「京たけのこ」ブランド強化へ、京都府が注力 生産農家は困惑も

2016-10-09 10:59:18 | 商 trading

 乙訓の名産、タケノコのブランド強化に、京都府が乗り出している。他の地域にはない独特の管理方法で育てられ、日本一と言われる西山地域のタケノコだが、それだけに生産や出荷、販売拡大が難しい。タケノコ農家が高齢化する中、成果を上げるには課題が多そうだ。

■府、首都圏へ出荷増にらむ

 7月下旬に開かれた「京たけのこ」ブランド推進プロジェクト京都乙訓会議。2市1町の農業担当の職員や農協の担当者を前に、府担当者がタケノコの消費拡大や加工品の商品開発、竹林の景観保全などの取り組みを提案した。

 会議を呼び掛けた府流通・ブランド戦略課は「ブランド力が高まれば、生産や出荷が増え、竹林の価値も高まり、景観保護にもつながる」と意気込む。

 特に力点を置くのが、首都圏への出荷推進だ。府の調査によると、東京の大田、築地両市場における昨年の京都府内産タケノコの単価は1キロ862円で、2009年に比べ約1・7倍に伸びた。ただ入荷量自体は、09年以降12~16トンとほぼ横ばいで推移。府は「京都らしい食材で人気があるにもかかわらず、需要にこたえられていない」(同課)とみて、市場規模が大きい首都圏への出荷を増やし、販売増につなげる狙いだ。

■過去5年の出荷実績、ほぼゼロ

 だが、首都圏への出荷には課題が多い。

 JA京都中央(長岡京市開田4丁目)は今春、十数年ぶりに東京に西山産のタケノコ300キロを出荷した。だが、見込んでいた価格の6割程度の値しか付かないものもあった。「シロコ」と呼ばれる最高級品の良し悪しが見分けられず、値打ちが認識されていないことが明らかになった。

 営農販売課の新谷雅敏課長は「いいタケノコを出荷する農家ほど名が通っており、独自に販路を持つなど買い手がすでに決まっている。京都の市場も出荷を期待している中、メリットがなければ農家もわざわざ東京に出荷する意欲がわかないのでは」と懸念する。

 特に府は、過去5年ほぼ出荷実績がゼロの京のブランド産品「京たけのこ」としての出荷を目指すが、農家は困惑を示す。

 向日市物集女町のタケノコ農家でつくる物集女出荷組合では以前、ブランド品として出荷したことがあったが、結局辞退する農家が相次いだという。

 柴田光貢組合長(74)=同町=は「他の作物と違って、タケノコは色や形、大きさ、重さがまちまちで、掘り出してみないと分からない。規格に合わせるのが難しく、荷が集まらなくなった」と打ち明ける。「農家の高齢化や兼業化で、以前ほどたくさん掘れず、しかも高品質のタケノコが作れなくなっている。むしろ品質が劣る品の販路拡大ができれば」と話す。

 府は、生産農家の生産実態調査や、首都圏での市場調査を行い、来年春に採れるタケノコから首都圏へブランド出荷を目指すが、農家から賛同を得られるかは未知数だ。「地元の人たちに呼び掛け、機運を盛り上げていきたい」(流通・ブランド戦略課)としている。

【 2016年10月05日 10時47分 】



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