中津川以北 雪の木曽谷
落合川から坂下・田立・南木曽・十二兼・野尻と進む。
南木曽は昭和43年10月に三留野から駅名変更。坂下まで中津川市である。
落合川・坂下間6.1キロの複線化は、1110mの新瀬戸山、1138mの第1高峰山等3基のトンネルを含む下り線を建設。
南木曽・十二兼間5.5キロは、1485mの第1羅天、1325mの第2羅天等4基のトンネルがある上り線を建設した。
前者は43年、後者は44年に完成した。
坂下・田立間2.8キロの新上鐘山、田立・南木曽間6.3キロの2551mの島田、1015mの兜トンネルの3基は複線で建設。
ゆえに坂下から南木曽間の複線化は遅れ、48年の塩尻電化直前の完工であった。
田立駅は坂下寄りに移設、田立・南木曽間は旧線から離れた別線である。落合川から南木曽間は撮影機会がなかった。
45年3月6日、雪の落合の峠で撮影後、中津川10:36の松本行827レに乗って野尻に向かった。
DLなので度々移動に利用した列車、50分程乗り11時半頃到着。車窓から下見した場所を念頭に十二兼を目指した。
十二兼・野尻間3.7キロは単線区間である。この日、この区間が中央西線の最後の撮影になった。
下り、上りの急行をやり過ごすため827レは野尻に10分以上停車する。駅を出ると下り急行が入線してきた。
キハ91系下り803D急行"きそ"4号の後尾から 右奥に58系上り804D急行"きそ"2号が交換待ちで停車中
1970.3 野尻駅
雪を踏んで約30分歩き、街はずれまで来て下り貨物を待つ。ここから野尻までは20‰の上り勾配である。
2時間以上前、中津川・落合川間で撮影の669レが坂下で約1時間停車して12時10分頃に通過する。
S字カーブの先に姿を見せ、期待どおりの爆煙で坂を登ってきた。
D51-249[中]牽引の下り貨物669レ
約40分間列車が来ないので歩を進める。S字カーブに到達して上り勾配を来る下り列車を待つことにした。
12時50分になる頃、この区間にトンネルはないが、前照灯を点灯してDC急行がきた。
キハ58系下り2801D急行"赤倉"
13時頃、2駅先の大桑で下り急行と交換した上り貨物列車が坂を下ってきた。
半戦時型煙室戸上部切欠き、変形ドーム 長工式デフD51-862[木]牽引の上り貨物656レ
回送のC56を連結
南木曽を過ぎると谷が深まり、冬の天候もがらりと変わる。体の芯まで冷え込むこの日、突如視界を遮る吹雪になった。
吹雪ピークの頃、突風のなか13時10分頃の下り臨時貨物6671レを待ったが、来ない。無情にも運休であった。
上り1802D急行"ちくま"1号、DLの830レは見送って一時避難することにした。
1時間程して吹雪が去って谷に日が射し込む。一転して逆光に悩みつつ十二兼14:20発の下り旅客列車を待ち構えた。
列車は5分遅れで、回復運転で速度を早めたD51が16.7‰勾配を駆け上がってきた。
D51- 274[中]牽引の下り長野行829レ
しばらく歩いて、15時過ぎに来る下り貨物列車を待った。16.7‰の連続勾配を素晴らしい煙を吐き上げてやって来た。
この日一番の煙。朝の中津川・落合川間で後補機を務めていた851号機の牽引であった。
煙室戸上部切欠きのD51-851[中]牽引の下り貨物653レ
15時15分頃、野尻で下り貨物と交換待ちした上り貨物列車が坂を下ってきた。
D51牽引の上り貨物694レ
十二兼に近い谷を見下ろす地点に来て十二兼で上り貨物と交換する下り貨物列車を待ち、山を背景にして撮影できた。
この時間帯は1時間にD51が4本通るので、極めて効率がよかった。
D51牽引の下り貨物673レ
1970.3 十二兼・野尻
十二兼に到達。南木曽・十二兼間は前述のとおり複線化完成後ですでに複線運行。上りの新線は大半がトンネル区間である。
16:00発D51重連牽引の上り旅客が発車。本務機は黒煙を上げ、この先が下り勾配とは思えない力強さであった。
D51-267[中]先頭のD51重連 上り松本発名古屋行832レ
1970.3 十二兼駅
旧線の十二河原トンネル坑口まで南木曽寄りに数百m走った。
上り旅客と複線区間で行き違う十二兼16:10発車の下り旅客列車がくるまで数分しかない。
南木曽・十二兼間は最大20‰の上り勾配が続く。山々にドラフト音が響きやがてトンネルに入る汽笛が聞こえた。
緊張の一瞬。爆煙とともにD51が181mの短いトンネルから飛び出した。この区間で撮影した唯一の写真になった。
この後、16:53上り名古屋行普通気動車で帰った。厳しい雪中の撮影行であった。
D51-777[中]牽引の下り塩尻行831レ
1970.3 南木曽・十二兼
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