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萌ちゃん編『明日カノ』言いたい放題・その6。

2021年10月10日 | 言いたい放題
【最後の最後。第8巻後半】

をのひなおさんの大人気漫画『明日、私は誰かのカノジョ』第四章萌ちゃん編にネタバレ配慮せず言いたい放題記事を書いています。

これで最後の最後…萌ちゃん表紙の第8巻後半です。

・萌ちゃん編『明日カノ』言いたい放題・その1。

…第5巻分。

 あとおそらく萌ちゃん初登場の2巻にもちょっとだけ。

・萌ちゃん編『明日カノ』言いたい放題・その2。

…第6巻分。

・萌ちゃん編『明日カノ』言いたい放題・その3。

…第7巻前半分。

・萌ちゃん編『明日カノ』言いたい放題・その4。

…第7巻後半分。

・萌ちゃん編『明日カノ』言いたい放題・その5。

…第8巻前半分。

全部読んでトータルで言いたい放題なので、読み終わった人向けかもしれません。

ネタバレ嫌な人はお気をつけくださいね。

【寂しい愁いを含む瞳…萌ちゃん…】

最後の最初に、古い古い歌をひとつ…。

青い芽を吹く柳の辻に

花を召しませ

召しませ花を

どこか寂しい愁いを含む瞳いじらし

あの笑くぼ

ああ東京の花売娘

(略)

粋なジャンバーの

アメリカ兵の影を追うよな甘い風

ああ東京の花売娘


岡晴夫さんの『東京の花売娘』の歌詞です。

有間しのぶさんの名作漫画『その女、ジルバ』でも出てくる。

重要人物の一人が戦後、親も兄弟も亡くしたった一人で飢えきって生きていた中、その類稀なる美貌を見出されてしまいヤ○ザに騙され金持ち相手に生花を売るという花売娘の仕事につくが、それは精神も身体も奪われ奪われ、自分には少しのお金も入らない過酷な肉体労働であった…というエピソード。

(花売娘、という仕事は歌を真似して後に使われた呼称)

