中小企業家しんぶん 2020年11月5日号
菅政権は、発足時から中小企業を淘汰・再編して行くことを宣言していました。しかし中小企業家同友会は、沈黙を続け真っ向から反対の意見を述べずにいましたが、さすがに申し訳程度のコラムを機関誌に掲載したので転載します。
『円卓
最近、一部のマスコミで「生産性の低い中小企業は淘汰されるべき」などの議論が目立っています。果たしてそうなのでしょうか▼企業を評価するものさしは生産性だけではなく、多様であるべきです。中小企業は多様な雇用の場の提供、地域経済への貢献、地域社会の担い手などさまざまな役割を果たしています。生産性だけでは評価できない多くの役割や価値を総合的に評価する必要があります▼また中小企業の生産性について、二〇一六年の中小企業白書によれば、平均値では中小企業の生産性は低いものの、製造業では約一割、非製造業では約三割もの中小企業が大企業平均を上回ると分析しています。平均値だけを捉えて「中小企業は生産性が低い」という紋切型の見方をしてしまうと誤った方向に進んでしまいかねません▼生産性を高めるために個々の企業が努力することは当然ですが、自社の経営努力だけでは解決できない取引環境、競争環境の問題があります。中小企業庁も近年特に取引適正化を重視していますが、その点での政策強化も不可欠です。ポストコロナで地方分散型社会への転換が求められている中、中小企業重視の政策こそが求められています。』
§
※経済産業省
中小企業憲章について 閣議決定 2010/6/18
https://www.meti.go.jp/committee/summary/0004655/kensho.html
中小企業憲章
中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である。常に時代の先駆けとして積極果敢に挑戦を続け、多くの難局に遭っても、これを乗り越えてきた。戦後復興期には、生活必需品への旺盛な内需を捉えるとともに、輸出で新市場を開拓した。オイルショック時には、省エネを進め、国全体の石油依存度低下にも寄与した。急激な円高に翻弄されても、産地で連携して新分野に挑み、バブル崩壊後もインターネットの活用などで活路を見出した。
我が国は、現在、世界的な不況、環境・エネルギー制約、少子高齢化などによる停滞に直面している。中小企業がその力と才能を発揮することが、疲弊する地方経済を活気づけ、同時にアジアなどの新興国の成長をも取り込み日本の新しい未来を切り拓く上で不可欠である。
政府が中核となり、国の総力を挙げて、中小企業の持つ個性や可能性を存分に伸ばし、自立する中小企業を励まし、困っている中小企業を支え、そして、どんな問題も中小企業の立場で考えていく。これにより、中小企業が光り輝き、もって、安定的で活力ある経済と豊かな国民生活が実現されるよう、ここに中小企業憲章を定める。
§
2020/10/16 JIJI.COM 配信
『政府は16日、未来投資会議を廃止して新たに「成長戦略会議」を設置することを正式決定した。民間議員には、菅義偉首相のブレーンとして知られる小西美術工藝社のデービッド・アトキンソン社長らを起用し、成長戦略の具体策を議論する。』
デービッド・アトキンソンの主張
『日本経済の最大の問題点とは何なのか。生産性が向上しない最大の原因は何なのか。それは「中小企業」です。
日本の「生産性向上」の障害となっているのは、日本企業の99.7%を占めて、これまで日本経済を支えると言われてきた357万の中小企業なのです。
日本では、全企業の99.7%が中小企業です。これらの中小企業をひとくくりにして「日本の宝だ」というのは、究極の暴論です。冷静な目で見ると、中小企業は日本という国にとって、宝でもなんでもありません。宝なのは、大企業と中堅企業です。
特別な理由がないかぎり、小規模事業者や中小企業に「宝」と言えるような価値はありません。将来、中堅企業や大企業に成長する通過点としてのみ、価値があると言えます。永遠に成長しない中小企業は、国の宝どころか、負担でしかないのです。』
東洋経済ONLINEより抜粋
§
中小企業家同友会は「中小企業を1社も潰させない」と日ごろから主張し、政府に中小企業憲章の閣議決定まで取り付けたその意気込みは、この深刻なコロナ禍と菅政権の強権政治の前にすくんでしまったようです。
日本の中小企業、特に零細な町工場等は世界に類を見ない高度な技術を持っています。
手作業で数ミクロンの加工精度を保持し、大量生産には向かないけれど世の役に立つ製品を送り出しています。
今政府はそれらを大企業に吸収させ、外資に売り渡そうとしているように見えます。
まさに「角を矯めて牛を殺す」世紀の愚策です。
どさくさに紛れて「種苗法」を改悪したように、中小企業を潰す政策は強行されるでしょう。
具体的な政策が出てから「反対」を唱えても完全に手遅れです。
いまこそ中小企業家同友会の存在自体が問われているときではないでしょうか。
このままでは単なる「労使協調・大政翼賛会」のそしりを受ける事必定です。
「十勝の活性化を考える会」会員K