池上正太郎の「剣客商売」の時代劇のセリフである。引退し、人生の始末をつけていくには、虚飾を排することである、というのだ。不便なわび住まいと、小さな消費で最大の満足を得る「足るを知る」消費生活がそこにある。しかし、私はそれと真逆のライフスタイルを長年続け、欲望を追いかけ、いつも不満だらけの精神に支配されてきた。 . . . 本文を読む
「まあ、上がって一杯やれ」私の知っている農村では大体そんな雰囲気で地域社会がつながっていたと思う。今はどうか知らないが、同じところに先祖代々住んでいる人たちは、先祖の土地と自然と付き合う経験知恵というハード、とソフトを受け継いで守るしかなかった。
農家には、建築してから100年のものはざらにあり、庭先には菜園があり、これにつながる大きな土間付きの玄関と、その脇を上がったところに囲炉裏がありこれは外部世界と意識的につながりを作る空間であった。
玄関は人々を歓迎し、廊下と土間に続く囲炉裏のある空間は、仕事場、居間、接客の多目的部屋だ。この多目的性が、生産と生活が分離されていない農村の居住に欠かせない条件だった。 . . . 本文を読む
同窓会が開かれるたびに、二次会では父たちはこのように頷き合う。『お父さんはわがままよ』と子供たちになじられてほろ苦い人生を送ってきたよね。
朝の散歩で親しくなった、Kさんも Nさんも、私と年齢や経験は共通している。真面目で実直、寡黙な人たちだが私だけがお話しに火を付けている。
今から見れば私たちの30代、40代は人生を暴走していたようだねと . . . 本文を読む
過日、十日町で郷土料理をごちそうしていただいた奥様方から聞いたお話です。ショウガらしい妙味あふれる、歯ごたえのあるチップスがあまりにもうまく美しいので質問しました。
「これ、もしかしてショウガ?」
「この方が教えてくださった百姓料理です」とリーダーがある老婦人をさしてこう言いました。
「根ショウガを繊維に沿って千切りにするんです」
「ほう」
「ぬる湯につけてあくを抜きます。」
「そして?」 . . . 本文を読む
いつの間にか五月も終わる。バタバタと日時が経って、スケジュールをこなすのに少々フウフウ言っている昨今だ。
多摩川を散歩コースに選んで、今日はちょうど1年経ったところ。毎日2時間の散歩は積み重ねると1年間で350万歩、2000㎞と大変な数になっている。これをもう一年続けられるか否かわからないが、一つの物差しとして扱うつもり。
例年この時期はトマトの会が農業体験ツアーを行う。今年は十日町市の山奥へバス旅行する。新潟まで往復2000円の格安の高速バス〔グリーンライナー号〕の便があり、一行は温泉につかって帰る。今年は今週の土曜日、日曜日に予定されている。
ここにはトマトの会が委嘱している [あなたの野菜畑]があり、 世界のトマト、昔ながらのトマトを植えている。その見学も兼ねた味噌作り体験、山菜採り体験、農業体験などをする。 . . . 本文を読む
5月26日に、女楽に感動した。昼過ぎに多摩川を出発して、神保町に出、都営地下鉄で市谷に出、そこから麹町まで歩き、セントイグナチオ教会、上智大学を経て、紀尾井町へ。雨上がりの四谷~市ヶ谷は上手に歩けば、武家屋敷の跡を継ぐ緑が美しく、落ち着いた景観に気分は爽快だ。
目的地は紀尾井小ホールである。
ブラジル公演に協力したので親しくなった小川夏葉さんが「女楽」の演奏会に招待して下さった。彼女は和文化交流普及協会の理事長としての各国で「女楽」公演を行い、日本が外国の事物を積極的に取り入れながら模倣を排して一段と高位の文化を創造してきた事実を、日本の古典芸術を通じて海外に伝える活動を長年続けている。
女楽とは聞き慣れない言葉である。言葉のイメージは、少々仇っぽく品を欠くものに感じるが、彼女が目指すのは、女の立場、見方から見ての身近な感性を拾い、文献の残る平安時代文学など宮廷の人間模様を短歌、管弦楽、薫き物、催馬楽などの古芸術を組み合わせた立体的に舞台芸術に仕立てている。 . . . 本文を読む
区役所の健康増進課から各種の受診の案内が来る。定期審査、がん検診、肺炎予防、インフルエンザ・・・。それぞれ気になるので目立つように机の前にぶら下げておく。これらにまともに対応していると、体のことばかり考える毎日になりそうだ。健康診断は、自分の病気を探しに行くことだから、誰でも気が重いと思うが、検査結果がセーフの結果を得ると、名状しがたい安心感に包まれる。(写真は毎日飲んでいる自家製明日葉パウダー) . . . 本文を読む