白い病
岩波文庫
カレル・チャペック 作
阿部賢一 訳
コロナウィルスの勢いがますます凄くなっています。
これから私たちの生活、どうなっていくのでしょう。
年明け早々、心配です。
昨年、「白い病」という本を読みました。
チェコの作家、カレル・チャペックが書いた戯曲です。
150ページほどの短い本です。
すぐ読めちゃう。
でも、内容は凄く重いです。
特にコロナ禍の今の世界情勢を考えると、とても、ひと事とは思えません。
内容は、、、
50歳前後で発病し、体が崩れていく恐ろしい未知の伝染病、白い病が世界に広がっています。
特効薬が見つからない中、貧しい人だけを治療する町医者ガレーンは、特効薬を見つけたかもしれないと、
大学病院に臨床実験をさせて欲しいと頼みます。
最初乗り気ではなかった枢密顧問官ですが、渋々認めます。
結果、その薬は目覚ましい成果を出し、その薬で治療した人はみんな回復していきます。
その国は元帥が独裁者となっていて、戦争を始めようといるのですが、その元帥が
発病していまいます。
治療を求められたガレーンは、一つの条件を出します。
それは、元帥には受け入れがたいものでししたが、元帥の娘は父の命を救うために
その条件を受け入れることを、ガレーンに伝えるのですが・・・
猛威を振るう、未知の伝染病に対して、何の力も持たない、貧しい人々のために薬を
開発し、治療するガレーン医師と、そんな状況でも戦争を考えている政治家たち。
一介の町医者と国家権力の頂点に立つものの対峙が、ズシンときます。
なんだか、こんな状況下でも、オリンピック絶対開催と言っている、どこかの政治家を
連想してしまう。
そして、伝染病よりも怖いもの、それが人間、群衆である、いうことがじわっと迫ってきます。
カレル・チャペックというと、「長い長いお医者さんの話」とかありますね。
宝塚でやった「不滅の棘」という作品の原作である「マクロプロス事件」もそうでした。
ちょっと不思議な作風ですが、それだけに現実世界の矛盾を突いている気がします。
人間として、何が一番大切なのか、考えさせられる深い作品でした。
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