博物館の縁の下の力持ちをご紹介する、【炭8(スミ・エイト)】シリーズ。
今回は、切羽(石炭採掘場)でコールカッターを操る「カッターマン」のお話です。
(前回の【炭8】は、6月19日のブログをご覧ください)
博物館第1展示室にある切羽の再現ジオラマで、この男性はコールカッターに顔を向け、黙々と作業しています。
コールカッター(截炭機)は、長壁式採炭(30~100mの炭壁をつくって採炭を行う方法)に用いられた採炭機で、炭壁の下部に切り込みを入れていくことで、炭壁を崩して採掘する方法です。
このように、機械を用いた切羽採掘は、能率向上を図るため(作業員1人あたりの採炭量を増やす)、大手の炭鉱では機械切羽を目指した技術が積極的に導入されていきました。
特に、田川市域に所在した三井田川鉱業所は、戦前期では最先端をゆく機械切羽の炭鉱として、全国的に有名でした。
しかし、機械や技術の導入は、すぐさま効果が出るとは限りません。国内外で最新の機械が開発されたとしても、それぞれの炭鉱では地質や環境が異なるため、そのまま活用できるとは限りません。現場に定着して成績をあげるため、技術者らは試行錯誤を繰り返します。
三井田川鉱業所では、全国の炭鉱に先駆けて、1910年代にはコールカッターを導入しましたが、当初は固い松岩(珪化木)と低い炭層に阻まれて、使用が困難となりました。機体が大きいにも関わらず満足に仕事をしないコールカッターは、「牛」と呼ばれていたそうです。
その後の試行錯誤や改良、使用者の講習などを経て、ようやくコールカッターが効果を発揮するようになったのは、1920年代に入ってからでした。
如何に効率的に石炭を掘るか。寡黙な【炭8】カッターマンですが、その背中は炭鉱の運命を左右する技術者の使命と責任を物語っています。
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