私は、33歳までは酒をほとんど飲まなかった。時々止むえず飲む機会もあったが飲酒で愉快になるというより、顔が赤くなったり、足下がふらついたりするので飲めない方であったといったほうがよかったかもしれない。酒が嫌いではないと思い始めたのが同じ頃でよく職場で業者の接待を受け始めたころだった。その頃会社の帰りに同僚とおでん屋などに行くことぐらいのつきあいは月に一二度するようになった。もちろん休日に飲むことはないし晩酌などはしなかった。だから二日酔いと言うことは知らなかった。現在までも実は二日酔いという経験はほとんどない。しかし、そんな私がこの年になって「お父さんはいつも赤い」と娘に言われるほどのアル中?になった。どうしてなのかと自分でいぶかっているのだ。現在の酒量は中ビンのビールに換算すると毎日2本程度。そんなに多いとは言えないのだが。さらに酒の種類はビールがほとんどである。寒くなると日本酒(あつかん)を少々と言うことになるが、これは飲み過ぎると夜中に喉が渇くので多く飲めない。焼酎はあまり好きではなく、ウイスキーはたしなむ程度、もちろん焼酎党でもウイスキー党でもない。ワインも滅多に飲まないし、ブランデイも飲まない。しかし、45歳くらいからビールが欠かせない存在になった。夕食時にビールがないと食事に入れないような気がするようになった。そして、60歳ぐらいになるとなんとビールは昼間ぐらいからよく飲むようになった。顔をしかめる家族を尻目に、シュパッという音を立てて昼間に缶ビールを開け放つ日もよくある。そんな不摂生がしばらく続いたせいか決まり切ったように医師の警告を受けることになる。50歳前後の時は、内科の医師にかかっても、ビールの二三本は適量だから気にかけなくともよいといわれ、いい気になって飲んでいたが、数年前に検査で体重増が警告され、特に脂肪代謝の異常が見られますと言われたときには、これは生活習慣病(メタボ)な予備軍だとがっくりとなったもんだ。ところがそれに触発されて「よし、しばらく飲まないことにしよう」なんて決心し家族に告げて一日二日を飲まないでいると、家族はそれを賞賛するのではなく無視する。そこで気力が萎えて缶ビールを空けると、たちまちブーイングが耳に届く。「今日は飲まない日なんでしょ?」と。そこで私はにやりと笑い「今日はあんまり飲まない日だよ、あんまりね」応酬する。半ばやけくそ気味に。(続)
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