お探し物は図書室まで 青山美智子 著 ポプラ社
小学校に隣接しているコミュニティハウスの小さな図書室にやってきた悩める人たちに、「何をお探し?」と不愛想に声を掛ける司書小町さゆりがインスピレーションでセレクトしてくれた本や可愛い羊毛フェルトの付録で悩める人たちの仕事や人生にヒントを提示しながらも自ら踏み出せるように後押ししていくような5編の連作短編集でした。それぞれの短編では主人公は違うのですがどこかで繋がっていたというからくりも後で思い出すようなお話です。小町さゆりはレファレンスの達人みたいな司書さんで、図書室にやってきたそれぞれの主人公たちが小町さんを初めて見掛けたときに抱いた彼女の第一印象もそれぞれ違っていました。冬ごもりしている白熊、ゴーストバスターズに出てくるマシュマロマン、ベイマックス、早乙女玄馬のパンダ、正月に神社に飾られている大きな鏡餅のようだとあまりよくないイメージを最初は抱くのですが、本をセレクトするときにものすごいスピードでパソコンのキーを打つ姿と洋菓子のハニードームの空き箱から取り出して羊毛フェルトを手渡すときの小町さんの態度や表情はどの人にも同じように接していたのではないのだろうかと想像できました。レファレンスのプロとしての司書としての魅力だけでなく、小町さんの安心感と信頼感や温かさが、本という媒体を通して、悩める人々にある気付きやきっかけを押し付けでない、ふっくらした愛の籠った贈り物を贈ってくれていたという人間味溢れる姿がこの小説の中で一番光っていた魅力のひとつだったことに気が付きました。
14日に発表された本屋大賞では2位になった小説でした。