まず練習場は大聖堂だと思っていたが少し違って、学校の講堂のような場所でその一角のピアノ置き場周辺に集められた。隣ではなにやら別の子供たちのグループが体を動かし、嬌声を上げて活動しているので落ち着かない。誰がどの程度参加するのか、どのような「人種」が集まってくるのかさっぱり予想がつかなかった。演奏に誘った娘も初めてに近い経験らしく、はっきりしないことが多い。聞くところによると、本番の12月14日までに2度ほど練習しなければならないらしいが、それも定かではなさそうだし、参加出来る人は誰でもokで、そんなに上手じゃないから安心して参加してくださいというニュアンスが伝えられていた。それに安心していたのだがいざ集まってみると予想していたほどの人数ではなく、男声はテノール、バスのパートとを合わせて7-8人といったところで、予想をかなり下回り、私のように初体験のものにとって少々気の重い雰囲気がいきなり出現した。さらに練習をしていくうちに、歌う個所が重点のみのつまみ食いである。音階の確認から入ると考えていたのにいきなり仕上げの練習である。 これにはまいった。私のように初めて楽譜を持つ人にとってはとてつもなく大変なのだ。私に異様な緊張が走った。ワイフもきっと同じだったのかも知れない。これは後から聞いたところでは、コーラス参加資格は「ハレルヤを歌ったことのある経験者」という条件だったらしい。まだ「らしい」という範囲でしか確認していないが大切な事前インフォーメーションが欠落していたわけである。練習後にワイフもかなり面食らったことを告げながら「私は辞退するかも知れない」と気の弱いことを言い始めた。「とにかく、滅多にないことだから3人で練習しよう」ということになり、寸暇を見つけて3人で声を合わしてみた。その寸暇がなかなか見つからないのは困った次第ではあったが。しかし二度ほど練習出来た。兄が不在でテノールが足りないだけの練習だったが、これで少しは感じがつかめた。幾度も幾度もピアノに合わせて声を出したので、おそらく次の練習時には、(本当は経験者じゃないが)経験者だよと偽装できそうだ。12月は、我が家の英語サロンでも恒例のおクリスマスの集いもある。新年には親戚の集合があり、歌う機会もありそうだ。それらの出し物としてハレルヤが定番として歌えれば大変すばらしいことだ。そしてふと思ったことだが、先年亡くなった敬虔なクリスチャンの義父が毎年営んでいたクリスマスパーテイでこのような演奏を試みていたらどんなに喜ばれたであろうかと思うとすこし切なくなった。(続)
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