『東京の花売娘』は第二次世界大戦終戦後の1946年に出来た歌だそうで、その意味がしっかり明示されたかは不明ですが、色々来るもののある歌詞ですよね。

私は妙にこの歌が萌物語にかぶるのですよ…。

悲しげな瞳、けなげな微笑み…うううう

もう、花園神社でキスされた後の萌ちゃんはずーっとずーっとボロボロです。

あの刺激、高揚感で

「楓のバースデーお祝いするから!」

とテンション爆上げになったものの、刺激は一瞬。

生活は毎日毎日積み重ねるずっと続くものだ。

萌の生活はもう苦がほとんどになってしまったんだよね…過酷な肉体労働、あれもこれもどんどん削られていって、大学に行くエネルギーもなくて、退学して。

日常はあまりに大きい。

もう、楓と会ってる時間すら笑えないし、あの恍惚とした

「私は主役になれる。

 味わったことない、こんな高揚感…」

はない。

かつての居場所・トラップからのメッセージに

「今更戻れるわけない…」

と涙ぐみ、仲が良いのであろう実家のお母さんのメッセージで涙が止まらなくなってしまう…。

なんという痛々しさ。

みっこさんのメッセージだって営業じゃん、金払わなきゃ成立しない関係じゃん、という声もあったそうですが。

私は

「いやー額が違いすぎて比較できませんよ」

と思うなあ。

トラップの常連さんだったときの萌はちゃんと学業も生活も破綻してなかったわけだから。

愛だと私は思いますよ。

自分たちの仕事にお金を払っていただけるって、ほんとにほんとにありがたくて尊いことですからね…。

【号泣事件】

辛いときは辛いことが続く。

精神が弱ってる時は、小さな刺激でも心が大怪我するような状態だからだ。

ゆあちゃんもそうなんだけど、彼女は攻撃的な要素でそれが漏れる。

大声、金切り声、攻撃的な言葉、(非力とはいえ)暴力など。

萌の場合は、ゆあと同じ繊細さんでも自責型のようでひらすら内心で自分を責めているように見えた。

そんな状態だったから、号泣事件が起きてしまうのですね。

お客さんのかけた言葉はけして素敵な言葉じゃないけれど(笑)全然萌自身を攻撃した言葉ではないと思う。

だってあれ、一種のごっこ遊びじゃないですか。

でも意識的にも無意識的にも萌は

「親を悲しませて、もうどうしようもない。

 私のせいで私のせいで。
 
 もうママに顔向けできないよ」

と四六時中自責していただろうから、その辛い言葉がたまたま実際に自分にかけられてしまった。

そこが傷口になり、あらゆる辛さ・悲しさ・納得できない、絶望…が号泣として溢れ出てしまったんじゃないだろうか。

あそこでキレて殴るようなお客さんじゃなくてよかった…。

萌の真面目な仕事ぶりがきちんと信頼されて、罰金もなくてすみましたしね。

わかりにくいけど、実はあの事件の顛末は萌の誠実さがちゃんと良いカルマとなって返ってきていると思う。

そして、この日目標金額を達成。

2ヶ月頑張って頑張って貯めたお金、130万円。

一晩で…数分で楓(から、お店)に消えてしまうお金。

お金は大切なものだ…。

泣きながらお金を抱きしめて眠る萌の描写はくるものがあります

【キラキラ金曜日!!】

バースデーイベント当日。

萌は0時ぴったりにお誕生日おめでとうメッセージを送っているけれど、多忙な楓は17時近くになって返信するのが前ふり。

美しく着飾っても(このときのワンピースは新品?表紙と同じワンピース)、楓からのメッセージを読んでも、萌はずーっと悲しげな瞳。

笑みはない。

寂しい愁いをふくむ瞳

仕事熱心な楓は他の仕事仲間が

「あんなに落とす金が少ない客に?」

と思っているであろう萌にちゃんとプレゼントを用意してくれてて職業としては素晴らしいのかもしれないけど、前にも書いたとおり

「その可愛いコートに似合う手袋」

ではなく、安値のコスメです。

ディオールの紙袋はコスメ部門とアパレル部門違うはずだし、大きさからして小さなコスメでしょう。

最有力予想は5千円でお釣りがくるリップコスメ。

…いや、ほんとに…5千円以下が悪いんじゃないですよ。

むしろ高い。

でも、萌の払ったお金が大きすぎるでしょうよ。

そしてそのお金を萌が調達する手段は過酷な肉体労働で、そのストレスで大学も辞めたわけで…。

ゆあとの出会いに始まる楓への熱烈片想いメモリアルが脳内をキラキラかけめぐったところで、もうあの高揚感はどこにもない。

「早く会いたい」

とメッセージを送っても全然嬉しそうじゃない。

からの、

「桃花ちゃん俺も早く会いたい」

ですよ!!!

彼女は、萌!!!

