思い出のトンボ(その4)
過去の画像から、思い出のトンボです。最終回は、セスジイトトンボ、ムスジイトトンボ。
オオイトトンボを含めたクロイトトンボ属3種のうち、この2種の目撃は少なく交尾、産卵がなかなか撮影できません。
シーズン前は撮れるうちにと思いつつ、毎年時期を逸してしまいます。3種を比較しながら過去の画像を振り返ります。
前回、失念したオオイトトンボだけは何度か撮影機会があり、オオイトトンボの記事は14年7月にも掲載しています。
画像を確認するうち、従来あまり記載していない識別に言及することになりましたが、個体差があり、あくまで目安です。
<セスジイトトンボ> 交尾態
2015.6 長野県上田市
<セスジイトトンボ> ♂ 静止
♂ 静止 特徴は三角形状の眼後紋、多くの個体に見られる肩黒条内の淡色条、尾部上付属器の形状
♂ 半成熟 静止 腹部第8節背面に黒い斑紋がある個体
2009.7 埼玉県杉戸町
♂ 静止 腹部第8節背面に一対の点状の斑紋が見られる個体
2011.6 埼玉県嵐山町
以下、オオイトトンボ♂と比較してみます。
<セスジイトトンボ> 一般に見られる♂
2009.7 埼玉県杉戸町
上 セスジイトトンボ♂、下 オオイトトンボ♂。
眼後紋の形状が異なり、オオイトトンボの多くの個体は後頭条が明瞭で、肩黒条内に淡色条はありません。
通常は腹部第8節背面に黒い斑紋があり、これを見れば撮影中でも識別できますが、斑紋がない個体もいます。
セスジイトにも黒い斑紋が見られる個体(3つ上の画像)がいますが、通常オオイトのように明瞭ではありません。
<オオイトトンボ> 一般に見られる♂
2009.7 栃木県真岡市
♂ 静止
腹部第8節背面の黑斑紋が点状で殆ど見られない個体
2014.7 都区内
腹部第8節背面の黒斑紋の形状は、大別して以下の2パターンが見られます。14年7月上旬は同じ池で混在していました。
連結態 ♂ 一般に見られるウサギの耳状に見える黒斑紋
2009.7 都区内
連結態 ♂ 黒斑紋が細い個体 夏型か否かは不明
2014.7 都区内
次に、オオイトトンボ♂とムスジイトトンボ♂を比較してみます。
<オオイトトンボ> 一般に見られる♂
2009.7 都区内
上 オオイトトンボ♂、下 ムスジイトトンボ♂。
ㇺスジイトトンボの眼後紋は細く小さく通常後頭条はありません。また、腹部第8節背面に黒い斑紋がある個体はいません。
肩黒条内に淡色条が僅かにある個体、ない個体(2つ下の画像)がいますが、セスジイトとは眼後紋の違いが明らかです。
ムスジイトは、一見して複眼及び体色のブルーが鮮やかで、フィールドでも他の2種より目立ちます。
<ムスジイトトンボ> 一般に見られる♂ 肩黒条内に短い淡色条がある個体
2011.7 都区内
<ムスジイトトンボ> 一般に見られる♂ 肩黒条内に淡色条がない個体
2010.6 都区内
続いて♀の画像です。セスジイトトンボ、ムスジイトトンボの♀は、♂と異なり背隆線の黒条内に淡色条があります。
セスジイトトンボ♀の多くは黄緑色ですが、稀に青色の♂型が見られます。
<セスジイトトンボ> ♀ 静止 眼後紋は♂と同じ三角形状、後頭条は明瞭
♀ 静止 青色型
2015.6 長野県上田市
09年7月中旬の埼玉、セスジイトトンボの♂、♀が数頭が見られた草叢に珍しくムスジイトトンボの♀が潜んでいました。
♂と成熟♀は見られず、撮影中はセスジイトと思い込んでいましたが、後程画像を見て気が付きました。
同所にいたセスジイトトンボ♀とムスジイトトンボ♀をを比較してみます。いずれも成熟前の個体です。
<セスジイトトンボ> ♀ 半成熟
上 セスジイトトンボ♀、下 ムスジイトトンボ♀。
両種とも背隆線の黒条と肩黒条内に淡色条があり、それぞれ緑色の強い個体と褐色を帯びた個体がいます。
成熟前のセスジイトの褐色みのある個体は、成熟前のムスジイトとよく似ていますが、♂同様、眼後紋で識別できます。
<ムスジイトトンボ> ♀ 半成熟 眼後紋は♂同様細く小さい
2009.7 埼玉県杉戸町
ムスジイトトンボ♀の多くの個体は胸部の褐色が目立ち、成熟すると腹部側面が美しい瑠璃色になります。
稀に青色型がいるとされますが、見たことはありません。以下は成熟♀です。単体の画像がないので、すべて連結態です。
<ムスジイトトンボ> 連結態 ♀
2012.5 横浜市
連結態 ♀
連結態 ♀ 胸部が緑色の個体
連結産卵
2010.6 都区内
連結産卵 ストロボ撮影では♀の腹部側面の瑠璃色が際立つ
2012.5 横浜市
連結態を撮影すれば識別はより明確ですが、セスジイトトンボの連結は次の画像しかありません。河川にいた個体です。
<セスジイトトンボ> 連結態 産卵休止
2011.6 埼玉県嵐山町
オオイトトンボの♀は、胸部の黒条内に淡色条が入らず全体的に黒みが目立つので上の2種とは明らかに印象が異なります。
黄緑色の他、青色の♂型も普通に見られます。
以下はオオイトトンボです。まずは連結産卵、この3種とクロイトトンボは、共通して時に潜水産卵が見られます。
<オオイトトンボ> 連結産卵 ♀は潜水
2008.7 都区内
♀ 静止 眼後紋の形状、後頭条は♂とほぼ同じ
♀ 静止 青色型
2010.7 千葉県野田市
連結態
2009.7 都区内
連結態 ♀は青色型
2014.7 都区内
オオイトトンボ♀とセスジイトトンボ、ムスジイトトンボ♀との識別は容易ですが、厄介なのはクロイトトンボ♀です。
各地で最も普通に見られるクロイトですが、単体の成熟♀には意外に出会えず、画像がありません。連結態で比較します。
連結態を見れば一目瞭然ですが、♀のみに着目すると酷似しています。クロイトも黄緑色と青色の♀が普通に見られます。
上 オオイトトンボ 下 クロイトトンボの連結態。
<クロイトトンボ> 連結態 ♀は青色型
2011.6 都区内
見比べると肩黒条の太さがやや異なりますが、結局、眼後紋の大小、後頭条の有無で識別することになります。
3種と♂の違いが明確なクロイトトンボは、今回採り上げていませんが、以下は参考までに眼後紋が分かる♂と♀の画像です。
いずれも成熟前ですが、♀についても成熟個体よりクロイトの特徴が捉えやすいようです。
クロイトトンボの記事は14年6月、クロイトトンボ属の残る1種オオセスジイトトンボの記事は14年7月に掲載しています。
<クロイトトンボ> ♂ 半成熟 胸部に青白紛が生じる前の個体
♀ 半成熟 静止
2009.7 埼玉県杉戸町
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