小さな栗の木の下で

保護犬のミニチュア・ダックスを引き取り、
小型犬との暮らしは初めて!という生活の中で、感じたことを徒然に…。

『奇跡のいぬ』

2009-02-07 | 

 犬に関連する本は、写真やイラスト付きの症例解説のある犬の病気の専門書から、トレーニング、しつけ関係のテキスト、エッセイ、ドキュメンタリーなどなど、犬本専用の書棚に200冊近く詰め込まれています。

 今日読み終えた『奇跡のいぬ』は、訳者が『動物はすべてを知っている』を翻訳した上野圭一さんだったので、迷わずすぐに買い求めた本です。著者のダン・ダイさんの文章の巧みさに舌を巻きながら読んだのですが、おそらく上野さんの訳文も秀逸なのだろうと思います。

 物語は、アルビノで聴覚がなく、片目も弱視というグレートデーンを飼うことになった著者が、拒食症になったその子を救うために作ったクッキーでビジネスを成功させるお話なのですが、ハウスシェアしている友人で、のちにビジネス・パートナーとなるマークとの関係が本当にステキで羨ましく、マークの飼い犬2頭(ダルメシアン1頭、ラブのミックス1頭)とグレートデーンのグレーシー、この3頭との暮らしぶりが愉快で、とても心温まるものでした。

 獣医師と相談しながら「ヒトによくないものはイヌにもよくない」という理念のもとにグレーシーのために作られた自然食のクッキーは、やがて愛犬家の間で評判となり、全米で受け入れられることになります。
 その収益でダンとマークは恵まれない犬たちのための「イヌの赤十字」をスローガンに活動する財団を作るなど、
このお話が単なるビジネスのサクセス・ストーリーとして終わっていないところが、犬好きの人間が犬のためにやった純粋な行為を裏付けていますね。
 
 読み出したら止まらなくなり、グレーシーとのお別れのシーンではぼろ泣きしました。障害をもった1頭のグレートデーンがもたらしてくれた時間、風景、絆、愛…、どのページを開いても胸に迫ってきます。

 うちではトチにもう聴覚がないので、ついグレーシーとダブらせてしまいましたが、本書でも描かれているように、聴覚がない分、ほかの知覚を研ぎ澄ましていく生き物の逞しさと、そうして補えるように作られた生命の設計図に感動します。これは犬に限りませんね。

 「訳者あとがき」で上野さんは「〈純粋無垢な生き物〉たちは、人間という〈さほど無垢ではない生き物〉のなかに眠っているスピリチュアリティ(霊性)をゆさぶりおこすだけの力をもっているようです」と書いていますが、まったくその通りだと思います。

 2001年が初版なので、かなり前の本ですが、力をもらえる本でした。

 この本が発行された当初、ダンとマークが創業した、グレーシーと2頭の置き土産である「スリードッグ・ベーカリー」は、東京・代官山に第1号店がオープンしたばかりでしたが、今では犬の自然食だけでなくウエアやグッズも扱っている直営店やFC店が日本全国にあるようですよ。http://www.threedog.co.jp/

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