ベニシジミ

2006-05-15 23:55:25 | 徒然に


ベニシジミ(紅小灰蝶)
シジミチョウ科

よく見かけるチヨウである
鮮やかなオレンジ色に黒い模様が躍動感を感じさせる
春先の蝶は、もっと色鮮やかな筈だけれど
長雨の中で、羽も痛んですこし、痛々しい

こんな可愛い蝶だが、幼虫は、スイバとか、ギシギシといった
野草を食べる毛虫である

およそ、昆虫ほど、変態をするものは居ないのではないか?
親が生み付けてくれた、固有の食草を強力なアゴで食べ成長する
体が大きくなると、今までの表皮を脱ぎ捨て(脱皮)一回り大きくなる

それを何度か繰り返し、やがて最後の変身のためにサナギになる
辛抱強く、自らの体を改造する期間だ

そして、サナギの殻を脱ぎ捨てて、幼虫とは似ても似つかぬ成虫
華麗なる模様に彩られた羽を持って、蝶として、現れる

幼虫の頃のかみ砕くアゴも、糸を引くことさえ出来ない
螺旋に巻いたストローの様な口
花の蜜を吸うことだけに特化したその姿を、人前に現す

昆虫ほど、顕著な変態を遂げない人間だけれど
母親のお腹の中で守られながら、進化の過程を十月十日の間にやり遂げている

そして、生を受け、この世に生まれて、表向きは大きな変態をしない
脱皮もしないし、サナギにもならない
しかし、私の人生を振り返ったとき、それぞれの場面で
それぞれの内面的な変態を遂げて成長してきたように思える

幼い頃は、親が与えてくれた草の上で小さな範囲で育ち
脱皮を繰り返し思春期を迎えれば自分の居場所が解らず、
突っつかれた毛虫のように、闇雲に、のたうち回る

そして、現実社会に飛び出してから、厳しさを知り
サナギのように籠もって、大人になる試練の時を過ごす

外から見た人の姿は変わらないけれど、
内面的な変態を人は幾度となく経て「完成された大人」になるべく
長い道のりを歩いているのではないか?
間違っても、違う意味の「変態の世界」に彷徨いたくないものだ ^^;