私の知人、ブラジル移民に西村俊治さんという方がいらっしゃいました。
21歳で渡航し、刻苦精励されて大きな会社を立ち上げて、その上に農工学校も設立され、校長としても人々から尊敬されていた教育者ですが、時々お便りくださいました。その中からいくつかほのぼのとした「随筆」をシェアーします。
題:小鳩と蜂雀
妻がまだ元気な時、さも重大なことを見つけたように私を引っ張ってベランダに吊るしているある羊歯(しだ)を指していました。これを見ますと、かわいい小鳩が親子ともども巣から小さな丸い目をしてこちらを見ていました。それを見て、私は何とも言えない安らかな気持ちになりました。
それから一週間ほどいますと、古巣には何も見えず「飛び立ったな」と喜びまた少し寂しい気持ちになりました。
それからさらにしばらくしたある夜、そっと電気をつけますと、2羽の小鳩が巣から出てベランダの椅子の上に寄り掛かっていて「ああ、帰って来てくれたのだな」とうれしくなりましたが、翌日、2羽ともお隣の猫に食べられたことがわかりました。少し驚かして2羽を巣に入れてやればよかったと後悔しました。その後、さらによく見ると木の枝や庇の下に、花を入れ籠の中に、小鳩の巣が見つかりました。たとえ猫に食われても結局は鳩は自然に増えています。やはり自然に任せ、あまり手をかけるべきではないと思いました。
私の学校事務所の前庭には年中いろいろな花が咲きます。夏季には数十匹の鉢雀が次から次に軒に吊るした瓶に水を飲みに来ます。こんなにたくさんいるのかと思うくらいです。茂った樹陰に小さな、小さな巣を作り小さな卵を産みます。まるで天国にいるようでうれしいことです。
山代勁二注:私は、何度かブラジルの農村を歩きましたが、移民の方々から多くのことを学ばせていただきました。それは日本から移民した人たちの自然を見る観察眼と親しみの気持ちでした。写真は、西村さんのご夫妻。
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