さて、訪問前には「大正・昭和のベスト・セレクション」的企画と思っての訪問。
で、実際拝見して成る程、なんですが、確かに加わった、というかメイン・タイトルになった「版画家群像」の方が当たっています。
それで、ですが、充実した展示を拝見して残念だったは、同館のスタッフ自身では気が乗らなかったのか、展示目録が準備されていなかったこと…
正直、自分自身のアーカイブ、将来の楽しみ、に記憶に留めたい作家の方々でした
とまあ、折角の好企画を自ら価値を損ねて、とちょっと怒りつつ会場を回った訳ですが
今回企画展のキュレーターさんは、なるべくこれまで焦点の当たっていない版画家をパンフレットに、しかも、歴史的意義付けも含めて記載されたのでしょうが、tokyoboy的には以前から存じ上げている作家、が気になりました。
先ずは川上澄生さん。
すっきいりとした構成の中で色味鮮やか(そんなに多色で被せてある訳ではありませんでしたが…)が展示中盤でダントツに光っていました。
今回の作品群は初めて拝見したんじゃないかな…
そして、平塚運一さんの作品も素晴らしい。
彼ら2人の影響を色濃く受けた棟方志功さんの「釈迦十大弟子」も良く見る作品ですが、こういう風にズラッと12枚並ぶ展示は珍しい…
この辺がお気に、でした
さて、今回の”意図”に話を合わせるとこうした大正・昭和期の、特に木版画に関しては”創作版画”として山県鼎さんが始めた、と展示にありました。
彼の作品、技巧は兎も角、面白い視点もあり、だったのですが、どうやら長野県に彼の美術館があるそうな…
で、これはこれは、と思ったのがその後の展示だった石井柏亭さん。
「東京十二景」が素晴らしかったです(添付は向じま)。
色っぽいし、情景が伝わってくる…
彼ら2人以下の発刊した「方寸」、そしてその後も展示が続いた「月映」(恩地孝四郎など)、などが代表と”勉強”致しました。
今回作品の多くを提供、タイアップしていた小野忠重美術館。
その小野さんの作品も幾つか並んでいて、その”暗い”、ルオーの太い黒い線にも似た作品像にはちょうと気になるものがありました。
残念なのはライティングとガラスカバーで一部のものは全く見ることが出来なかった点…?
田中恭吉と荻原朔太郎との関係も興味深かったな。
あ、それと、南薫造さんとか麗子像の岸田さんとか、油絵で存じ上げている方も結構版画を残していること…
そして、今回のパンフレットにフィーチャーされているロシア人版画家ワルワーラ・ラブノアもこの時代を日本で生きた作家です。
正にロシア構成主義が抜け出て来たのでは、と思われる作風。
綺麗な色味、すっきりとした画面構成。うん、なかなかに素晴らしいものがありました。
それにしても、の最後の疑問。
今回光を当てた作品群は1人で下絵、彫り、摺り、をした創作版画だった訳ですが、一方では日本の誇る浮世絵もまだ生き残っていた時代。
質としては各行程をプロが行うそれの方がずっと(平塚さんや川上さんの作品が持つ”味”は別として)優れていたと思うんですが、どうしてこうした作品群が世に残るスペースとでもいったものが、在ったのでしょうか??
***************************
そして、今回の”感動”は常設コーナーでの紹介となった丹阿弥丹波子さんのメゾチント。
か、感動もののテクニック!
ガラスの器と花を中心とした植物類がモチーフなんですが、陰陽、前後ろ、物凄い精緻な作品で、メゾチントといえば浜口さんのそれより単色であれば”上”か、と思わされました。
”出会い”に感謝、です
********************************
さて、今回の入場料は600円。これが無料となって、ぐるっとパス効果は計1,950円となりました。