2011年の東日本大震災以降、文化遺産の復興サポートのため東北地方を訪れる機会が増えたが、訪れるたびに地域の歴史文化が心の復興に果たす役割が大きいことを目の当たりにした。そして、2018年に愛媛で西日本豪雨が発生。今も地域の歴史文化を活かした復興活動を模索している。復興を考える時、インフラや産業に目が向かい、文化芸術は注目されにくいが、演劇や音楽等は自らの表現や発散の場となり、相互を尊重し合う交流の機会となることから、被災後の早い時期から住民から文化芸術を求める動きが各所で見られた。文化芸術は地域のレジリエンス(困難を克服して復興する力)を高めるのだ。八幡浜ミュージカル劇団は、地域の歴史を題材に自らの存在を再確認し、そして児童・生徒を対象としたワークショップを通して表現力を培う機会を提供している。八幡浜を一時的に元気にするだけではなく、将来発生が予測される南海トラフ地震に対しても「事前復興」の地域力を確実に向上させているのだ。これは災害時に限らない。既に我々は人口減少社会の中に生きている。様々な困難を目の前にして、地域をどのように構築していくのか。それを支える文化的インフラとして八幡浜ミュージカル劇団は重要であり、八幡浜の宝となりうるのである。二宮忠八のようにどんな困難にぶつかっても適応し、乗り越える力。そして、子どもたちが過ごしやすい学校空間を設計する松村正恒。今回の2作品は、これからの八幡浜をより住みやすくデザインしていく道標になるのではないか。非常時を含めて平時からミュージカルで自分らしく生きていくことを模索し、地域をしたたかに、しなやかに強くしていく。八幡浜ミュージカル劇団が立ち上がった意義は大きい。
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