学食にて、雪と静香は共に昼食を取っていた。
「見せて下さい」

「‥‥‥‥」

そう言って手を出す雪に、静香は顔を顰めながらも問題集を差し出した。
「何よ食事時にまで‥」「私も試験があるんで。早く終わらせましょ」

「つーか学食クソまず」「お金あるなら他行ったらどうです?」

愚痴る静香に苛つきつつも、雪は律儀に彼女の宿題をチェックする。
「全問正解。別段直す必要もありませんね」

「佐藤先輩が全部教えてくれたんですか?」
「ちょっと!全部自分で解いたのよ自分で!
やってもらったんじゃないっつーの!」「ギャッご飯飛んだ」

飛び散ったご飯粒を払いつつ、雪はその課題に隈なく目を通した。
途中の式も解答もそれなりに出来ている。

「なんとなく理解はしてます?」
「ぜんぜん」「‥‥‥」

静香は溜息を吐きながら、相変わらずグチグチと愚痴を零した。
「ていうかさぁこんなことさせるアンタも会長も‥」
あ、髪の毛にご飯粒ついてる

「なんて無駄なことをー‥」

静香の髪についたそれにそっと手を伸ばした、その時だった。
ガッ!


目にも留まらぬ早さで、突然静香は伸ばされた雪のその手を掴んだ。
瞳孔の絞られた瞳の中に、得体の知れない感情が凍る。


一方雪は突然のことに目を見開いて固まっていた。こんな静香の姿を目にするのは初めてだった。
バッ

我に返った静香は掴んでいた手を突然離し、きまり悪そうに口を開いた。
「もぉ止めてよ。誰に向かってこんなことしてると思ってんの?」

静香自身も戸惑っているのが見て取れる。
「‥‥‥」


雪の手首には、掴まれた時の指の跡がうっすらと残っていた。
まるでそれは何かの爪痕のように、雪の心に何かを残す‥。

不意に鞄の中で着信音が鳴った。
見てみるとそこには”先輩”と表示されている。
「!!」

雪はヒッと息を飲むと、すぐにその電話を取った。
「先輩?!」「今どこ?大学来てるんだけど」
「えっ?!大学?!」「ナッ?!」

突然の淳からの着信。雪も静香も動揺する。
「い、今ですか?!」「はは、毎回ビックリするね」

早く早く、と雪が急かし、静香は真っ青になって荷物をまとめた。
その間にも淳は雪の居場所を持ち前の鋭さで突き止める。
「周りガヤガヤしてるけど、学食?」「え?え?あ‥はい‥!」

しまった‥。
「ちょっと!何ハイハイ返事してんのよ!」「つい‥」

「今行くよ。近くに居るから」「は、はい!待ってます〜」

こうしている間にも淳は学食に向かっている。静香は急いで身支度した。
電話を切ってからも、二人はバタバタと痕跡を消すのに大忙しだ。
「食器下げて行って下さい!」「なんで?!」「私一人で食べてたことにするから!」

そして静香がそこを離れたその瞬間、後ろから声が掛かった。
「雪ちゃん!」

「先輩!」

ギリギリセーフ‥。静香は壁に身を隠して肩で息をした。
「食べてからでいいよ」「もう終わりました!」

二人は淳が前を向いているのを確認してから、互いに向かってサインを送った。
”いつも見張っていますよ”と指を指す雪と、”フザケンナ”と中指を立てる静香‥。


そして雪と淳は学食から出て行った。
静香はそんな二人の後ろ姿を、壁の後ろからじっと窺っていた‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<爪痕>でした。
雪が手を伸ばした時、怯えたような静香の目が印象的な回でしたね。
静香の抱えるトラウマに雪ちゃん気付いたでしょうか。。
そしてモコモコダウンコートの先輩。いささかガタイが良すぎるような‥。