このあとの彼女の気持ちとの折り合いのつけ方は、やっぱり誰も悪く考えられない優しい人なんだな…と思い知らされる清らかさ。

清いゆえの苦しみ、悲しみ。

誰か助けて…と願った萌は、すぐに助けが舞い降ります。

ええ、キラキラ金曜日ですよ(笑)。

あのネタ私のとある知り合いが一時期毎週金曜日ずーっとずーっと発信してまして、

「本気で返すようなネタじゃないけど地味に不愉快なんだよな」

と思ってたんですが、明日カノのおかげで不快さがなくなりました

ドラァグクイーンさん綺麗。

みっこさんのときめき笑顔可愛い。

翼くんの照れ顔可愛い。

アレンさんはプロらしい涼やかな微笑みが素敵。

泣きながらゲラゲラ笑って、その湧いてきたエネルギーで萌はトラップへ行きます。

「大恋愛してきたよ」

という言葉でもうこの恋は終わりだとわかりますね。

あっさりしてるけどすごく素敵なストーリー展開でお見事でした。

良かった~

神編・神回と称えられる理由はここにありです。

楓は、真面目で一途な萌なら大丈夫…っていう気の抜けが名前間違いやバースデー直前の萌の不安定さをシビアに受け止めなかった、というのにつながっていたんでしょうね。

楓は萌どころかお客さんに恋愛感情・特別な選別は一切ないと私は思うけど、一切お客さんの悪口を言う場面が描かれない点から考えても

「お客さんはみんな大事です」

なのではないかな。

楓を支える野心はできるだけ早く経営側にまわりたい、もっと稼ぎたい、だと私は感じたので細かいところで抜けが出てしまって萌の救済につながったのだろうな、と。

【優愛が萌の友情を拒んだ理由は】

萌がゆあにわざわざ

「ゆあちゃんとずっと友達でいたい」

と言ったのは、萌がどれだけゆあを大切に思っているかの証明でもあり、同じ境遇にいたからこそ

「それは望めないことだ」

と予感していたからでしょう。

ゆあが友情継続を拒む場面は、私の友達とか

「すっごく怖かった。

 ヒュッてなった」

と怯え切っていた。

私は全然怖くなかった。

ああ、こう出たか、って感じ。

ハルヒとの最後と少し同じで、心をさっと凍結させて考えるのも感じるのもやめる。

そして自分を守るために

「ぬる。

 冷めたわ。

 時間無駄にした」

と逃げ去る。

萌が

「ごめんね…」

とボロボロ泣くのは、ゆあの内情を全部悟っているからだと思う。

私には(私には、ね)

「ごめん、私はもうこの地獄で一緒に歩いていくことはできない」

「裏切り者。

 ゆあは行かない。

 ぜったい地獄から出てかない

 …這い上がろうと頑張るのも、助けて欲しいと願うのも全部疲れた」

みたいなやり取りに感じられたよ。

(この作品内では地獄ではなく天国って言葉が使われてるけどさ)

奪われて、奪われて、どこまでも踏みつけにされて。

自力で立ち上がるのも助けてと叫ぶのも疲れた…みたいなね…。

をのひなおさんのインタビューを読んで

「ああ、やっぱりそうだったんだな」

と思いました。

楽だし、頑張るのってつらいから。

一緒に病んで、「つらいつらい」とやるのはとても気持ちいい。

ヤダっていうか寂しいんだと思います。


この部分。

こちらの記事です。
  ↓
※人類は“ポジティブメンヘラ”に進化すべきか? 漫画「明日カノ」作者×「ミオヤマザキ」mio対談(ねとらぼ)

あと、違う記事では

「あ、やっぱり私がこの作品に描かれてる気持ちは本当だなって思ったの当たってたな」

と思いました。

こちら。
  ↓
※“生きづらい”女の子たちのリアリティ(音楽ナタリー)

「愛されたい」



「うまく生きられない」

がテーマか…日本女性の根幹的な問題な気がする。

でもね…ゆあは萌が好きだからこそ傷つけることなく去っていったんだと思う。

女の子同士の絆。

この作品の一番強力なテーマのひとつな気がします。

【振り返らずに】

そしてエピローグ。

202○年の新宿で、素敵な美容師さんになった萌は年間売り上げナンバー1(ついでに二重整形)になった楓の広告トラックを見かけるけれど、泣きも笑いもせず振り返らずに自分の仕事=生活。Lifeに向う、という美しい場面。

先に書きましたが萌が美容師になったのはリナと優愛との友情からだと私は信じてる。

揶揄されたお団子ヘアもさらにかわいく進化させて楽しめるようになった、黒目を大きく見せるコンタクトがなくても大丈夫…いろんな要素がぎゅぎゅっと入っています。

良かったねえ…としか言えないよ。

良かった良かった

最後の萌の心はをのさんが書いた言葉なのかな…ないほうがより美しくまとまった気がするのだが。

でもいいラスト。

本当に良かったです。

女の子としては初めての希望に溢れた結末なので、表紙タイトルは文字が上がっていく横書きなんでしょうね。

翼くんが先にそうだったけど。

縦書きだと文字の進み方は下へ、だけどこの横書きは右肩上がりなんですよね。

萌ちゃん、おめでとう!

…とこれで言いたい放題終わりです。

あー良かった良かった。

書ききれた~。

ラストシーンは2022年から2029年の間ですが、ホントに2029年にマスク無しで外出できるようになるのかどうか。

2021年の今は全く確信が持てないな。

めずらしく新コロ怖いを、厳格にではないとはいえ漫画内で描いた作品でもあり、今を生きる物語なんだなと実感します。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます

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