VOL2 わ・た・し流

おとぼけな私ですが 好きな本のことや 日常のなにげない事等 また 日々感じたことも書いていきます。

永遠の桃花通信46

2021-11-27 17:13:09 | 永遠の桃花

もう  本当に 作られたお話って分かっているのに

毎回泣ける・・・(´;ω;`)ウゥゥ

 

生まれたら死に、出会ったら別れる・・・それが

この世なんだけど・・・

解っているのと実際悟って精神を平静にできる事

一致しません・・・

 

夜華を抱いたまま 時が止まってしまった白浅。

分厚い仙障を張り巡らせ 誰がどのようにしても

穴ひとつあける事ができなかった。

 

折顔が駆けつけた時 すでに夜華は息絶えて

暫く経っていたが 白浅は血だらけで髪を振り乱し

夜華を抱いて東皇鐘の下に座り込んでいた。

東皇鐘は 七日間悲鳴を上げ続け、八荒の神仙が

若水の浜に集まっていた。天君は 夜華の遺体を

引き取る為に 十四人の仙伯を使わしたが、

七日七晩 仙伯たちが放った雷電でさえ

仙障に穴をあける事はできなかったのだった。

 

折顔の言う事には 白浅は一生夜華を抱いたまま

若水の浜に座り続けるだろうと思ったが 幸にして

東皇鐘の鐘の音が 遥か遠くまで響き、八日目にして

墨淵まで引き付けて来た。と

 

『彼が言った事を 私は全部覚えていなかった。

あの時の私は ただ、夜華が死んだ、私もまた死んだ

のだと思っていた。

本当を言うと、夜華を抱いたまま 若水の浜に

一生座り続けるのも悪くないと思った。

例え、 彼がもう目を開けることができなくとも、

再び口元をゆるめて 淡々とした笑みを浮かべる事が

できなくとも 私の耳元に近づき 私の名前を呼びかける

事ができなくとも・・・

少なくとも私は彼の顔を見る事ができ、彼が私のそばに

いる事を知っている。

 

折顔は 八日目にして 墨淵が駆けつけて来たと言った。

あの時私は東皇鐘の下に座って頭が真っ白になっていた。

ぼんやりする意識の中、前後の事もわからずにいたが、

目をあけた時 仙障の外に 眉をひそめて私を見つめている

墨淵の姿を おぼろに覚えている・・・

 

乾ききった私の心が 少し感覚を取り戻し、

自分の存在を認識した。 そして ようやく

夜華が元神を祀って魂が散ってしまった事、

夜華、彼が死んでいるという事に気づいた。

私は すぐ近くに墨淵がいるのを見て、墨淵なら

きっと夜華を助ける方法をしっていると考えた。

彼もまた 東皇鐘という劫を経て 最後には

ちゃんと戻って来たのだから・・・

 夜華さえ助ける事ができるのなら・・・

もう一度彼の口で 浅浅と私に呼びかける事が

できさえすれば、 たかが七万年、いや七十万年でも

待つ事ができる と 考えた。

 

私は仙障をはずし、夜華の身体を抱いたまま

墨淵の前に跪いて彼に助けを求めようとしたが、

しかし 立ち上がろうとしたときには身体に全く力が

入らなかった。

墨淵は速足で近づき、しばらく確認してから、

溜息をついて 重い口調で言った。

「木棺を用意して、夜華には安らかに

逝ってもらいましょう」

 

墨淵は崑崙虚に戻って行った。私は 夜華を

青丘に連れ帰り、仙伯たちもついてきた。

 

私は、夜華は私のもので他の誰にも渡す事は

できないと思っていた。

 

仙伯たちは 谷口で 半月ほども待ち続けていたが、

使命を果たせず 天君に報告するため 九重天上に

戻って行った。

 

翌日 夜華の両親が 青丘にお越しになった。』