鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

松原千鳥図鐔 後藤清乗 Seijo Tsuba

2019-09-10 | 鍔の歴史
松原千鳥図鐔 後藤清乗


松原千鳥図鐔 後藤清乗

 日本的風景。先に紹介した政随と全く同じ風景の要素だが、表現者によってここまで異なる。当たり前だと言われればその通りだが、この自然体の風景図が素敵だ。鎚の痕跡を活かした地鉄の景色が空気感となって天空へ、無限の空間へと続く。

老松に千鳥図鐔 浜野政随 Shozui Tsuba

2019-09-09 | 鍔の歴史
老松に千鳥図鐔 浜野政随


老松に千鳥図鐔 浜野政随

 すいません。本作の紹介の前に、訂正します。前回紹介した乙柳軒の鐔の裏が、今回の鐔と入れ間違っていました。下の写真が乙柳軒政信の正しい写真です。

 磯慣松に掛かる夕日。千鳥はそろそろ帰巣のようだ。松樹の力強さも魅力だ。だが、千鳥は何故にここまで厳しい表情をしているのだろうか。鍛え強い鉄地に高彫象嵌。千鳥は金、銀、朧銀、素銅と多彩で、これも色絵の擦り剥がしを想定した描法であろうか、魅力的。




千鳥図鐔(揃金具) 乙柳軒味墨

千鳥図揃金具 乙柳軒味墨 Miboku Soroikanagu

2019-09-07 | 鍔の歴史
千鳥図揃金具 乙柳軒味墨


千鳥図揃金具 乙柳軒味墨

千鳥の文様表現は、文箱などの蒔絵にみられるように古くからある。でも、千鳥図装剣小道具というと浜野一門がまず思い浮かぶ。この鐔、目貫、縁の揃金具は、乙柳軒味墨政信の作。鉄地に高彫象嵌した千鳥の表情が険しい。大きく開いた嘴、鋭い目。かわいらしいとも言い得る身体の印象とは大きく異なっているところが面白い。




芦雁図鐔 赤坂 Akasaka Tsuba

2019-09-05 | 鍔の歴史
芦雁図鐔 赤坂


芦雁図鐔 赤坂

 赤坂鐔工は独特の感覚で草体化した図柄を得意とした。洒落ている。洗練された文様美であり、江戸時代後期の粋に通じる美観とも捉えられている。その構成感覚で芦雁を表現した。繊細な線描写に、雁の姿も躍動的ながら独創的。他にない空間とされている。ここまでくると、古典的な鐔の見方、あるいは禅に通じているという意識は全く起こらない。

月に雁図鐔 亀眼 Kigan Tsuba

2019-09-04 | 鍔の歴史
月に雁図鐔 亀眼


月に雁図鐔 亀眼

 創作における指向的に安親を想わせる巧みな構成。この工には安親を手本とした作もあるようだから、安親に私淑した作家の一人であろう。ススキの原に遠望の月の出。空には帰雁。武蔵野が背景にある。なんて素敵な構成なんだろう。奇麗で洒落た鐔となっている。

芦雁図小柄 後藤光美 Mitsuyoshi Kozuka

2019-09-02 | 鍔の歴史
芦雁図小柄 後藤光美


芦雁図小柄 後藤光美

 後藤宗家十五代光美は、舞鶴など鳥の図柄を得意とした。この小柄は、写実的な彫刻表現。奇麗に揃った魚子地を背景に、正確な構成、精密な構図。ここまで画面を大きく捉えた小柄をみると、後藤家の古典的意識はすでに感じられない。進化せざるを得なかったのであろう。とにかく美しい。