![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/bd/2600ebc909a43fe4179d120e410740f7.jpg)
父はフンと息を吐くと、蓮に向かって言葉を掛けた。
「雪ばっかりと言うが、それは雪がそれだけ努力してるからだろう、バカモンが」
「アンタお父さん見てたら分かるでしょ?簡単に儲けようとすると簡単に失敗するのよ」
「なんだと?!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/0f/3276e93804a77df8b97de390ba93c4fe.jpg)
淳はその場に立ち尽くしたまま、問題を解決して行く赤山家をただ眺めていた。
自分が立つこの場からは、雪の表情は窺えない。
「とにかく親のことを心配する前に、まずは自分のことをきちんとやりなさい」
「あいっ!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3f/97/b2661b846c2345ac7c92b58ab0e6c5de.jpg)
雪の父は淳に向き直ると、息子の非礼を詫びた。
「助けに来てくれて感謝するよ。うちの愚息が迷惑を掛けたね。まったくお恥ずかしい‥」
「あ、いいえそんなことは‥。大変だったのは雪ちゃんですよ。
大事にならなくて幸いです。若気の至りというやつでしょう。あまりお叱りになりませんよう‥」「ああ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2d/c6/6070b7ec860c61ddaad0f4f65b6a72c8.jpg)
その隣では、蓮と恵が会話している。
「大変だったね、蓮」「ウン‥」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/66/0f/bd6dff7a4f48cd80d1912032159a8898.jpg)
「二度とこんなことしないで。あたし本当に心配したよ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/58/df/07203b4517bfa6ce4d6ef15a1c902457.jpg)
恵の温かな言葉に、思わず蓮はウルウルと涙ぐんだ。恵はそっと蓮の頬に手を伸ばす。
「とりあえず二人でちょっと話さない?これからのこととかさ」
「キンカン‥」「最初に言っとくけど、」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6b/b8/cf14d02d70c89d254e9673d9353b4606.jpg)
そう前置きする恵に蓮が「え?」と聞き返すと、彼女は衝撃発言をした。
「次こんなことしたら別れるからね?」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/cc/8513bbf234fb4f9b15b0125864e6b3d2.jpg)
思わずゾゾッと身震いする蓮を引っ張って、恵は元気良く彼の両親に挨拶する。
「おじさんおばさん、あたし達先帰りますね!タクシー呼びました!」
「恵ちゃん、蓮のこと懲らしめてやってね」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/68/f8/34d849f74a2346e65057641cae603608.jpg)
「お先失礼します〜」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/10/cc/3ef5a09f31510d15cc48246070901007.jpg)
そうして去って行く蓮と恵の後方で、亮は人知れず皆に背を向けた。
するとその背中に、雪の母の声が掛かる。
「亮君!」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/1c/115f1ded61c6234985ee8c6aebf524c9.jpg)
「何こっそり帰ろうとしてるの」「あーっと‥」
「最近はどう?上手くやってるの?」
「ハイ、まぁ‥。近いうちにご挨拶に行きます」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/51/82/00ac244c775595b114d132411097089a.jpg)
言葉を濁す亮のことを、雪の母はまっすぐ見つめてこう言った。
「そうね。亮君は真面目で仕事もきちんとやるから、
どこへ行っても上手く行くと思うわ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/26/5b43d1dc67cb435af2f8cf918b72ebb4.jpg)
そう言って彼にエールを送る。少し離れた所から、雪の父も亮に声を掛ける。
「辞めたからって遠慮せずに時々メシでも食いに来るんだぞ!」「‥ハイ」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/6e/397fe054acfa01b331197277f45bb1b7.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/24/84/de05d3bae04d120af865fd52fbdea8c6.jpg)
赤山家の父と母は、温かな目で亮のことを見つめていた。
少し離れている場所に居た雪も、亮に向かって会釈する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/61/3f69556a6fffd530903716b673206e35.jpg)
しかし亮は雪から視線を外すと、そのまま皆に背を向けた。
「それじゃこれで‥帰ります」「ああ、じゃあな」「今日はありがとうね!」
「先輩、今日はこのまま帰ります。親と一緒に帰った方がいいと思うので‥」
「そうだね、そうした方がいい」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/69/7f/2377e6a46e5d307b5c22c4fd9e213396.jpg)
「それじゃ失礼します」
「ああ、運転気をつけてな。良い車に乗ってるな‥」「アナタ何言ってるのよ」
「はい」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7a/bc/fb4b3128329b3dc0a05c0bcfe83ff084.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/03/c5/fa42824cd50ea8dcceb0547ec1296948.jpg)
淳は雪が車に乗り込むのを見送った。
自身を見つめる淳に向かって、雪が最後に声を掛ける。
「先輩」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/40/033ab0809f7ec51eb63d7a9b3916fa24.jpg)
「今日は本当に本当にありがとうございました。気をつけて帰って下さいね」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/50/3e07e925792570418cfeb81ed9a1eacb.jpg)
雪はそう言ってニッコリと笑った。心からの笑顔で。
「うん、じゃあね」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/07/733f6e2c363ab6386c5617e640be9fd6.jpg)
淳もまたニッコリと笑っていた。
しかしその笑顔がどこか不自然なそれだったことに、ガラス越しの雪は気が付かない。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2e/53/aa365efcbfc9618604917a4712ed2c0b.jpg)
その車が走り出しても、淳は暫くの間そこから動かなかった。
胸の中をざわつかせるその感情と、その変化の余韻が淳を縛り付ける‥。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0d/a2/d428b2ca782fe350e946957885e09282.jpg)
握れなかったその手は、ポケットの中に置いてけぼりになった。
もう雪の姿はとっくに見えなかった。
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<変化の余韻>でした。
問題解決した赤山家と、そこに未練を残さないよう去って行く亮、そして無言で雪を見送る淳‥。
本当一難去ってまた一難です。引き続き暗雲漂ってます〜〜(TT)
でも次回は心温まるお話ですよ^^
<時の流れ>です。
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