鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

花文図鐔 古金工 Kokinko Tsuba

2011-02-03 | 
花文図鐔 古金工


花文図鐔 無銘 古金工

 室町時代まで上がるであろうか、作者不詳の古金工鐔。簡素な素銅地に、やはり簡素な毛彫で描き表わした菊、梅、桐紋。時代の上がる金工鐔には、片切彫も、高彫も、鋤込みもないこのような作例があり、先に紹介した目貫と同様に時代性をここから読み取り、江戸の作品とは違った世界を鑑賞したい。稚拙ながら大きな魅力のある作である。

梅図目貫 古金工 Kokinko Menuki

2011-02-02 | 目貫
梅図目貫 古金工


梅図目貫 無銘 古金工

 季節柄、安易だが梅を題に得た作例を紹介する。
桃山時代であろう、量感豊かに表現された梅の花を心象的に描いた作。ふっくらとした赤銅地高彫に金のうっとり色絵の古法。この図からは何の鳥であるのか不明。古拙といえばその通りなのだが、花の大きさと比較しても写実性は追及していないわけだから、表現力云々よりも、梅の花を装う生き物として考えればよいだろう。大胆な花の描写が魅力であり、江戸時代の精密な描法とは質を異にする世界を楽しみたい。

梅樹透図鐔 古赤坂 Koakasaka Tsuba

2011-02-01 | 
梅樹透図鐔 古赤坂


梅樹透図鐔 無銘 古赤坂

 鉄地を肉厚に造り込み、陰陽の洒落た透かしで事物を草体に印象深く表現するのが赤坂派。この鐔は、江戸時代初期の古赤坂と鑑られる力強い作。赤坂初、二、三代には在銘作品がないことからこれら三代を古赤坂と呼び崇めている。いずれも戦国時代の気風を残して強みがあり、独特の構成になる透かしの切り口にも力が感じられ、人気が高い。この鐔は梅の古木を簡潔に表現したもので、特に耳を太く造り込んで鐔面を印象付けている。描かれているのは一見して老梅だけと思われるも、地を這うように構成された幹の下面には雪を想わせる抑揚のある空間を造り、それとなく演出している。美しい作品である。