3月17日に放送されていたドラマ『100万回言えばよかった』の最終回を見ました。前回までで直木(佐藤健さん)を殺したのが英介だったことが判明、事件の真相や事件に係わっていた人間関係も解明されていました。前回まではミステリー要素が濃い内容のストーリーでしたが、最終回はそれまでとはガラッと変わってファンタジックな恋愛ドラマ感が終始漂っていました。
悠依(井上真央さん)が「夢見てるの?」とつぶやいていたことから始まった最終回、成仏したと思われていた幽霊の直木が幽霊ではなく1日だけ生きているかのような姿のまま実体化して悠依の元に現れ、最後の1日をともに過ごすことになり、思い残したことを二人で回って全部成し遂げることになるというストーリーでした。二人でハンバーグを食べたり、ショッピングに行ったり、悠依が直木の両親を招いてハンバーグをご馳走して、その姿を直木が陰からそっと見守ったり、しばらく会えてなかった弟に最後に会いに行ったり、魚住のお姉さんのお寺まで行ってお姉さんや幽霊の先輩とも会ったりと大切な人たちに最後のお別れをして行く直木の姿が描かれながらストーリーは進んで行きました。最も世話になった魚住(松山ケンイチさん)を交えて直木と悠依と3人でオムライスを作ったりカードゲームをしたりと楽しそうに最後の1日を過ごして行く姿も描かれていました。直木は魚住に会えてよかったと心から感謝を述べていたシーンもあり、直木がこの世から去らなければ3人の仲睦まじそうな友情関係がもっと続くような間柄になれたでしょうとも思いました。
心残りになっていたことを大方成し遂げた直木は最後に、本当に一番大切だった悠依との別れに向き合いました。直木が一番思い残していた言葉で悠依に本当の気持ちをきちっと告げながら最後は消えて行きました。そのシーンはとても切なかったけれど、これで思い残すことがなくなって成仏できたかのような最後のシーンでした。
このドラマの中で、何度か登場していた絵本『100万回生きたねこ』の絵本は最終回でも重要なモチーフになっていて、最終回にも最後のほうに出てきてこのドラマの主題をさらに深く掘り下げていたかのように思いました。生きていたときに言えばよかったと思っていた悠依への思いを直木が消える寸前まで伝え続けていたシーンがこの絵本の主題とリンクしていました。直木にとって、この絵本の中で出てくる「白いねこ」のような存在は悠依でしたし、悠依にとっても「白いねこ」は直木だったことが描かれていました。お互いが最も愛しい存在だったことを認め合うことは死が永遠の別れを齎してもある意味遺された人にとってその後の人生を生きて行く上での術になるのかもしれないなあと思いました。でも、伝えたい思いは生きている間に伝えておくことが最も大切だということ、今を大事にして生きて行くということが暗に描かれていたように思いました。悠依が直木の姿を目の前で見ることはもうないけれど、どこかで常に見守ってくれていると確信しながら最後に直木からもらった言葉を常に心のどこかで思い出しながらも笑顔を見せて元気に生きて行くという終わり方でした。
大切な人ともう会えなくなってしまってもその人から投げ掛けられた言葉や思いや行いが遺された人にとってその後の人生を力強く生きて行けるこの上ないメッセージや心の拠り所になったりするのだろうなあと思いながらこの最終回を見終えました。