが、ばぁちゃん「貧乏度」は更に凄い。「貧乏」というと「昭和枯れすすき」というような暗ーいイメージが付きまといますが、でもばぁちゃんの貧乏はメチャメチャ明るいのです

「お金がないと何にも出来ない」と思いがちな現代人の目のウロコを取ってくれるようなそんな本。

明るい貧乏もいいんですが、私が惹かれるのは、ばぁちゃんが昭弘(洋七さん)に言う数々の言葉。なごいくさんが金言、名言てんこ盛りとおっしゃってましたが、まさにその通りなのです

スポーツは万能だけど、勉強がイマイチな昭弘くんとの会話

以下転載
 「1と2ばかりでごめんね」とばぁちゃんに言うと
 「大丈夫、大丈夫。足したら5になる」と笑った。
 「通知表って足していいの?」と聞くと、今度は真顔で
 「人間は総合力」と言い切った

ね~なんか素敵でしょ?(笑)


またばぁちゃんと昭弘くんを見守る人達の優しさもいいのです
学校の先生、やって来るお豆腐屋さん、そしてクラスメート・・・
お金では買えない沢山の想いが詰め込まれています

例えば貧乏で祖母と2人きりの生活をしていた昭弘くんは、運動会の時、皆が家族とごちそうをついばむ中、1人で教室でお弁当を食べていたそうです。しかも勿論貧乏ですから弁当の中身は白いご飯と梅干と生姜のみ。
そんな時、ガラっと扉を開けた先生が
「いや~先生、お腹を壊してしまって。。。お前の弁当に梅干と生姜が入っているだろう?交換してくれないか?」というのです。交換した先生のお弁当には昭弘が滅多に食べることが出来ない卵焼きやエビフライ、ウィンナーと言ったご馳走がはいっていたそうな。
そんな事が次の年も次の年も続く・・・

毎年運動会時期にお腹を壊すなんて・・・と思った昭弘くんにばぁちゃんは言います。

「昭弘の為に弁当を持ってきたよと言えば、昭弘もばぁちゃんも気を使うだろう。それが本当の優しさだよ」と・・・

本当の優しさとは他人に気づかれずにすること

これがさりげなく出来る人ってどれくらい居るんでしょう
よく「○○してあげた」と他人に言う人が居ますが、その時点でその中には多少なり「人から優しい人だと思われたい」「人から感謝されたい」という意識があるのかもしれないよね・・・。

お金が無いという事は不幸な訳ではない事、人間は一人で生きているのではなく色んな人に守られている事・・・当たり前なのに現代人が忘れかけていた、そんな事を思い出せてくれる1冊です