ま、いっか‥(←適当)
次回は<露呈>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は文章が途中で切れ、
半角記号、ハングルなどは化けてしまうので、極力使われないようお願いします!
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「見せて下さい」

「‥‥‥‥」

そう言って手を出す雪に、静香は顔を顰めながらも問題集を差し出した。
「何よ食事時にまで‥」「私も試験があるんで。早く終わらせましょ」

「つーか学食クソまず」「お金あるなら他行ったらどうです?」

愚痴る静香に苛つきつつも、雪は律儀に彼女の宿題をチェックする。
「全問正解。別段直す必要もありませんね」

「佐藤先輩が全部教えてくれたんですか?」
「ちょっと!全部自分で解いたのよ自分で!
やってもらったんじゃないっつーの!」「ギャッご飯飛んだ」

飛び散ったご飯粒を払いつつ、雪はその課題に隈なく目を通した。
途中の式も解答もそれなりに出来ている。

「なんとなく理解はしてます?」
「ぜんぜん」「‥‥‥」

静香は溜息を吐きながら、相変わらずグチグチと愚痴を零した。
「ていうかさぁこんなことさせるアンタも会長も‥」
あ、髪の毛にご飯粒ついてる

「なんて無駄なことをー‥」

静香の髪についたそれにそっと手を伸ばした、その時だった。
ガッ!


目にも留まらぬ早さで、突然静香は伸ばされた雪のその手を掴んだ。
瞳孔の絞られた瞳の中に、得体の知れない感情が凍る。


一方雪は突然のことに目を見開いて固まっていた。こんな静香の姿を目にするのは初めてだった。
バッ

我に返った静香は掴んでいた手を突然離し、きまり悪そうに口を開いた。
「もぉ止めてよ。誰に向かってこんなことしてると思ってんの?」

静香自身も戸惑っているのが見て取れる。
「‥‥‥」


雪の手首には、掴まれた時の指の跡がうっすらと残っていた。
まるでそれは何かの爪痕のように、雪の心に何かを残す‥。

不意に鞄の中で着信音が鳴った。
見てみるとそこには”先輩”と表示されている。
「!!」

雪はヒッと息を飲むと、すぐにその電話を取った。
「先輩?!」「今どこ?大学来てるんだけど」
「えっ?!大学?!」「ナッ?!」

突然の淳からの着信。雪も静香も動揺する。
「い、今ですか?!」「はは、毎回ビックリするね」

早く早く、と雪が急かし、静香は真っ青になって荷物をまとめた。
その間にも淳は雪の居場所を持ち前の鋭さで突き止める。
「周りガヤガヤしてるけど、学食?」「え?え?あ‥はい‥!」

しまった‥。
「ちょっと!何ハイハイ返事してんのよ!」「つい‥」

「今行くよ。近くに居るから」「は、はい!待ってます〜」

こうしている間にも淳は学食に向かっている。静香は急いで身支度した。
電話を切ってからも、二人はバタバタと痕跡を消すのに大忙しだ。
「食器下げて行って下さい!」「なんで?!」「私一人で食べてたことにするから!」

そして静香がそこを離れたその瞬間、後ろから声が掛かった。
「雪ちゃん!」

「先輩!」

ギリギリセーフ‥。静香は壁に身を隠して肩で息をした。
「食べてからでいいよ」「もう終わりました!」

二人は淳が前を向いているのを確認してから、互いに向かってサインを送った。
”いつも見張っていますよ”と指を指す雪と、”フザケンナ”と中指を立てる静香‥。


そして雪と淳は学食から出て行った。
静香はそんな二人の後ろ姿を、壁の後ろからじっと窺っていた‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<爪痕>でした。
雪が手を伸ばした時、怯えたような静香の目が印象的な回でしたね。
静香の抱えるトラウマに雪ちゃん気付いたでしょうか。。
そしてモコモコダウンコートの先輩。いささかガタイが良すぎるような‥。

ま、いっか‥(←適当)
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