萱野 茂著「アイヌと神々の物語」より
国造りの神とフクロウ
大昔に天の国からコタンカラカムイ(国造りの神)が降りてきて、アイヌモシリ(アイヌは人間、モは静か、シリは大地、アイヌの国土)を造りました。
造ったばかりの大地には、一筋の草も一本の木も生えていませんでした。
国造りの神は、このままでは神も人間も食べ物がなく、生活はできないであろうと考え、草や木や穀物の種をまくことにしました。神々がそれらの種まきを、どの神にやらせようかと相談した結果、フクロウにやってもらうことにしました。
そこで、国造りの神はフクロウに、ウバユリ、イッポンナ、アザミ、エゾニュウ、ヒエ、アワ、そのほか諸々の草や木の種を預けました。それらの種を預かったフクロウは夜となく昼となく、新しい国土の上端から下端まで種をまいて回りました。
それで、この国土に、神も人間も食べられる草や穀物類が生えて増え、食べ物が増えるにしたがって人間も増えたということです。
そのことを知っているアイヌたちは、フクロウのことを、カムイチカプ(神の鳥)、あるいはコタンコロカムイ(村をつかさどる神)、と敬称をつけて呼んでいるのです。
またフクロウは、夜でも目が見えるので、コタン(村)で心配ごとが起こりそうな時には、高い声を出してコタンの人に注意を促し、危難を未然に防ぐことができたということです。
語り手 平取町荷負本村 木村こぬまたん
(昭和37年10月4日採録)
「十勝の活性化を考える会」会員K