愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

八幡浜のてんぷら

2010年11月22日 | 衣食住

魚のすり身を整形して揚げた練り製品「じゃこてん」。八幡浜をはじめとする南予独特の料理だが、自分は子供の頃、じゃこてんとは言わず、単に「てんぷら」と呼んでいた。

じゃこてんは、何処となく着飾った余所向けの呼び名という感覚だ。

自分は八幡浜の「てんぷら」に、大きな物語を描くことのできる可能性を感じざるを得ない。

というのも、「てんぷら」は南蛮渡来の400年の食文化であり、郷土料理である上に、空間的にも時間的にもダイナミックさがある。

一説には、西洋で寺院の精進料理が起源であり、templeとてんぷらは同源ともいわれる。(この説については、現在、検証中)

徳川家康が食べたというてんぷらは、衣のついたてんぷらではないことは確かである。衣のついたてんぷらは江戸時代中期以降。それ以前のてんぷらは、今の八幡浜のてんぷらに共通する点が多い。

衣のてんぷら、あとは鹿児島のさつま揚げ、八幡浜のてんぷら、これらは時系列に並べてみることも可能ではないかとも考えている。

八幡浜のてんぷらを語ることは、てんぷらの食文化史を語ることにもなる。

わざわざ「じゃこてん」と名乗らなくても、地元のネィティブ「てんぷら」と呼べば良いのではないか。勝手にそう思っている。