新選組の幹部で後世まで生き残った隊士の一人として、斉藤一、永倉新八がいる。
その斉藤一のお話。「一刀斎・夢録」浅田次郎:著。
・・・なんだけど、もちろん史実に基づいたあくまでフィクションね。
初版はハードカバーで、でかくて値段が高くて上下巻で、ちょっと買うのがイヤ
だったんだけど、やっと文庫本になってくれて購入出来た。
ま、値段もそうだけど、ハードカバーのでかいやつって持ち運べないし、
読みづらいし、立派なだけであんまりいいことないよね(苦笑
前作の「輪違屋糸里」はまあ、物凄く良かった・・・ってわけでもなかったんで、あまり
期待しなかったんだけど、こっちは凄く良かった!うん、本当に斉藤一が乗り移ったかの様。
本当の剣客でしか描けないような描写で、凄く良かった。
最後の方は読み終えるのが惜しくてページをめくりたくなかったほど。
フィクションと書いたけど、冒頭でいきなり坂本竜馬を暗殺するんだけど(実際は京都見回り組の
仕業と言われている、新選組の原田左之助も嫌疑をかけられる)ここから全編に及んで、
斉藤一の殺しの美学、哲学が物語を引っ張って行く。
人を斬るのはとにかく美しくなければいけないと言う独自のこだわりで、鬼神のごとく斃して
いくんだけど、その生死を分ける戦いの中での絶対の法則があって、それはなかなかに深い。
話はそれるけど、個人的には人と争うことは大嫌いなんだけど、そのクセ、プロレスや
ボクシング、総合格闘技などは結構好き。やっぱり猪木の「いつ何時、誰とでも戦う」とか、
プロレス最強説を謳った異種格闘技戦、もっと前は大山 倍達の極真空手、元祖シュート
ボクシングのベニー・ザ・ジェット・ユキーデとかキックの鬼の沢村忠・・・なんかを見て聞いて
育っているので、当時の男の子は誰でも「いったい誰が一番強いんだ!?」とか
「最強なのはプロレス?ボクシング?空手?」とか色々想像を膨らませていたわけ(笑)。
そこで俺も色々考えたけど、まずはルールがあるのか、ないのかで全く違ってくる・・・と。
街のケンカで、まさかコブラツイストを狙うやつはいないでしょ?お客さんをわかせる必要も
ないわけだから、スキをついて急所蹴りしてすぐ逃げる・・・とか、もっとも安全で確実な方法を
取るのが当然だよね。だから一概にレスラーが一番強いとも限らない。
スタン・ハンセンだって後ろからバットで殴られれば危ない。
俺が思うに街のケンカで一番強いのは「卑怯」な奴だと思うよ(笑)。
土方歳三が剣術の試合をしている最中に、石を投げたり、足元の砂を巻き上げて、相手が怯んだ
スキに打ち込むと言う卑怯な手を使った・・・なんてたまに小説で出てくるけど、ルールがある試合なら
負けだけど、もし真剣での勝負だったら卑怯もへったくれもない。
負けたら死。勝てば相手に卑怯とののしられることもないわけだし、どんな手を使ってでも
勝たなければならない。
同時に、斉藤一はそこに勝つだけではなく「美しさ」を求めた。
一刀のもとに、ともすれば相手が気づかぬうちに仕留める・・・なんてことを求めた、と。
それとは反して(?)彼の勝つための秘策がまた泥臭い。
「人より先に剣を抜く」「人より早く刀を振り回す」「仕留めた後は懐紙で刀の血などをぬぐって
いないで、鞘に納める時間も惜しむほど一目散にその場を離れる」「勝てる見込みがないなら
一目散に逃げる」・・・等。
やはり生死を分けた戦いで卑怯もへったくれもないんだよね。剣術の試合ではないから万が一にも
負けるわけにはいかない。
面白い描写に「ここで近藤勇なら名乗ってから敵に切り込むところだろうが、自分はそんな正々堂々
とはしない」みたいなことが書いてあるんだけど、そこまで徹底していないと生き残れないってことだね。
それとまったく話は飛んでいくんだけど(笑)、そう言った子供のころからの下地(?)があるせいか、
いつ何時でも、いざというときに動きが制限されないような恰好をする、ってのが身についてる。
最低限だけどさ。だからビーチサンダルみたいなやつで外を歩いたり出来なくて。
最近の若い人が良く履いてるクロックスっての?夏は涼しくていいだろうけど、全力で走れない
ようなのとか、足蹴りが出来ないような靴を履いて街に出れないんだなあ。
ま、そんな状況には絶対にならないんだけど。せいぜいブーツだな。
ビーチサンダルタイプは自由に動けないから怖くて歩けないよ。
俺が子供の頃ってたまにだけどそういう状況ってあったんだよね。そんな場合に自由に動けないとか、
全速力で走れないとかって怖くて(苦笑
だから最近の若い人たちは、安全に育ったんだろうなあって、履いている物を見ると思うよ。
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