京都・宇治で観光人力車走る 今春スタート、地元溶け込みにも汗

2018-08-09 14:41:12 | 商 trading

 観光人力車が今春から宇治市中心部を走り始めた。周遊観光を後押しする新たな手段として注目が集まる一方、安全面などで不安の声が出たこともある。運営する業者は観光案内だけでなく、地域に溶け込もうと汗をかく。

 7月18日の昼下がり、風情豊かな宇治川右岸を人力車が通った。車夫がガイドし、JR宇治駅近くを出発、興聖寺や宇治上神社などを巡り、平等院近くで降車する100分間のコースだ。東海地方から訪れた大学生の大須賀琴里さん(22)と会社員の山田明里さん(22)は「知らない場所に行けて、寺社や文化財のことを教えてもらえて良かった。日も当たらず、風が気持ち良かった」と楽しんだ。

 観光人力車を営むのは、嵐山で1992年に創業した「えびす屋」。京都市の東山山麓に加え、北海道小樽市や東京・浅草など全国展開している。京都府全体で観光滞在時間を増やしてもらおうと、4月下旬に11店舗目となる宇治店をオープンさせた。

 JR宇治駅前や宇治橋西詰が乗降拠点。コースは予算や希望に応じ、三室戸寺や万福寺、天ケ瀬ダムにまで足を延ばすこともできる。料金は2人乗車で1区画(1・2キロ)4千円からで、1時間1万7500円などと設定。店長の佐藤正昭さん(46)は「利用はまだ少ない。巡って楽しむという発想が、宇治を訪ねる観光客にあまり浸透していない印象を受ける」。そこで車夫が誘客する際は、まず地図を示して観光資源の多さを伝えるようにしている。

 人力車は10台、スタッフは13人。学生アルバイトが多く、人力車の扱いや歴史の勉強といった研修に約1カ月かける。人力車は自転車と同様に軽車両に分類され、原則として車道を通る。最も留意するのは安全面だ。平等院表参道は道幅が狭い上、観光客の往来が多い。当初は通行する計画だったが、地元からの不安の声も伝わり、オープン前にルートから外した。佐藤さんは「地域の理解があってこそ」と強調する。

 始業前には車庫近くや平等院表参道などで清掃に励み、住民らにあいさつする。同社は車夫に「地域の観光大使」を意識するよう促しており、人力車の利用客以外にも観光案内している。

 こうした姿勢に地域とのつながりも深まってきた。宇治川右岸の20店舗が加盟する「宇治源氏タウン銘店会」の役員たちは「実際に乗らないと分からない」と6月に乗車を体験。池本将孝副会長(33)は「知っている景色も目線が高くなると変わる。青紅葉が手に届きそうで良かった」と振り返る。車夫たちをバーベキューに誘ったこともあり、「互いに何でも言える関係をつくることが大切。接客の質をお互いに高めていければ」と話す。

 佐藤さんも言葉に力を込める。「地域や行政の行事にも積極的に関わり、宇治を共に盛り上げていきたい」

【 2018年08月05日 16時30分 】



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