うどんの研究 連載中
(13)うどん雑学
4.小麦粉研究
国産小麦の代表・中力粉 5/6 new
というのは、小麦粉のでんぷ
んは、水で練り、加熱する(
ゆでる)と糊になるが、その
性質が小麦によって違うから
である。うどんに適したでん
ぷんをもつ小麦からの粉でな
ければならない。小麦粉とい
うのは、実に繊細な食品なの
だ。
(次回に続く)
国産小麦の代表・中力粉 4/6
三つの粉は、どれもミクロン
単位の微粒子である。粉の種
類によって量や質は異なるが、
粘弾性をもつグルテンを形成
するたんぱく質のほか、小麦
粒の主成分である胚乳の約7
割を占める糖質(でんぷん)、
脂質、灰分などを含む。グル
テン量だけなら、強力粉と薄
力粉を混ぜれば中力粉なみの
パワーは出る。しかし、中力
粉製うどんの食感とは微妙に
違う。
(次回に続く)
国産小麦の代表・中力粉 3/6
小麦は南極以外どの大陸でも育
ち、日本では北海道から沖縄ま
でとれる小麦は国民食である。
ただし気候や地味から、国産種
は中力粉(たんぱく質約9%)
になる中間質小麦が主だ。パン
やラーメン向きの強力粉(たん
ぱく質約12%)の原料になる
硬質小麦や、ケーキにあう薄力
粉(たんぱく質約8%)の軟質
小麦はきわめて少ない。
では、問題をひとつ。強力粉と
薄力粉をミックスすると、中力
粉になるか。なるようで、なら
ない―これが答だ。
(次回に続く)
国産小麦の代表・中力粉 2/6
日本人と小麦粉の付き合いは古
い。奈良時代、遣唐使らは中国
から小麦粉製の「唐菓子」を持ち
帰る。これがうどん、そうめん
などへと進化し、やがて各地に
「うどん文化」の花を開いていく
(次回に続く)
国産小麦の代表・中力粉 1/6
「饂飩は馬子が食うもんだ」。
名作『吾輩は猫である』(夏目
漱石)のなかで、こうのたまわ
ったのはホラ話をよくする迷亭
君。うどんの方が好きという主
人の前で、ざるそばをツルツル
やる。頬張りすぎてノドにつか
え、胸を二、三度たたき、目に
涙を浮かべる。その情景がおも
しろい。主人ならずとも、全
国にうどん好きは多い。
(次回に続く)
ミニ製粉史
石器時代、人類は野生の穀
類を石片でつぶした。やが
て、石をすり合わせる往復
運動を思いつく。紀元前3
000年ごろの古代エジプ
ト王墓の副葬品や遺跡壁画
には、女性や奴隷が平らな
石の「サドルカーン」(サド
ルは「鞍」、カーンは「うす」
)上で石片を前後させて製
粉し、パンに焼く工程が残
されている。硬い外皮(ふ
すま)を除き、胚芽、でん
ぷんとたんぱく質の詰まっ
た栄養たっぷりの胚乳など
を取り出すのはマンパワー
頼みだった。
(次回に続く)
パワーあふれる強力粉 4/4
ところで、小麦のルーツは、
チグリス・ユーフラテス川流
域のメソポタミア(ギリシャ
語で「川の間」の意)地方とい
う。この肥沃な三日月地帯で
約1万年前、人類は野生の小
麦に出会った。麦粒を焼いた
り煮たりしながら、古代人は
やがて粉食へたどりつく。粉
を水で練っただけの「平焼きパ
ン」から始めたと専門家はみる
。発酵パンは紀元前3500
~3000年ごろ、古代エジ
プトで生まれたといわれる。
人類はながい時をかけて小麦
粉のよさをつかみ、用途を広
げてきた。
(次回に続く)
パワーあふれる強力粉 3/4
なぜ、それが重宝なのか。パ
ン生地(ドウ)はイースト菌
の発酵(炭酸ガス)によって
膨らむ。もし生地の弾力性が
弱いと、風船がパンクするよ
うに破れてしまう。それでは、
ふんわりと香ばしく焼き上が
らない。 中華メンやギョウザ
の皮、ピザなども強力粉でつ
くる。これらの醸し出す独特
の歯ざわり、シコシコ感も弾
力性がもとなのだ。
(次回に続く)
パワーあふれる強力粉 2/4
new
小麦には、コメやトウモロコ
シなど他の主要穀物にはない
2種類のたんぱく質が含まれ
ている。弾力に富むものの伸
びにくい「グルテニン」、粘着
力が強くて伸びやすい「グリア
ジン」がそれ。小麦粉に水を加
えて練ると、この二つは合わ
さって「グルテン」を形成して
いく。グルテンの含有量やそ
の強弱は小麦の品種や粉の種
類によって微妙に違うのだが、
だいたいの量は強力粉で約12
%、中間質小麦をひいた中力
粉は約9%、軟質小麦からえ
る薄力粉なら約8%となる。
もっともグルテンパワーにあ
ふれているのが強力粉である。
(次回に続く)
