愛媛の伝承文化

大本敬久。民俗学・日本文化論。災害史・災害伝承。地域と文化、人間と社会。愛媛、四国を出発点に考えています。

宇和島語り部発足プロジェクト

2023年11月09日 | 地域防災・事前復興
宇和島NPOセンター主催「宇和島語り部発足プロジェクト」のキックオフ。

西日本豪雨から5年を経て、災害の記憶の継承とともに、地域の歴史や文化を活かした復興のあり方、そして社会の豊かさやしなやかな強さの実現を模索する、という趣旨。

第1回目は宇和島市内の地域文化や歴史等に関わる5つの団体が集まっての座談会。私もファシリテーター役で参加してきました。宇和島NPOセンターが中間支援役として各団体を繋いだり、課題を共有していく。

活動メンバーの確保や情報発言など、それぞれ課題はありつつも、パッション、ミッション、アクションの思いの詰まった展開となりました。

歴史資料から見た松山市周辺の地震・津波被害④

2023年11月09日 | 災害の歴史・伝承
3 古代の南海地震―最古の地名は伊予国―
文献史料で確認できる最古の南海地震の記録は『日本書紀』天武天皇13(684)年10月14日条であり、この地震は白鳳地震もしくは白鳳南海地震と呼ばれている。『日本書紀』の中でも神話等の場面ではなく律令国家形成期の7世紀後半の記述で、地方官制度も確立した時代の記録であり、国司から朝廷への報告内容が記載されているため、創作された記事ではなく史実としての信ぴょう性は高い。「壬辰。逮于人定、大地震。挙国男女叺唱、不知東西。則山崩河涌。諸国郡官舍及百姓倉屋。寺塔。神社。破壌之類、不可勝数。由是人民及六畜多死傷之。時伊予湯泉没而不出。土左国田苑五十余万頃。没為海。古老曰。若是地動未曾有也。是夕。有鳴声。如鼓聞于東方。有人曰。伊豆嶋西北二面。自然増益三百余丈。更為一嶋。則如鼓音者。神造是嶋響也」と記されている。
10月14日に大地震が発生し、国々の男女が叫び、山が崩れて川は溢れ、国や郡の役所、一般庶民の家屋、寺社が破損し、人々や動物たちが損傷し、「伊予温泉」(現在の道後温泉)が埋もれて湯が出なくなったとある。つまり、古代の南海地震の記録で最初に出てくる地名は伊予(愛媛県)であり、道後温泉の被害が記録されている。そして土佐国の田畑50万頃(約12平方キロ)が埋もれて海となったとある。これは海岸付近の地盤が沈降してそこに海潮が入ってきて陸地に戻らなくなるという被害で、歴代の南海地震でも同様に地盤の隆起・沈降による海水面の変化の被害が出ている。
白鳳南海地震については同じ『日本書紀』の中に次のような記載もある。「庚戌。土左国司言。大潮高騰。海水飄蕩。由是運調船多放失焉」。これは同年11月3日条で、地震発生から18日後に土佐国司が白鳳南海地震の大津波によって租税を運ぶ船が多数被災し、朝廷に納めるべき「調」を納めることができなくなったと被害状況を報告している。