翻訳 朴ワンソの「裸木」74
264頁~267頁
私の一言で母の死に新しい意味が与えられて、居間に集まって座っていた女の弔問客は、粛然としてしばらく言葉を忘れた。
私の慟哭はおのずとすすり泣きに変化し、とうとう終わった。
そして母の死が私のせいだという考えからも次第に夢から覚めるように覚めた。
私はそんな突飛な考えのせいで慟哭をしたのか、慟哭をしたくてそんな突飛な考えを言い繕ったのかわからなかったのだ。
とにかく遅くとも幸いなことにその考えから完全に覚めた。そして少なからず当惑した。どうしようと私はもう一度また一つの死の言い訳をするのだろうか?
そんなことはできなかった。もう一度そんなことはできなかった。
私は首の長い女の人の優雅な肩で少し悲しい夢を見たかっただけなのに。悲しくても少し美しい、でも愚かな夢を見ただけなのに。
私は突然私の夢に、また私の夢を見る癖に嫌悪感を感じた。それは私が母の生前に母に抱いた嫌悪感とも似ていた。
私が母を忌避して憎悪したから、今後私は私の夢を忌避して嫌悪するだろう。
私はオクヒドさんの奥さんをよそよそしく押しのけた。そして周囲の人々がぎょっと驚くのを嘲笑した。
「ふん、ふふふ。私が今言ったことを真に受けましたか? 嘘です。まったく私がでっちあげた、真っ赤な嘘です。母が亡くなったのは私とは全く関係ありません」
「それなら、それなら。関係がなくなってしまって…」
彼女が、さっきよりもっと不憫そうに沈んだ声で、もう一度泣き出しそうな表情になった。
「私の母は実際私なんかと関係しないようにしていました。ふふふ…」
「わかったのでやめなさい。もちろんキョンアちゃんのせいなんだから。叔母様の命がそれだけだったのでしょう」
お姉さままで再び泣き出しそうになった。
「もちろん、そうでもそうでなくても、不憫だわ!」
大叔母のお祖母さんが私の上半身を抱いた。私は大叔母のお祖母さんを見つめた。そして私は、彼女も私の言葉を信じていないことがわかった。彼女は私の初めの言葉、母の死が私のせいだということだけを信じていた。
他の人々も同じだった。〈お姉様〉も、オクヒド夫人も、父の従姉妹も、父の従兄弟の夫人、彼女の他に遠縁の知らない親戚も、ことごとく私の始めの言葉だけ信じて、後の言葉は私の良心の呵責がもたらした、悲しい嘘とわかっていた。
彼らは一様に悲しい話が好きで、ただ一人の喪主である私を思いっきり悲劇的にしておいて、心ゆきまで同情したいという様子がありありと見えた。
私ではないとありったけの声で叫んだ。母の死と関係ないと叫んだけれども、そうすればするほど私は母の死と深く関係を結んでいった。仕方なく私は自分が捏造した事件に閉じ込められてしまったのだ。
私は床に狂ったように寝転びながら、私じゃないと叫んだが、そうすればするほど色々な人の同情を徐々に受けて、催涙剤のように色々な人を泣かせるばかりだった。やむを得なかった。
数日の間の不眠と定刻に食事ができなかったせいで、さらに衰弱した私は、虚空と相撲を取るような寝返りで、疲労困憊してしまった。
お姉様はあたふた私のために小豆粥を炊いて、嫌がる私に無理に食べさせた。
「喪主が度を越して悲しがって。ちぇちぇかわいそうだわ」
「そうじゃないですか? 母の悔しさまでも亡くして、今は天涯孤児だし」
「孤児、どうして? 伯父がしっかり生きているのに」
大叔母のお祖母さんがおだやかにたしなめた。
私は気力が尽きたまま横たわり、度を越して哀惜している喪主で、また一つの死の言い訳を諦めて甘受した。
そして私は全く別な意味でまた一人の私になっていた。
意外にもオクヒド夫人とお姉様は互いによく知っている間柄だった。しかしそれは私にとって意外なだけで、彼女達が同じ故郷で、またオクヒドさんとテスのお兄さんが竹馬の友だとすれば、当然のことだった。
ただ私は、彼女達の印象がとてもかけ離れていて、彼女達が互いに喜んで共通の話題を持ったということが何度も変だと思った。
オクヒド夫人は頻繁に呼ばれる〈お姉様〉という呼び名のいきさつと、お姉様がこの喪中の家でうっとうしいことを一手に引き受けてしきるようになるいきさつを尋ねるよりほかにしようがなかった。
「まあ、今になってもわからないんですか?」と言うのがわからないよりほかにしかたなかった。あなたの夫も私の夫もみすぼらしくて、野に種を5合まこうとろくに会うこともなく暮らしているから。義弟がいるじゃない? それで当たりだわ。それで、この洟垂れがだからもうしっかりした花婿候補になって。ふふふ、キョンアちゃんと婚約した間柄」
大叔母、父の従姉妹、皆ひそひそとこの言葉をやり取りした。その晩遅く、上京した伯父夫婦に新しいニュースは伝えられて、皆むしろうまくいったという顔つきだった。誰もこれから私の責任を負わなくてもいいからだ。
それから〈お姉様〉は本当に丁重なお姉様待遇を受け始めた。
ただコミカルに聞こえていた〈叔母様〉〈お姉様〉の呼び名が実は私をそれぞれで厳然と成り立たせていた。
幸運にも彼らはふいに婚礼という現実的な問題を持ち出していても、今が喪中だということに気づいて、口をつぐんで自重している様子なので、今日中にどのような具体的な合意も成り立たなかっただろう。
とにかく私はこんなことをはっきりと聞いたり見たりしても、拒否したり説明したりする気力がなかった。私はあまりにも自分の気力を無駄に使ってしまったのだ。言い訳を次々にすることにした。次々にしても遅くなかっただろう。
母を凍った地面に、それでも父と兄達の横に横たえた。そしてやむなく古家の主人になった。
三度目の祭祀も終わって、私の去就だけを決めれば、伯父は私の家のことをある程度ひとくぎりつけるつもりなのだろう。
この非常に広い古家に女の子一人置いておくこともできず、釜山へ連れていくか、お姉さまに任せるか、私を処理する方法は2つだった。
あとの方法は〈お姉様〉が強く望んだもので、私が〈お姉様〉のお宅―私には嫁ぎ先になるはずだがーに滞在するようになることは、実質的な婚約を意味するはずで、実は伯父もこれを望んでいた。
実際に自分で連れて行ってみたところで、一時的な処理になるだけで、この機会に永久的な処理をしたがっている気配がありありとしていた。
しかし私は古家に残ってセールス・ガールの生活を続けることを選んだ。
お使いの子供まで手に入れて、私は少し寂しくても少しは幸福なこともあった。
オクヒドさんは再び肖像画を描いて私には付け加える必要のないほど優しかった。彼に頼めばいつでも彼によりかかりながら、崩れた屋根を淡々と仰ぎ見て、長い長い晩冬の街を寂しくなく、寒くなく、私は歩いて帰ることができた。
私は彼に崩れた屋根の耐力を遠い昔話のように聞かせることもできて、時々広い板の間まで招き入れて、父が喜んで座っていた古い安楽椅子に彼を座らせて、台所で香ばしいコーヒーを沸かすこともできた。
彼が北窓の外の木々を見て、無心にタバコの煙を吐きながら、お茶を運んできた私を見て、にこっと笑う時の喜びを何に代えられるだろうか。
「コーヒーが好きですか? 生姜茶が好きですか?」
「両方とも好きだよ」
「両方は困ります」