プロフィール
バックナンバー
国産小麦の代表・中力粉 5/6 new
というのは、小麦粉のでんぷ
んは、水で練り、加熱する(
ゆでる)と糊になるが、その
性質が小麦によって違うから
である。うどんに適したでん
ぷんをもつ小麦からの粉でな
ければならない。小麦粉とい
うのは、実に繊細な食品なの
だ。
(次回に続く)
国産小麦の代表・中力粉 4/6
三つの粉は、どれもミクロン
単位の微粒子である。粉の種
類によって量や質は異なるが、
粘弾性をもつグルテンを形成
するたんぱく質のほか、小麦
粒の主成分である胚乳の約7
割を占める糖質(でんぷん)、
脂質、灰分などを含む。グル
テン量だけなら、強力粉と薄
力粉を混ぜれば中力粉なみの
パワーは出る。しかし、中力
粉製うどんの食感とは微妙に
違う。
(次回に続く)
国産小麦の代表・中力粉 3/6
小麦は南極以外どの大陸でも育
ち、日本では北海道から沖縄ま
でとれる小麦は国民食である。
ただし気候や地味から、国産種
は中力粉(たんぱく質約9%)
になる中間質小麦が主だ。パン
やラーメン向きの強力粉(たん
ぱく質約12%)の原料になる
硬質小麦や、ケーキにあう薄力
粉(たんぱく質約8%)の軟質
小麦はきわめて少ない。
では、問題をひとつ。強力粉と
薄力粉をミックスすると、中力
粉になるか。なるようで、なら
ない―これが答だ。
(次回に続く)
国産小麦の代表・中力粉 2/6
日本人と小麦粉の付き合いは古
い。奈良時代、遣唐使らは中国
から小麦粉製の「唐菓子」を持ち
帰る。これがうどん、そうめん
などへと進化し、やがて各地に
「うどん文化」の花を開いていく
(次回に続く)
国産小麦の代表・中力粉 1/6
「饂飩は馬子が食うもんだ」。
名作『吾輩は猫である』(夏目
漱石)のなかで、こうのたまわ
ったのはホラ話をよくする迷亭
君。うどんの方が好きという主
人の前で、ざるそばをツルツル
やる。頬張りすぎてノドにつか
え、胸を二、三度たたき、目に
涙を浮かべる。その情景がおも
しろい。主人ならずとも、全
国にうどん好きは多い。
(次回に続く)
ミニ製粉史
石器時代、人類は野生の穀
類を石片でつぶした。やが
て、石をすり合わせる往復
運動を思いつく。紀元前3
000年ごろの古代エジプ
ト王墓の副葬品や遺跡壁画
には、女性や奴隷が平らな
石の「サドルカーン」(サド
ルは「鞍」、カーンは「うす」
)上で石片を前後させて製
粉し、パンに焼く工程が残
されている。硬い外皮(ふ
すま)を除き、胚芽、でん
ぷんとたんぱく質の詰まっ
た栄養たっぷりの胚乳など
を取り出すのはマンパワー
頼みだった。
(次回に続く)
パワーあふれる強力粉 4/4
ところで、小麦のルーツは、
チグリス・ユーフラテス川流
域のメソポタミア(ギリシャ
語で「川の間」の意)地方とい
う。この肥沃な三日月地帯で
約1万年前、人類は野生の小
麦に出会った。麦粒を焼いた
り煮たりしながら、古代人は
やがて粉食へたどりつく。粉
を水で練っただけの「平焼きパ
ン」から始めたと専門家はみる
。発酵パンは紀元前3500
~3000年ごろ、古代エジ
プトで生まれたといわれる。
人類はながい時をかけて小麦
粉のよさをつかみ、用途を広
げてきた。
(次回に続く)
パワーあふれる強力粉 3/4
なぜ、それが重宝なのか。パ
ン生地(ドウ)はイースト菌
の発酵(炭酸ガス)によって
膨らむ。もし生地の弾力性が
弱いと、風船がパンクするよ
うに破れてしまう。それでは、
ふんわりと香ばしく焼き上が
らない。 中華メンやギョウザ
の皮、ピザなども強力粉でつ
くる。これらの醸し出す独特
の歯ざわり、シコシコ感も弾
力性がもとなのだ。
(次回に続く)
パワーあふれる強力粉 2/4
new
小麦には、コメやトウモロコ
シなど他の主要穀物にはない
2種類のたんぱく質が含まれ
ている。弾力に富むものの伸
びにくい「グルテニン」、粘着
力が強くて伸びやすい「グリア
ジン」がそれ。小麦粉に水を加
えて練ると、この二つは合わ
さって「グルテン」を形成して
いく。グルテンの含有量やそ
の強弱は小麦の品種や粉の種
類によって微妙に違うのだが、
だいたいの量は強力粉で約12
%、中間質小麦をひいた中力
粉は約9%、軟質小麦からえ
る薄力粉なら約8%となる。
もっともグルテンパワーにあ
ふれているのが強力粉である。
(次回に続く)
プロフィール
バックナンバー