八月下旬。朝から晴れ渡る。夏休みも終わろうとしている町の様相が変わってきた。
目標という未来が決められている人々は急いで移動しようとしている。それは夏がもう終わることを知っている。
救急車がサイレンを鳴らして安全を確かめながら法定速度を守って走っていく。午前中五台の救急車を見送った。確かに今は夏である。
公園では蝉たちが夏の終わりを奏でている。モンシロチョウが乱舞する。人はぐったりと昼をやり過ごす。
草を見つめれば、夏は過去となり、過去はいつも解体の過程であった。確実な夏をいくら探し求めたところで、幻を抱きしめていると気づくだけのことだ。
夏は、眠れぬ狂気を生み、汗を流し、体力を奪い、苦しめてきた。そうだとしても、夏から人生の活力と創造力を得てきたのだし、もう一度取り戻そうと闘ってきた。
砂上の器といえど、いずれ消え去る運命にあるのだ
さらば夏よ。